Storm Breakers：第一部「Better Days」

第四章：Let There Be Carnage

スカーレット・モンク(4)

「だからさ……何でお前、思考パターンはガチの理系なのにＰＣをほとんど使えね～の？」
　あたしは当然の疑問を口にした。
「話せば１時間以上になるややこしい事情が有る。その件の説明は後でいいか？ ともかく、何がどうなってる？」
　あたし達は占拠（一応）したＴＣＡの国境警備隊の詰所に居た。
「映ってない」
「はぁ？」
「あたしらが乗って来たトラックが監視カメラに映ってない」
「だから、どうなってる？」
「６台有るらしい監視カメラの内４台が故障中……表向きはな……」
「表向き？」
「で、残り２台を、時々、角度を変えながら運用してるみたいだけど……あたしらが乗って来たトラックは偶﹅然﹅に﹅も﹅監﹅視﹅カ﹅メ﹅ラ﹅の﹅死﹅角﹅に﹅入﹅っ﹅て﹅た﹅」
「そんな都合のいい『偶然』が有ってたまるか……」
「そ……ここの『国境警備隊』は、ガチであたしらを新手の密輸業者だと思い込んで、あたしらの『密入国』の証拠をわざと残してないらしい。今後、あたしらがいい金蔓になるとでも思ったんだろ」
「じゃあ、『国境警備隊』の上層部は？」
「当然、あたしらの存在を知らない」
『隔離型サンドボックス・タイプの小型端末を、そこの端末に繋げて、片っ端からアクセス可能な情報をコピーさせてみろ』
　その時、瀾師匠から指示。
「って、言いますと？」
『いくら何でも、マズい情報に権限が無いヤツがアクセスしようとしてたら、ＴＣＡの上層部も気付くだろ』
「了解Affirm」
　あたしは指示通り、外付け記憶媒体ストレージに見えない事もない小型端末を、今、操作している端末に接続し……しっかし、おい、何で、一応は「国境警備隊」の詰所の端末の汎用タイプの周辺機器接続口がしっかり空いてんだよ？
　外付け記憶媒体ストレージ型の小型端末の中では「アクセス可能なファイルを片っ端から収拾。『見えてるけどアクセス制限がかかってる』ファイルはＩＤ・パスワードを適当に推測してコピーを試みる」ってプロセスが走り始めた。
　まぁ、こんな馬鹿馬鹿しいハッキングクラッキングも聞いた事が無い。
　陽動部隊の筈が、敵が気付いてくれないんで、敵のサーバに侵入するなんて……。