上 下
62 / 78
第四章:Let There Be Carnage

シルバー・ローニン(4)

しおりを挟む
「『スカーレット・モンク』。お前の見解を聞きたい。これは……敵による何かの作戦なのか?」
「い……いや……その……」
 「国境警備隊」との戦闘開始から約5分後……私達は呆然と立ち尽していた。
『どうやら……敵を甘く見ていたようだ……』
 瀾師匠は、そうコメントしたが……。
「い……いや、これは……想定外は想定外でも……『敵を甘く見ていた』とは何か違うのではないのか?」
 数十名の「国境警備隊」は、あっさりと我々に降伏した。
 この間、発射された支援用の恐竜型戦闘ロボット「シロ」「ユキ」の機銃の弾丸数は……1つ目の弾倉マガジンの弾の一〇分の一を下回った。
「えっと……貴官がこの『国境警備隊』の責任者か?」
「その通りだ。この通り潔く降伏し、一切の抵抗・反撃は行なわないので……我々には何もせずに、可能な限り速やかにここを立ち去っていただけないか?」
 全員が銃火器を前に置いて、手は頭の後ろ、地面に膝を付けている。
「『スカーレット・モンク』。お前の『魔法』で生きてる人間の気配を探ってくれ。どこかから、狙撃手が我々を狙っているなんて事も有り得そうなのでな」
「狙撃に向いてるポイントが辺りに見当らねえよ……」
理解したConfirm。え……ええっと、貴官は我々との戦闘をどこかに報告したか?」
「安心していただきたい。そんな報告をしたが最後、我々の責任問題になるのでやってい……いや、待て、降参すると言っているだろう」
「規定の手順で我々による襲撃を上官または上位機関に連絡しろ。すぐにだ」
 私はレールガンをその指揮官に突き付けて命令。
「待ってくれ。貴方達は『外』で『正義の味方』を名乗っている筈だ」
「それが何だ?」
「小職と部下達にも生活と家族が……」
「はぁっ?」
「だから、この失態が上にバレれば、我々は粛清か……良くて降格だ……」
 呑気なモノだ……。
 自分達が暮している地域くにが明日も今日と同じでいられる保証など無いのに……自分の身の心配も結構だが、今日と同じ明日や今と同じ世界がずっと続く事を前提にした「自分の身の心配」は時として愚鈍さの極となる。
「後方支援チーム、正確な数はこれから数えるが、数十人の元軍人とその家族の『亡命』と当面の生活費の申請と、『こちら側』での生活の為の研修と、再就職の斡旋の準備を頼む」
 「スカーレット・モンク」が無線で後方支援チームへ連絡。
 冗談じゃない。こんな地域くにの為に、あの姉弟は殺されたのか?
しおりを挟む

処理中です...