裏切られ、地味女になっていた私ですが、再び美人に戻って恋愛することにしました。

ももくり

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モテ期到来?

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 はわわっ。モ、モテ期なのか私。

 いや、冷静に分析すると元々このコは周囲に『初恋相手は桂先生でした』と公言していて。そんな私がダサダサな見た目で恋愛を拒否していたため距離を置いていただけだ。それが煌びやかな見た目に変身したことで、『恋愛OK』になったと判断して言い寄ってみただけだろう。

 モテてはいない、勘違いするな、私。

 多分これは若者特有のチャレンジなのだ。過去に攻略出来なかった相手を、今だからこそコンプリートしようとしているだけで、本気で好きというワケでは無い。…そう自分を戒めながら軽く深呼吸してみる。見れば見るほど男前だ。きっとモテモテ人生を送ってきたに違いない。だからこそ、断られるとは微塵も思っていない様子だ。これは難航しそうだぞ。

「ごめんね聖くん。私、彼氏いるから」
「えっ?!いつの間に」

「一週間前に出来たの」
「一週間前ならクーリングオフ出来るから!」

 ク、クーリング…オフ…だと??

「通販とかエステの契約なんかと違うからね?クーリングオフだなんて無理だよ」
「その人、俺よりイイ男ってこと?」

 思わず頭が後方に下がる。おい、なんだよその質問。お前よっぽどイケイケグイグイな人生を送ってきたんだな?!

「私から見ればイイ男だよ。なんかいじらしいって言うか、健気で野に咲く一輪の花のような感じ。浮気とか絶対にしないだろうなって人」
「…桂先生、それオトコに対する賛美の表現じゃないから。もしかして相手は女子高生なの?それに俺だっていじらしいよ!中学の時に桂先生を好きになって、それ以降ずっと同じタイプの女としか付き合ってないからねッ。桂先生が当時好きだと言ってたファッションモデルに似せて、こんなチャラい仕上りになったのに今更『野に咲く花が好き』だなんて酷すぎるッ!」

 驚きの余り、再び仰け反る私。

 言われてみれば女子大生の頃はそんなチャラい外見の男性に憧れているとか言ったような…。でもそれは、直也の束縛が息苦しく感じていた時期で。彼とは真逆な男性を素敵と言うことで反抗心を示していただけなのだ。それを真に受けてこうなっただなんて、昔の私はなかなか罪作りな女だ。ふむふむと無言のまま頷く私に対して、聖くんは尚も質問攻撃を止めない。むしろ奥深く抉るように斬り込んでくる。

「相手、もしかして同じ職場の人ですか?」
「えっ?あ…あ、うん、同僚だけど…。その、あまり公にはしていないというか…」

 その整った顔がグイグイ近付けられ、流行遅れは否めないが、それでも未だに効果抜群な壁ドン状態で私は問い詰められる。

「誰か教えてください、直接この目で見て来ますから。桂先生の彼氏の名前をさあ、早く!」
「う、あの、でも、相手に迷惑が掛かっ…」

『僕です』

 そんな空耳がしたかと思ったが、どうやらそれは空耳では無かったらしく、聖くんがゆっくりとその声の方に顔を向けた。

「吉川さんと付き合っているのは、僕だよ」

 いつの間にそこに立っていたのか、相変わらず頬をほんのり染め、そしてどうしても隠せなかったようで滲み出てしまったドヤ顔のまま彼はオウムの如く繰り返す。

「吉川さんの彼氏は僕なんだ」
「は?本当なのか桂先生」

 『はい』と即答する私に、聖くんは驚きの言葉を続けるのだ。

一之瀬直也の次がこの人って…。俺は認めませんよ。ねえ、そこの貴方、吉川桂の元彼がどれほど素晴らしい男だったか知っているんですか?まあ、知っていたら畏れ多くて自分が彼氏だなんて言えないでしょうけどね」

 おい、こら、ちょっと待て。そう言って遮ろうとする私を後目に、聖くんの口は滑らかだ。

「あの名門大帝学園で中学高校と生徒会長を務め、数々のルールを変えた功績は勿論、その類まれなるルックスで多くの女性を虜にした伝説の男なんですよ。そんな素晴らしい男性が特定の彼女を作った時は大騒ぎになったけれども、その相手が幼馴染の吉川桂だと知ると誰もが納得した。そのくらい美男美女のカップルとして有名だったんです。残念ながら妹さんとの件で破局しましたが、それを悲しむファンが多かったことも確かだ。本当に神々しいまでにお似合いの2人でしたからね」

 …って、なんで聖くんが勝ち誇ってるの?

 そんで、そこまで持ち上げておいて、清水さんじゃダメだけど自分なら大丈夫と思ってるってこと?それって随分な自惚れ野郎じゃない??

 しゅるるる。

 ほら、見てみなさいよ!ようやく私に懐き始めた野の花ちゃんが委縮しちゃったじゃないのッ。ああもう、聖くんに反論するより清水さんへのフォローの方が最優先だ。目の前に有る肘を潜り抜け、清水さんの元へ走ろうとしたが、そんな私の腕を聖くんが掴んで離さない。

「ちょっと、もういい加減にしてよ!私はね、そんな伝説のハイスペック男はコリゴリなの。この一緒にいるだけでホッコリ出来る癒し男の方が好きなんだから放っておいてちょうだい」
「でも、それは安定を望むだけで、好きという感情とは違うでしょう?!直也さんの件が有ったからって、逃げないでくださいよ桂先生!」

 さすがは営業、とても口が達者だ。上辺だけの言葉では軽く返されてしまうと思った私は本音で語ることにした。

「あのね、若い頃は確かに自己顕示欲が旺盛で目立つ男の方が好きだったけど、人としてもっと大事なことが有ると分かったから」
「なんですかソレ?こんな地味な男を選ぶことが『大事なこと』になるんですかッ?!」

 清水さんはキュッと唇を噛み締めて哀しそうにこちらを見ている。

「ほらッ、分かる?彼はどんなに傷つけられても聖くんを傷つけることを言わないんだよ?!この人だって普通に怒るし、反論することだって出来るのに敢えてそれをしないの。私も最初は気が弱いだけだと思ったけど、でも違った。

 相手を傷つけないためには、一方的に痛みを呑み込まなきゃいけなくて、それは結構辛いことだし屈辱的なことだけど…清水さんはね、誰かに酷いことを言われても『人間には感情のムラが有って、たまたま今回は機嫌が悪くて暴言を吐いただけ。きっと後で反省しているだろうから』って笑って許しちゃうんだよ!!もう、ほんとに心、広すぎなんですけどッ。

 ごめんね聖くん、貴方と清水さんとで選べと言われたら、私は清水さんを選んじゃうわ」

 
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