8 / 35
美香編
姑息な男(望月視点)
しおりを挟む…………
ふう、もう23時か。
漫画は少女漫画以外すべて制覇してしまったし、仕方ない、こ、このエロ雑誌でも読んでみよう。本当にしょうがないなあ…こんな雑誌、普段は絶対手に取らないんだけど(※モッチーは嘘を吐いています)。なになに?『ギリギリショット・凶暴な巨乳』へえ、あのグラビアアイドルがとうとう脱いだのか…
って、み、みみみ、美香さんッ!!
自動ドアが開き、颯爽と姿を現したのはずっと待ち焦がれていたその人で。慌ててエロ雑誌を棚に戻して駆け寄る。視界の端ではレジにいた店長がサムズアップしながら微笑んでいたが、それに反応を返す余裕も無く。必死の思いで美香さんに話し掛けると、彼女は不自然なポーズで豪快に転ぶのだ。
「ふえぇん」
な、なんだこの可愛い泣き声。普段はクールな大人の女性を気取っているクセに、ここに来てそんな幼女のような声を聞かせるなんて卑怯だぞ!あまりにも反則なその行動に、俺の胸はギュンギュンしまくっている。
おっといけない、ココで小道具を出さなければッ。誰からも無条件に愛されてしまうこの女性に唯一靡かない男…それが俺だから。
いや、もちろん本当は大好きだよ。
でも正攻法じゃ落とせないと分かっているのに敢えて正面からぶつかるバカはいないだろう?とにかくお近づきになって親交を深めなければ。ははっ、それにしてもこの人、凄い自信だな。
「ツ…じゃなくて望月くんはいいの?」
「俺ですか?!いや、遠慮しておきます」
「私を好きじゃないの?」
「そうですね、どちらかと言えばあまり…」
出来るだけ紳士的でスマートに、絶対ガツガツしているところなんか見せないぞ。
「えっと、ああ、じゃあ、有り難く頂くわ」
「良かった!素晴らしい男性ばかりなので、是非、検討をお願いしますよ」
よっしゃ、好感触!!
このまま去った方が効果的だとは分かっているが、店長に御礼を言わないのも不義理だと考え、数点の商品をカゴに入れてレジへと向かう。ピッピッとバーコードを通しながら、俺にしか聞こえない音量で店長が話し掛けてくる。
「あの女性でしたか~、さすがお目が高い!!彼女、柿ピーとピスタチオとキスチョコが好きでちょくちょく購入されていきますよ。それと、マンゴーサワー。これは死ぬほど好きだと自分で言っていましたっけ…」
なぬ?マンゴーサワーだと??
買い物を済ませ、駅へ向かう道すがらカナスケに電話で確認すると『そう、美香ネエはマンゴーサワーが大好きなの。でも、そんなギャップを見せるとメンズに惚れられてしまうからって普段は必死で隠してるみたいよ。何?どうしてそんなことを訊いてくるの?』などと不審がられてしまい。
だがしかしココで美香さんを好きだとカナスケにバラしてしまうと一気に本人へ伝わる可能性があると思った俺は、適当に誤魔化すのだ。
「美香さんとまた飲みに行きたいなあとか思ってて、店を予約する際に飲み放題を付けるべきか悩んで確認させて貰っただけだよ」
「あはは、そうなんだ。マンゴサワーって飲み放題には含まれないこと多いもんね」
さすがカナスケ、ちょろいな。
これまで、俺の人生は楽勝だった。誰が見ても端正な顔立ちと優秀な頭脳に加え、父譲りの処世術の巧みさで、それなりに女性たちとも付き合ってきたと思う。
>望月くんは何をさせてもスマートね。
>ほんと、女性を喜ばせる天才!
>しかもカッコイイし~。
そんな俺なのに、美香さんは言うのだ。
『だってアンタ私に唾飲ませたでしょ。
だからツバ男なのよ~!!』…と。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる