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第一章:シュミラクラ
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冷静である事と感情豊かである事は同時に成立する。
むしろ、感情を失なった状態こそ冷静である事から最も懸け離れている。
自称「レスキュー隊員」達によって、様々な「実験」をされて始めてから一週間ほどが過ぎた頃には、そう思うようになっていた。
多分、誰かの思考や行動を「冷静」と形容する場合、「『冷静』であるとされる者は、何かを考える事が出来る」のが前提だろうが、今の私は考える気力が湧かない。
本当に私が脳改造されていて……自称「レスキュー隊員」達が想定した通りの実験結果が出ているのか?
もしくは、私が脳改造されているのは本当だが……自称「レスキュー隊員」達が私に行なった実験の結果、彼等にも想定外の事が起きているのか?
あるいは……全てが嘘で、食事に何か……例えば人間を鬱状態や無気力にするような薬が混ぜられているのか?
深く考えたくても……疲れは感じないのに、徹夜した時よりも頭が回らない。
意欲も感情の一種なら……感情が摩耗したかのような状態で何が起きるかは言うまでもない。
自称「レスキュー隊員」は状況を説明してくれてはいる。
外部と完全に電波を遮断した建物内で数日過ごす。
私が居た筑豊以外の「伝統文化地域」の政治家達も何者かに脳改造されていたが……その「脳改造」の細かい仕様が違っていたので、違う脳改造をされた者同士が近くに居た場合、何が起きるかを試したい。
全てが面倒だ。
食事も……風呂に入るのも……トイレに行くのも……。
さも当然のようにシャワーを浴びながら小便をしていて……しかも、それを何とも思っていないのを自分で気付いた時……ひょっとしたら、あと何日かで、さも当然のように寝ながら糞をするようになるかもしれない……そんな事を思った。
それなのに……自分が少し前の自分と違う自分になっていくのを自覚していながら、その事に何の恐怖も感じない。
この状態で、自称「レスキュー隊員」の言う「社会復帰」が出来ても……サウナやスパには行かない方が良いだろう。浴場で小便をして他の客の顰蹙を買いかねない。
逆に刑務所や収容所にブチ込まれたら、命の危険が有る。こんな真似をするのが私にとっての「当り前」になった状態で、そんな場所に入れられたら……これまた浴場で小便をして、他の囚人に袋叩きにされるだろう。
だが……私は、心のどこかで……「シャワーを浴びながら小便をするのは、案外、合理的ではないのか?」と思うようになっていた。
ある日、ふと耳の裏に違和感を感じ指で掻くと……爪の先端には垢が付いていた。
一応は毎日シャワーを浴びている筈なのに、自分でも気付かぬ内に、髪や体の洗い方が日に日に雑になっていたようだ。
感情の摩耗は、私から人間性を奪っていくが……自分がおかしくなっていくのが判るのに、不安も恐怖も全く無い。
更に何日かが過ぎ……何回か場所を移され……。
腕には一見すると血圧計にも見える心拍数その他を測定するらしい機器を付けられ……頭にはヘルメットのようなモノを被せられ……。
その時、私に感情が戻った。
あはははは……えっ? 何故、私は笑ってい……恐い、哀しい、やめろ、私の心を操るな操るな……この野郎、ブッ殺す……おい、何が起きてる、しまった、無気力になってたせいで、自称「レスキュー隊員」どもの実験の説明をちゃんと聞いてなかった……うきゃきゃきゃきゃ、私は何で馬鹿なんだ、笑える、超笑え……いや、自分が間抜け過ぎて哀しくなって……哀しみは怒りに変り……って、これ、どう考えても、私の……うわわわああああ……感情が暴走……あれ?
