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ひとひら
しおりを挟む好きになったらどうすれば良いのか?
世の中の人々はどのタイミングでそれに気づき、そしてどう対応しているのだろう。やはりその都度相手に気持ちを伝えるべきか?私は…私だったら、好きと言われると気持ち悪い。実際、高校の時に2度ほど告白されたことが有るのだが、相手とは顔見知り程度の仲だったし、『好き』に達するほどの情報を一方的に得たのかと思うと背中がゾワゾワした。
>んんっ、ああッ、そこ、やだああ
でも、だからと言って壮ちゃんにこれまでみたく接することは不可能だし、壮ちゃんにはもっと気を遣って欲しい。…そう、私に好かれていることを自覚し、無闇矢鱈と『アッちゃんは可愛い』などと言うのは止して欲しいのだ。
>はァん、だめ、まだイッてる、イッてるの
…ってもう、ちょっとした拷問だよコレッ。真剣に悩んでいるのに隣室で兄と親友がセックスしてて、その声が筒抜けなんですけどッ。
堅物で今まで誰とも付き合ったことの無かった兄が、親友の奈月に押されまくってお試し交際を始めたのは少し前のこと。『ふふっ、2人ともぎこちなくてカワイイ』なんて思ったのは最初だけ。今では発情期さながらにヤリまくっているみたいだ。
だって私ねー、ずっとカズと出歩いていたからあまりウチにいなかったんだなー。でもねー、カズと別れて在宅時間が増えた途端に、このエロ声が聞こえるようになっちゃったんだなー。
身内の睦言は出来れば聞きたくないし、しかも徐々に上達しているだなんて知りたくもないが、奈月の喘ぎ声で分かってしまうのだ…兄の成長っぷりが。奈月の気持ち良さそうな声を聞いていると、なんだか頭がおかしくなりそうだ。まるで疑似体験のように自分がその愛撫をされているような錯覚をし、触れて欲しくて堪らなくなる。
>ああッ、奥にっ、熱いの出てる!
>志季さんの、出てるッ!
奈月、そんな実況エロ過ぎるよ…。ダメだ、もうこれ以上聞いたら意味不明な言葉を叫んでしまいそう。一刻も早くココを出ないと。誰か泊めてくれる人は…、えっと、ムーさんは彼氏と一緒だろうし、ノッチはゼミ仲間と飲み会だとか言っていた。なんだ、全滅じゃないのッ。
>嘘、またこんなに固くなっちゃったの?
>えっ、あ…ん、あ、ん、やだ、あああん
うッ、2回戦が始まっちゃった。いい、もう、こうなったら誰でもいい!!とにかく泊めてくれそうな人を、早くッ。
……
「いらっしゃい」
「本当にごめんね、こんないきなりで」
はい、私はバカです、
大バカです。
オバチャンを抱っこして『ほらパトリシアも喜んでるよー』などと明るく笑う壮ちゃんに詫びながら、部屋の中へと進む。いや、だから敢えてと言うか…いえ、何でも有りません。
おずおずとスーツケースを開き、部屋着を取り出す。だってほら、ほぼ1日置きであのエロ声を聞かされてるから、1日だけ凌いでも意味が無いでしょう?ここは連泊の覚悟でですね…。というか宿泊申請を簡単に承諾されてしまう私って、絶対に壮ちゃんから女として意識されていないよね?
「だって仕方ないよ、彼氏と別れたばかりなのに、隣室からカップルのエロ声が聞こえてきたら誰だってキツイって」
「だよねー、あはは。奈月なんて『奥にっ熱いの出てる』とか言うのよ。まさか中出しさせてるのかしら」
シーン。
奇妙な沈黙にハッとする。あ、あのッ、私、好きと自覚してから初めて壮ちゃんに会って、そのせいでテンションがいつもと違うというか、妙に緊張しててッ。ああ、調子に乗って余計なことを言っちゃった、すごく反省しています!!
気のせいか壮ちゃんは抱き締めていたオバチャンを少し高く掲げて顔を隠してしまい。その表情を見せてくれない。
「えと、あの…壮…ちゃん?」
「ああ、うん、分かってる、分かってるんだけどね」
へ?何を??
その疑問を口にする隙も与えてくれず、壮ちゃんはそっとオバチャンを床に下ろしてから再び立ち上がって私に向かって言う。
「ごめん、もう俺、我慢出来ないかも…」
へ?何を??
この疑問も口に出させて貰えず、軽く唇を尖らせていたらそこに
…壮ちゃんの唇が重なった。
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