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第三章 糞蠅/Breathless
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『またしても、久留米市を中心に活動していた独立系御当地ヒーロー「クリムゾン・サンシャイン」のコスプレをした者による殺人事件が発生しました。被害者は久留米市市議会議員の古川亮さんと、その御家族の計6人です。なお、被害者の御自宅の監視カメラの映像から、ここ数件の事件の犯人とは明らかに体型が違い……』
クソ……嘘だろう……。
「正義の暴徒」どもは……自分達と敵対していたクリムゾン・サンシャインの評判を地に堕とすと同時に……自分達の邪魔になる俺の味方を排除する……そんな一挙両得の手段を取り始めたようだ……。
「あ……あの……このままじゃ次に狙われるのは……」
ネット配信の地域ニュースを観ながら、選挙事務所の警備顧問である猿渡のおっちゃんは、真っ青な顔になっていた。
「親父達だな……」
「じゃあ……」
『次のニュースです。福岡県警久留米署と、複数の広域警察の久留米支局で、警察官がストライキを始めました』
はぁっ?
『ストライキを起こした警察官の代表は、久留米市内では、ここ数日、警察上層部による不可解かつ理不尽な命令が相次ぎ、それにより死傷者も出ており、警察上層部が納得のいく説明を行なうまで業務を遂行する事が出来ない、と発表しています』
「やったぞ、これで俺の家族を護る者は居なくなった」
「あ……あの……な……なにを言って……?」
「古川のおっちゃんを殺したのが、俺を狙っているアイツ……あの『永遠の夜』なんて中二病な名前を名乗ってる『正義の味方』なら、奴は俺を最後に殺すとか言っていた。なら、次に死ぬのは俺の家族だ。親父も死ぬ。クソ義弟も死ぬ。万が一、親父が正気に戻るか、これまた万が一、クソ義弟が回復したら、俺の次期市長の座が脅かされる。だが……俺を狙ってる奴が、わざわざ、俺に都合の悪い奴らを始末してくれるだろう。馬鹿め、俺に何の恨みが有るか知らないが……お前が何をしようと、全て俺の手の上で踊る哀れな猿だ」
「あ……あんたねぇ……」
「それは、そうと……何で、後援会の皆さんは、誰も来てない?」
「みんな、副市長の古賀さんに付きましたよ」
「何でだっ⁉」
「何でもクソも、何で、誰もあんたを応援しない理由が判んねえんだよッ⁉」
そ……そんな……何て事だ……。
きっと……親父の後援会の皆さんまで……あの恐るべき「正義の暴徒」どもに……洗脳されてしまったのか?
マズい……ならば、次の手段は……。
『臨時ニュースが入りました。先頃「御当地ヒーロー」により壊滅させられた暴力団「安徳グループ」の残党を名乗る集団が、佐賀県唐津市内の老人ホームを占拠しました』
「へっ?」
『ネット上の動画サイトで犯行声明と見られるものが公開されましたので、こちらでも流させていただきます』
「な……なんだ? どうなってる?」
「ま……まさか……」
猿渡のおっちゃんの顔から更に血の気が引き……。
「おい、心当りが有るのか?」
『安徳ホールディングスの元副CEOの酒村孝太郎と申します。皆様、御存知の通り、我が安徳ホールディングスおよび関連会社の実態は、いわゆるヤクザ・暴力団でした。それについては潔く認めます。しかし、残念ながら、我々に覚えのない罪まで、我が安徳グループの関係者に着せている者が居ます。それも警察関係者の中に』
えっと……何が起きてんだ?
『福岡県警の本部長殿。御存知の通り、我々が占拠した老人ホームには貴殿の御母堂様が入所されていらっしゃいます。親御さんの命が大事であれば、我々に濡れ衣を着せている、以下の3つの事件の真犯人を二四時間以内に逮捕していただきたい。1つ、久留米市内のミニコミ誌の編集者失踪事件。1つ、久留米市市長の娘さん御夫婦の拉致監禁事件。1つ久留米市副市長の娘さんの失踪事件』
「えっと……どう言う事?」
「あ……あのねえ……何、呑気な表情してんですか? 全部、あんたがやらかしたけど、俺が元の職場に働きかけて、あいつらに濡れ衣着せた事件でしょう」
「あ……あんたこそ、何言ってんだ? 俺は何1つやってね~ぞ。大体、何で、ヤクザの残党が、県警のエラいさんのお袋さんが、どこに居るかなんて事を知ったんだ?」
「あのねえ、まだ、気付かないんですか?」
「何を?」
「あんたが、散々利用した、警察上層部の個人情報のデータベースですけどね……」
「それが、どうした?」
「あれを最初に作ったのは……あいつら……安徳グループなんですよっ‼」
クソ……嘘だろう……。
「正義の暴徒」どもは……自分達と敵対していたクリムゾン・サンシャインの評判を地に堕とすと同時に……自分達の邪魔になる俺の味方を排除する……そんな一挙両得の手段を取り始めたようだ……。
「あ……あの……このままじゃ次に狙われるのは……」
ネット配信の地域ニュースを観ながら、選挙事務所の警備顧問である猿渡のおっちゃんは、真っ青な顔になっていた。
「親父達だな……」
「じゃあ……」
『次のニュースです。福岡県警久留米署と、複数の広域警察の久留米支局で、警察官がストライキを始めました』
はぁっ?
