みどりさんの好きな人

ももくり

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5.みどり

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 照れながら、スカートの汚れを払い、ゆっくり立ち上がる…と。あれ。あれれ?なぜか男子たちに囲まれている。

「大丈夫か、有川さんッ」
「なんてヒドイことするんだ、野尻!」
「可哀想に、立てるか有川?」

 ポカンとする私。

 だっていつものコトだよ?初めてじゃないのに。何故、今日に限って心配してくれるの?ち、近い。えと、この人は森野君と仲良しの小岩井君。鼻と鼻がくっつきそうな距離まで接近してる。

 ジ──ッって、あの、何ですかコレ。
 へ?笑った??

 怖いし、もう。
 
「か、可愛い。まじヤバイ。俺、これ見てたら、どんぶり飯3杯食えるわ」

 意味ワカンナイんですけど。

「止めろよ、小岩井。翠ちゃんが困ってる」

 その声に振り返ると、お助けマンの木崎君で。でも、あの、『翠ちゃん』なんて、なぜ急にそんな呼び方を?いつも通り『有川さん』でお願いします。

 ほんと今日は、おかしな日だわ。

「うるせえんだよ、このコは俺が貰うのッ。地味男はあっち行ってろ」
「ちょッ、征哉、勝手に決めるなよ。この俺も候補に入れさせてくれ」
「有川さん、今日から昼ごはん一緒に食べよ~」

 …カオスだわ。なんだかカオスのド真ん中にいる気がする。すごくすごく困っていると、少し離れた場所でトモが手を振り、こう言った。

「翠ちゃん、シュウさんが廊下で待ってるヨ!」
 
 私は思わず首をニョンと伸ばす。

「うそ、午後から登校するはずじゃ…」
「両親抜きで、シュウさんだけ前乗りしたって」

 開いたドアから、シュウちゃんが顔を覗かせる。途端に、女子たちが色めき立った。

「だ、誰?あんな男、ウチの高校にいたっけ?」
「ぎゃあ、超絶イケメン!すんごくカッコイイ」
「ま、まさか有川さんの彼氏??」

 そんな声を聞きながら、私は廊下へと向かう。でも、最後の最後で尻込みしてしまい。歩みがピタリと止まる。
 
 …私、相変わらず子供っぽいし。シュウちゃん、見てガッカリするだろうな。きっとまた、迷惑かけちゃうだろうし。そんな負の考えがグルグルと渦巻き、ドアの1歩前くらいの位置で、動けなくなった。

「ああ、もう。おいで」
 
 笑いながらシュウちゃんの腕が伸びて来て、私を廊下へと引っ張り出す。
 
 ジッと見つめ合う、2人。

 うう、そんな優しい目で見ないで欲しい。
 
 ドキドキが止まらないよ。
 心臓がもう、壊れちゃいそう。

「翠、久しぶり。元気だったか?」
「うん。元気だったよ」

「とにかく顔だけでも見ておきたくて。一緒に帰ろうな。俺、3年A組になったから」
「A組?やっぱり特進クラスなんだ」
 
 じゃあ、もう時間無いから、そう言ってシュウちゃんは去っていく。その後ろ姿を眺めながら、頬をそっと抓る。痛いからコレは夢じゃない。

 今日という日を、すごく楽しみにしていたけど、同時に、恐れてもいて。…だって、今日で決別するんだ。いつまでもシュウちゃんに、庇護してもらってちゃダメだから。シュウちゃんがアメリカに旅立つ直前、シュウちゃんの女友達に言われたの。

「隣りに住んでるってだけで、甘え過ぎなのよ。登下校が一緒で、休日まで一緒って何なの??シュウにはね、『好きな女』がいるんだって。アナタのせいで、彼は恋愛すら出来ないの。いい加減、解放してあげなさいよッ」

 シュウちゃんに『好きな女』がいるなんて、
 考えてみたことも無かった。

 幼稚園の頃、誘拐されそうになって、ウチの両親がシュウちゃんに、私のことを気にかけて欲しいと頼んだから。それからずっと面倒を看てくれてて、それがもう、当たり前だと思ってた。考えたら、中学も高校も私のこと最優先にして決めたんだよね。シュウちゃんほどの成績なら、もっといいところに行けたはずなのに。

 いい気になって、甘え過ぎていたんだ。
 本当にごめんね…。

 シュウちゃんのいない間に、すごく反省したの。きっと、私ひとりで頑張るって言っても、納得しないでしょ。だから、彼氏を作って、その人に守ってもらうから大丈夫って言うんだ。こんな私でも、出来るかな、彼氏。

 最悪、木崎君に仮カレでも頼もうかなあ…。
 
 
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