21 / 29
21.マミは説教される
しおりを挟む………
まあ、そんな風にして半年が過ぎていき。
営業部の松原壮亮に熱烈アタックする、デジタルコンテンツ部の竹中マミの姿は社内でも浸透し始め。なんだかんだで、2人の距離は全然縮まっていない。いや、むしろちょっぴり離れてしまったような気がしないでもないでもない。
『ない』が多いのは、混乱しているからだ。
説明すると長くなるのだが、でも説明することで頭の中が整理されるのでしてしまおうと思う。誰に説明するのかと言うと、さすがに私も鬼では無いので、ニョロ野とはもう連絡を取り合っておらず。というか、今回の件に関しては、男性よりも女性の方が相談相手として適していると考えたワケで。
ああ、でも何だか言い難い。だって、こんなことを当事者以外にバラしてしまっても本当に良いのだろうか?それ以前に、当事者の松原さんにも伝えていない…ううん、正確に言えば伝える気が無いのに、ほんと大丈夫なのか、自分。という感じがしないでもないでもない。
「ねえ、そろそろ話を進めて欲しいんだけど」
「えっ?!」
「前置きだけで30分が経過したよ」
「んまあ!!」
それは申し訳ないことをした。アナタ様の貴重な時間を、30分も奪ってしまったのですね、私ってヤツァ。
「あー、もう。また逃げようとしてる。はいはい、もういいから、言ってごらん」
「…はい」
目の前にいるこの人の名は、山口咲さんという。現在は別部署に異動しているが、取引先の元営業担当で年齢は私より4つ上の28歳。実を言うと、私達は同じ大学の同期なのである。咲さんは、大学在学中に妊娠したものの結婚はせず。シングルマザーとなる道を選んで大学に入り直したという、波乱万丈の人生を送っているのだ。
咲さんいわく、相手の男性に妊娠を告げたところ、驚きの早さで逃げたそうで。銀行員と聞いていたが、それも嘘だったらしく、名前も経歴も全部ウソ。連絡も取れなくなり途方に暮れていたところを、家族に救われたのだと。すごいよねー、両親は勿論、2歳上のお兄さんも『産むべきだ』と言ったんだって。そんで、言いっ放しにはせず、一家総出で生まれた子供の面倒を見てくれているそうな。
──と、もうお気づきかと思うが、私…
「実は妊娠してしまったんです」
「あら、おめでとう。お相手はどなた?」
勘違いであって欲しかったが、これは確定だ。だって、産婦人科医にそう宣言されたのだから。松原さんは毎回避妊してくれていたのに、何故こんなことになってしまったのか。ううう、避妊具を過信していた私が悪いに決まっている。相手まかせにせず、自分でもピルを飲むなり対策をすべきだったと今では思う。だが、後悔しても後の祭りというものだ。
「い、言えません、でも、産みたいんです」
「へえ、そうなの。ねえ、まさか不倫?」
「違いますよ、そんな度胸はありません」
「度胸って…。でも、本当にいいの?お相手は産むことについてどう言ってる?」
ここで私は仕方なく、相手との関係を説明する。私は本気で好きだが、相手からはセフレとして扱われているということを。すると、予想通り咲さんはキレた。
「は?はあ?はああああ?!何してんのよ、マミッ。お母さんはね、そんな子に育てた覚えはありませんッ」
「へっ…咲さんは私のお母さんじゃないし」
ギンって、怖い怖い怖い。
そんな目で睨まないでえええっ。
そこから、咲さんの説教タイムへと突入。土曜の午前中という時間を選択した私が悪いのか、それとも閑散としたファミレスでまったりお茶なんぞ飲みながら打ち明けたことが悪いのか。とにかく、咲さんは『マミは人生をナメている』と憤り、性根を叩き直すぞとばかりに熱く語りまくって。最終的には、私の要望である咲さんの家で暫く同居させて貰うことを、快諾してくださったのである。
0
あなたにおすすめの小説
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる