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美香編
柴崎さんの口説きテク
しおりを挟む『望月の良い部分はそれだけでは無い!』と追加で挙げようとしたところ、まだ話し足りなかったのか柴崎さんが再び口を開く。
「顔か?家柄か?学歴か?体の相性が良かったのかもしれないな。お前の今までの彼氏、女性経験少なそうなブサイクばかりだったし。なあ、よく考えてみろ。どれもこれもその男でなければダメだという決定的なものは無いんじゃないか?それは逆も言える。お前の婚約者は、お前のどこが好きになったか訊いてみたことが有るのか?」
思わず喉がゴクリと鳴ってしまう。
「無い…ですけど」
「会ったその日に恋愛感情を抱いたというなら、きっと顔にでも惚れたんだろうな。朝日…お前、今はまだ若いから綺麗だけど、ある程度年齢を重ねたら徐々に劣化するんだぞ?断言しておく。そんな外見だけで人を好きになるような男は、何年かすれば必ず若い女と浮気すると」
悔しいけれど、言い返せなかった。
確かに望月は私の外見をよく褒める。『綺麗だ、可愛い、ずっと眺めていたい』と称賛してくれるが、十年後も同じことを言ってくれるのか?
多分、その答えはNOだろう。
せっかく婚約して幸せイッパイだったのに…。本当に柴崎さんって、人の心の嫌な部分を引き出すのが上手いよね。ジッとその顔を睨んでいると、たじろぎもせずに彼は私に向かって語り出す。
「俺も最初は外見だけで朝日のことを気にするようになった。でも、お前という女はそれだけじゃないと今ではもう知っているからな。接待で何度もセクハラ紛いの目に遭って、こっそり泣いているクセに、人にはそれを決して見せず次からは相手が舌を巻くほど如才ない立ち回りを見せる。新しいクライアントに関する情報はどんな小さなことでも記憶し、確実にその心を掴むんだ。お前は綺麗なだけの人形じゃなくて、強くてタフな女だ。弱さと強さのアンバランスさがより一層、俺の心を惹きつけるんだよ…」
く、くっそ。
コイツ女を口説き慣れてるな。
自ら狩猟には出向かないけど、己の領地に入りさえすれば確実に仕留められるという感じか。
「なあ、後悔しないために、俺にもチャンスをくれよ。それでダメだと言うなら本当に諦めるからさ。取り敢えずココを出たら、別々に行動してこのバーで落ち合おうぜ。地図はこの名刺の裏に書いてあるから」
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