みどりさんの好きな人

ももくり

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4.みどり

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 なんだか教室がザワザワしてて。
 皆んなコッチ見てると感じるのは、気のせい?
 
 そんなことを思っていると、先生がやって来た。時折、朝礼前にこうして顔を出し、なぜか私にだけ用事を言いつけてくださるのだ。ちなみに、本日は『放送朝礼』で、自席に座ったまま、校長の話や周知事項を聴く。

「出席番号1番の有川~。コレ、配っておいて」

 教卓に歩み寄ってハイと答えたのに、先生の視線が泳ぐ泳ぐ。
 
「…へ、有川か?」
「はい」

 長い長い沈黙のあと、漸く先生が小刻みに何度も頷いた。

「思春期の女子は怖いな~。驚きの変身しちゃうから」

 恐妻家で、気が弱いと評判の山城先生は、頼み事が苦手だ。だから、絶対に文句を言わない私を狙い、チョコチョコと依頼してくる。今日はアンケート用紙だからいいけど、重い荷物の運搬を頼まれたりするときは、すごく困る。

「配るの手伝うよ、有川さん」

 そんなとき、よく手伝ってくれるのが、教卓の真ん前に座っている、木崎君だ。

「ありがと。でも今日はコレだけなの。最前列の人に『後ろ回して』と言えばスグ終わるから」
「そっか。あ、ちょっと髪になんか付いてる。取ってあげるよ、待って」

 動きを止め、木崎君にゴミを取って貰う。おさげと違い、髪を解いていると、モップみたくゴミを吸い寄せてしまうようだ。

「ふふ、取れたよ。有川さん、今日はすごく可愛いね」
「……」

 無言で真っ赤になってしまう。いい人だナ~、木崎君。困ってる人間を放っておけないんだもん。目立たない感じだけど、私の中の男子ランキングでは、かなり上位だ。どうして、こういう人がモテないんだろう。…などと思いつつ。部数を数えながら、最前列にだけ用紙を配る。

 私の席は窓際の一番後ろで、戻るときは要注意だ。きっと列の中央に座っている野尻さんが、足を引っ掛けてくるから。なぜか彼女は私のことが気に入らないらしく、よく嫌がらせをしてくるのだ。

 朝礼10分前。先生はトイレに行ったのか、離席中。生徒はほとんど着席し、楽しそうに雑談している。慎重に野尻さんの横を通り抜けようとすると…。

「きゃ」

 右、左と時間差で足を出され、転んでしまった。えーん。やっぱり私ってトロイなあ。ほんと何回目だコレ?トモがいたら、絶対に文句を言っていただろうけど。私は基本、何もしない。

 それがシュウちゃんの教えだ。『厄介ごとに、自分から飛び込んで行くな。元々、翠は怒ったりするのが得意じゃないから、無理して怒ることもないだろ?』

 はい、シュウちゃん。
 今日の午後には登校してくるんだよね。
 早く会いたいな。
 
 
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