ずっとこの恋が続きますように

ももくり

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誰??

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 なんというかもう、
 えげつない美人だった。

 過去に何人か湊を取り巻く美女軍団を見ているが、彼女達とはグレードが違うと言うか、最早、別次元の人種である。
 
 気品と知性が内面から満ち溢れ、“選ばれし者”としてのオーラなのか、それともそれなりの努力をしているからこその自信なのかは知らないが、とにかく驚くほどの堂々っぷり。どこかの国のプリンセスだと紹介されれば、きっとそれを信じてしまいそうなほどの風格を漂わせつつ、彼女は廣瀬さんに向けて微笑む。

「……」
「……」

 さすがの湊も、無言だ。そして当然、私も無言だ。

「んっ、ゲホッ、ごふッ」
「あ…」

 ワザとなんじゃないの?と疑いたくなるほど、絶妙のタイミングで湊が激しく咳込み、それに気づいた廣瀬さんが何故か颯爽とこちらの方へ歩いて来た。

「朱里!良かった。なかなか連絡つかなくて…」
「えっ、連絡?私に??」

「それで仕方なく九瀬さんに電話してみたら、湊と一緒に駅前の隠れ家的バーへ飲みに行ったはずだと教えて貰ってね。実はココ、俺が湊に紹介したから店だからスグに分かったよ」
「あ、物凄い数の着信…。ごめんなさい、気付かなくて」

「いいんだよ。きっと話に夢中になって、スマホを確認する余裕が無かったんだろうし」
「あはは、よくご存知で」

 …と明るく答えながらも、私の視線は廣瀬さんの真横に立っている美人に釘付けだ。うわお、間近で見るとより一層キレイだなあ。もしや廣瀬さんのお姉さん…いや、この人は一人っ子のはずだ。じゃあ仕事関係の人…いや、これほどのレベルなら同じ課である湊も知っているはずだが、この様子だと初対面に違いない。

 じゃあ、誰??

「彩、このコが俺の彼女だよ」
「まあ!初めまして、森脇彩モリワキ アヤです」

 パアアッと大輪の薔薇が花開いたかの様な笑顔に目を潰されそうになりながら、私も自己紹介する。

「えと…、初めまして太田朱里です」
「若い!肌ピッチピチ!頬ずりしたいいい」

 ちっ、近い。美人のドアップに怯えていると、廣瀬さんが素早く助けてくれた。

「おいこら、彩。お前なあ、昔っから初対面の人間に対して距離の取り方おかしいんだって。徐々に詰めろっつうの」
「は~い。じゃあ、とにかく座りましょうよ」

 ここまで空気だった湊に『ご一緒してもいいですか?』と訊ね、その返事を確認してから彩さんは奥の席に腰を下ろす。その隣に廣瀬さん、正面に私と湊が座ることになり、元の場所からグラスとコースターを移動させる。ここでようやく廣瀬さんが湊を紹介した。

「あっ、朱里ちゃんにちょっかい出してるとかいう人?!アナタ度胸が有るわねえ、真の彼女に迫るだなんて。それを聞いてこの人ってば社長に『毎日1時間のふれあいタイムを設けろ』と直談判したんですってよ。で、総務部に2人の交際を公表して、そこから社内全体に『廣瀬真と太田朱里はラブラブだ』とかいう噂を広めて、誰にも手出しされないように牽制したって。本当にもう、ねちっこくて気持ち悪いわよねえ」
「おいこら、彩!余計なことをベラベラ喋るなって」

 …廣瀬さん、知ってたんだ?
 私が湊に告白されたことを。
 なんで?どうして?
 
 そんなことよりも、彩さんっていったい何者?と思ったのは私だけでは無いらしく、湊がその疑問を口にしたところ、彩さん本人が即答した。

「うふふ、私はねえ、廣瀬真の元カノで~す!!」
 
 
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