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第一章:おい、「ここ」に元々居た筈の「地元」の「鬼」どもはどこへ消えた?
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「また、悪趣味な……」
「鬼類災害特務隊」の顧問の一人である須藤秀介は運ばれてきたモノを見てそう言った。
元は在野の妖怪研究家だった。しかし、妖怪研究家と言っても、鬼が本当に出現するまでは、あくまで「伝承」「物語」としての研究だった。
「そうですか? 私はもう慣れましたけど」
同じく顧問の一人である生物学者の矢野千春はケロっとした顔をしていた。
ここ半年で起きた「鬼類災害」は一四件。鬼の撃退に成功したのは五件。そして……倒された鬼の死体が残されたのは三件だった。
そして、今、その3つの「死体」が、東京都千代田区九段の「鬼類災害特務隊」の本部倉庫に運ばれてきていた。
1つは、身長が約2・5mの、まさしく「鬼の全身骨格」としか呼べない代物。高知県の山村に出現し、自衛隊より鬼類災害特務隊に貸与された機関銃の銃弾を全身に浴びた後、皮膚・筋肉……そして有るとすれば脳や内臓も……早い話が骨以外の全てが溶け出した。なお、その骨は入手出来た時点で化石化していたが……複数の年代測定法で、どれ位前の化石かを調べても……互いに矛盾する結果が出ただけだった。
次は、冷凍された二〇~三〇代の痩せぎすの男の死体。飛騨に出没し、「鬼類災害特務隊」の顧問である陰陽師の佐藤正一と密教僧・小林隆賢が「調伏」を行なうと、人間の男の姿に変貌して死亡した。……鬼の姿だった時には、乳房が有り、男性器は確認されなかったにも関わらず、何故か、死亡した後は人間の男性の姿となった。
「あの……私、SF作家の知り合いが居るんですけど……ウチにスカウトします?」
矢野千春は3つ目の「死体」を見て、そう言った。
「我々の知識だけでは、そもそも『鬼』が何なのか突き止めるのは不可能なのは判りますが……必要なのは何の知識なのか、さっぱり判りませんな……」
その鬼が出没したのがどこかは顧問の権限でも知る事は出来なかった。ただ、噂では、よりにもよって、さる「やんごとなき方」が、これまた、さる「やんごとなき場所」で遭遇し……幸いにも大事に至る前に退治されたらしい。
「それ」は、いくつものパーツに分けられ運ばれてきた。生体部分は冷凍されて、機械部分は生体部分から取り外されており……。
そう……それは「鬼の姿をしたサイボーグ」だった。機械部品には「大日本帝国陸軍 新京高木機関 昭和五年 護国軍鬼・試作第三号」と云う刻印が見付かったが……旧日本陸軍に関する記録をどれだけ調べても「新京高木機関」なる組織は見付からず……そもそも、「新京」が満洲国の首都の「新京」だとするならば……その呼び名が使われるようになったのは昭和7年だ。
「3つ目の死体の生体部分のDNA解析の結果は……どうなんですか?」
「人間。おそらくアジア系の男性。東南アジア系である可能性の方が、北方アジア系である可能性より若干高め」
須藤秀介の質問に矢野千春は、そう答えた。
「全く、訳が判りませんな……こりゃ……」
「あと……実は……偶然なんですが……2つ目の死体、知ってるんですよ」
「えっ?」
「知り合いにそっくりだったんで……DNA検査をしてみたら……完全に一致しました」
「ちょっと待って下さい。いくら知り合いでも、何で他人のDNAなんて持ってるんですか?」
「検査する時に本人にもらったんですよ」
「はっ?」
「いや……私にも訳が判んないんですけど……生きてる知り合いの死体なんですよ、あれ。あの死体とは別に、あの死体と同じDNAの持ち主がピンピンして関西のある医大で教員をやってるんですよ。もちろん、その知り合いには双子の兄弟なんて居ません」