『ストライキを起こした警察官の代表は、久留米市内では、ここ数日、警察上層部による不可解かつ理不尽な命令が相次ぎ、それにより死傷者も出ており、警察上層部が納得のいく説明を行なうまで業務を遂行する事が出来ない、と発表しています』
「やったぞ、これで俺の家族を護る者は居なくなった」
「あ……あの……な……なにを言って……?」
「古川のおっちゃんを殺したのが、俺を狙っているアイツ……あの『永遠の夜』なんて中二病な名前を名乗ってる『正義の味方』なら、奴は俺を最後に殺すとか言っていた。なら、次に死ぬのは俺の家族だ。親父も死ぬ。クソ義弟も死ぬ。万が一、親父が正気に戻るか、これまた万が一、クソ義弟が回復したら、俺の次期市長の座が脅かされる。だが……俺を狙ってる奴が、わざわざ、俺に都合の悪い奴らを始末してくれるだろう。馬鹿め、俺に何の恨みが有るか知らないが……お前が何をしようと、全て俺の手の上で踊る哀れな猿だ」
「あ……あんたねぇ……」
「それは、そうと……何で、後援会の皆さんは、誰も来てない?」
「みんな、副市長の古賀さんに付きましたよ」
「何でだっ⁉」
「何でもクソも、何で、誰もあんたを応援しない理由が判んねえんだよッ⁉」
そ……そんな……何て事だ……。
きっと……親父の後援会の皆さんまで……あの恐るべき「正義の暴徒」どもに……洗脳されてしまったのか?
マズい……ならば、次の手段は……。
『臨時ニュースが入りました。先頃「御当地ヒーロー」により壊滅させられた暴力団「安徳グループ」の残党を名乗る集団が、佐賀県唐津市内の老人ホームを占拠しました』
「へっ?」
『ネット上の動画サイトで犯行声明と見られるものが公開されましたので、こちらでも流させていただきます』
「な……なんだ? どうなってる?」
「ま……まさか……」
猿渡のおっちゃんの顔から更に血の気が引き……。
「おい、心当りが有るのか?」
『安徳ホールディングスの元副CEOの酒村孝太郎と申します。皆様、御存知の通り、我が安徳ホールディングスおよび関連会社の実態は、いわゆるヤクザ・暴力団でした。それについては潔く認めます。しかし、残念ながら、我々に覚えのない罪まで、我が安徳グループの関係者に着せている者が居ます。それも警察関係者の中に』
えっと……何が起きてんだ?
『福岡県警の本部長殿。御存知の通り、我々が占拠した老人ホームには貴殿の御母堂様が入所されていらっしゃいます。親御さんの命が大事であれば、我々に濡れ衣を着せている、以下の3つの事件の真犯人を二四時間以内に逮捕していただきたい。1つ、久留米市内のミニコミ誌の編集者失踪事件。1つ、久留米市市長の娘さん御夫婦の拉致監禁事件。1つ久留米市副市長の娘さんの失踪事件』
「えっと……どう言う事?」
「あ……あのねえ……何、呑気な表情してんですか? 全部、あんたがやらかしたけど、俺が元の職場に働きかけて、あいつらに濡れ衣着せた事件でしょう」
「あ……あんたこそ、何言ってんだ? 俺は何1つやってね~ぞ。大体、何で、ヤクザの残党が、県警のエラいさんのお袋さんが、どこに居るかなんて事を知ったんだ?」
「あのねえ、まだ、気付かないんですか?」
「何を?」
「あんたが、散々利用した、警察上層部の個人情報のデータベースですけどね……」
「それが、どうした?」
「あれを最初に作ったのは……あいつら……安徳グループなんですよっ‼」
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