みどりさんの好きな人

ももくり

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7.みどり

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 …も、もしかして、荒れてますか?

 シュウちゃんちに入った途端、彼は豪快に足でドアを閉め、カバンを放り投げた。放り投げ…いや、正確には壁へ『投げつけた』だな。中身がバラバラと床に散らばったけど、それさえ気にせず、ソファに横たわる。

「拾っといて」

 うん、と返事しカバンの中身を拾い集める私。そっか、たぶん時差と移動でお疲れなのかな?あらまあ、可哀想に。いつもどおり床にチョコンと座っていると、うつ伏せになったままでシュウちゃんが言う。

「翠、マッサージ」
「はい」

『よいしょ』と腰のあたりに乗り、肩を揉む。すごいコリコリですね。

「…なんか、もっとチカラ入らないワケ?全然、弱い。ああ、もう、なんかムカツク。くっそ、なんなのあの森野って奴、ヘラヘラして、馬鹿っぽかった」

 そう言いながら、シュウちゃんは体を起こし、私の両脇に、自分の手を差し込んだかと思うと、ひょいと持ち上げ、私をその膝の上に乗せた。

「…えと、でも森野君、成績は学年1番だよ」
「うるせえ、そういう『頭の良さ』じゃない。どうせ俺より馬鹿なんだろ?」

 そ、それはそうだけど。でもね、両親が著名な研究者で遺伝子レベルで優秀なシュウちゃんと一緒にしちゃ、可哀想だよ。

 ジッと私の目を見つめ、拗ねたように彼は言う。
 
「他の男と付き合うなんて、絶対に許さない。お前はな、俺の命令だけ訊いてればイイんだ」
「え、だって、シュウちゃんもそろそろ彼女とか、作りたいでしょ?」

 ギロリと睨まれた。

 な、なんで?
 私、なんかおかしなこと言ったかな。

「私のせいで出来ないんでしょ?このままずっとシュウちゃんの恋愛の邪魔、したくないし…」
「はあん?!お前、本気でソレ言ってんの?」
 
 コクンと頷いた。すると、長い沈黙のあと、ようやく口を開く。

「…ああ、そうだよ。翠のせいで彼女が出来ないんだ。なのに、原因であるお前だけ、サッサと彼氏つくるとか、アリなワケ?」
「ご、ごめんなさい」

「許さない。俺に彼女が出来るまで、お前も誰とも付き合うなッ」
「え、ええ~??」

 だってシュウちゃんほどの男が。貴方が『付き合おう』と言えば、断る女のコなんか、絶対にいないし。

「シュウちゃん、好きなコいるんでしょ?そのコと付き合えばいいじゃない」
「…ッ、ぐ、アホかお前」

 きょとん、としていると、こう言われた。

「お、俺ほどになると、女を1人に決めたら、他のオンナがそのコに嫌がらせするんだよッ。なんなら、翠がニセ彼女になって、代わりに嫌がらせされろ。あ、ソレいいな」
「そんなの、全然いくないよ」

 だって、私が辛いもん。シュウちゃんのこと好きなのに、本命の彼女を守るため、ニセ彼女になれと言うの?私が自分のこと好きだって、分かってるクセに。ほんとドSだね、シュウちゃんは。

「なんだよ、そんな頬をポンポンに膨らませて」
「……」

 無言で眉間にシワを寄せていたら、キスされた。しかも、軽くチュウチュウと吸われてる。びっくりしていたら、シュウちゃんは表情すら変えず、こう言う。

「心理学的には『頬を膨らませる』のって、『拒絶のポーズ』なんだぞ?すげえ悪いクセついてんな、お前」

 えっと。それとキスはどういう関係が…。

「ああ、さっきのはアレだ。ニセ彼女になって貰うから、よそよそしいと、周囲にバレるだろ?こうして日常的にキスくらいしておかないと」
 
 …なるほど!って、言うワケないし。だってまだ本命と、付き合ってもいないのに、なんでニセ彼女を先に教育するのよ?おかしいでしょ、それ。

「とにかく、あの森野とはスグに別れろ。まさかお前、俺がいない2年の間に他の男と…」
「ナイナイ。私なんかに、誰も声を掛けないよ」

「そりゃそうか。残念ながら、翠は並ハズレた不細工だからな。カワイソー、あははは」
「…ひどい」
 
 自分でもブスだって知ってるけどさ。でも、好きな人から言われるのはツライんだよ。分かってるのかな、もう。
 
 
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