だが、その意味不明な事態こそが……日本に「鬼」が出現した理由についての最初の手掛かりだった。
「鬼類災害特務隊」の顧問の一人である須藤秀介は運ばれてきたモノを見てそう言った。
元は在野の妖怪研究家だった。しかし、妖怪研究家と言っても、鬼が本当に出現するまでは、あくまで「伝承」「物語」としての研究だった。
「そうですか? 私はもう慣れましたけど」
同じく顧問の一人である生物学者の矢野千春はケロっとした顔をしていた。
ここ半年で起きた「鬼類災害」は一四件。鬼の撃退に成功したのは五件。そして……倒された鬼の死体が残されたのは三件だった。
そして、今、その3つの「死体」が、東京都千代田区九段の「鬼類災害特務隊」の本部倉庫に運ばれてきていた。
1つは、身長が約2・5mの、まさしく「鬼の全身骨格」としか呼べない代物。高知県の山村に出現し、自衛隊より鬼類災害特務隊に貸与された機関銃の銃弾を全身に浴びた後、皮膚・筋肉……そして有るとすれば脳や内臓も……早い話が骨以外の全てが溶け出した。なお、その骨は入手出来た時点で化石化していたが……複数の年代測定法で、どれ位前の化石かを調べても……互いに矛盾する結果が出ただけだった。
次は、冷凍された二〇~三〇代の痩せぎすの男の死体。飛騨に出没し、「鬼類災害特務隊」の顧問である陰陽師の佐藤正一と密教僧・小林隆賢が「調伏」を行なうと、人間の男の姿に変貌して死亡した。……鬼の姿だった時には、乳房が有り、男性器は確認されなかったにも関わらず、何故か、死亡した後は人間の男性の姿となった。
「あの……私、SF作家の知り合いが居るんですけど……ウチにスカウトします?」
矢野千春は3つ目の「死体」を見て、そう言った。
「我々の知識だけでは、そもそも『鬼』が何なのか突き止めるのは不可能なのは判りますが……必要なのは何の知識なのか、さっぱり判りませんな……」
その鬼が出没したのがどこかは顧問の権限でも知る事は出来なかった。ただ、噂では、よりにもよって、さる「やんごとなき方」が、これまた、さる「やんごとなき場所」で遭遇し……幸いにも大事に至る前に退治されたらしい。
「それ」は、いくつものパーツに分けられ運ばれてきた。生体部分は冷凍されて、機械部分は生体部分から取り外されており……。
そう……それは「鬼の姿をしたサイボーグ」だった。機械部品には「大日本帝国陸軍 新京高木機関 昭和五年 護国軍鬼・試作第三号」と云う刻印が見付かったが……旧日本陸軍に関する記録をどれだけ調べても「新京高木機関」なる組織は見付からず……そもそも、「新京」が満洲国の首都の「新京」だとするならば……その呼び名が使われるようになったのは昭和7年だ。
「3つ目の死体の生体部分のDNA解析の結果は……どうなんですか?」
「人間。おそらくアジア系の男性。東南アジア系である可能性の方が、北方アジア系である可能性より若干高め」
須藤秀介の質問に矢野千春は、そう答えた。
「全く、訳が判りませんな……こりゃ……」
「あと……実は……偶然なんですが……2つ目の死体、知ってるんですよ」
「えっ?」
「知り合いにそっくりだったんで……DNA検査をしてみたら……完全に一致しました」
「ちょっと待って下さい。いくら知り合いでも、何で他人のDNAなんて持ってるんですか?」
「検査する時に本人にもらったんですよ」
「はっ?」
「いや……私にも訳が判んないんですけど……生きてる知り合いの死体なんですよ、あれ。あの死体とは別に、あの死体と同じDNAの持ち主がピンピンして関西のある医大で教員をやってるんですよ。もちろん、その知り合いには双子の兄弟なんて居ません」
だが、その意味不明な事態こそが……日本に「鬼」が出現した理由についての最初の手掛かりだった。
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