正常な人間なら……恐くなる筈だ。
自分の感情を自分でコントロール出来なくなり……しかも、どうやら外部から好きに私の感情をコントロール出来るらしい。
「暫定的ですが……しばらくの間、これで御自分の感情をコントロールして下さい」
実験を行なっていた自称「レスキュー隊員」の1人が、私にあるものを渡す。
多分……型式は「外」の最新型なのだろう。
だが、それは……単なる携帯電話に見えた。
むしろ、感情を失なった状態こそ冷静である事から最も懸け離れている。
自称「レスキュー隊員」達によって、様々な「実験」をされて始めてから一週間ほどが過ぎた頃には、そう思うようになっていた。
多分、誰かの思考や行動を「冷静」と形容する場合、「『冷静』であるとされる者は、何かを考える事が出来る」のが前提だろうが、今の私は考える気力が湧かない。
本当に私が脳改造されていて……自称「レスキュー隊員」達が想定した通りの実験結果が出ているのか?
もしくは、私が脳改造されているのは本当だが……自称「レスキュー隊員」達が私に行なった実験の結果、彼等にも想定外の事が起きているのか?
あるいは……全てが嘘で、食事に何か……例えば人間を鬱状態や無気力にするような薬が混ぜられているのか?
深く考えたくても……疲れは感じないのに、徹夜した時よりも頭が回らない。
意欲も感情の一種なら……感情が摩耗したかのような状態で何が起きるかは言うまでもない。
自称「レスキュー隊員」は状況を説明してくれてはいる。
外部と完全に電波を遮断した建物内で数日過ごす。
私が居た筑豊以外の「伝統文化地域」の政治家達も何者かに脳改造されていたが……その「脳改造」の細かい仕様が違っていたので、違う脳改造をされた者同士が近くに居た場合、何が起きるかを試したい。
全てが面倒だ。
食事も……風呂に入るのも……トイレに行くのも……。
さも当然のようにシャワーを浴びながら小便をしていて……しかも、それを何とも思っていないのを自分で気付いた時……ひょっとしたら、あと何日かで、さも当然のように寝ながら糞をするようになるかもしれない……そんな事を思った。
それなのに……自分が少し前の自分と違う自分になっていくのを自覚していながら、その事に何の恐怖も感じない。
この状態で、自称「レスキュー隊員」の言う「社会復帰」が出来ても……サウナやスパには行かない方が良いだろう。浴場で小便をして他の客の顰蹙を買いかねない。
逆に刑務所や収容所にブチ込まれたら、命の危険が有る。こんな真似をするのが私にとっての「当り前」になった状態で、そんな場所に入れられたら……これまた浴場で小便をして、他の囚人に袋叩きにされるだろう。
だが……私は、心のどこかで……「シャワーを浴びながら小便をするのは、案外、合理的ではないのか?」と思うようになっていた。
ある日、ふと耳の裏に違和感を感じ指で掻くと……爪の先端には垢が付いていた。
一応は毎日シャワーを浴びている筈なのに、自分でも気付かぬ内に、髪や体の洗い方が日に日に雑になっていたようだ。
感情の摩耗は、私から人間性を奪っていくが……自分がおかしくなっていくのが判るのに、不安も恐怖も全く無い。
更に何日かが過ぎ……何回か場所を移され……。
腕には一見すると血圧計にも見える心拍数その他を測定するらしい機器を付けられ……頭にはヘルメットのようなモノを被せられ……。
その時、私に感情が戻った。
あはははは……えっ? 何故、私は笑ってい……恐い、哀しい、やめろ、私の心を操るな操るな……この野郎、ブッ殺す……おい、何が起きてる、しまった、無気力になってたせいで、自称「レスキュー隊員」どもの実験の説明をちゃんと聞いてなかった……うきゃきゃきゃきゃ、私は何で馬鹿なんだ、笑える、超笑え……いや、自分が間抜け過ぎて哀しくなって……哀しみは怒りに変り……って、これ、どう考えても、私の……うわわわああああ……感情が暴走……あれ?
正常な人間なら……恐くなる筈だ。
自分の感情を自分でコントロール出来なくなり……しかも、どうやら外部から好きに私の感情をコントロール出来るらしい。
「暫定的ですが……しばらくの間、これで御自分の感情をコントロールして下さい」
実験を行なっていた自称「レスキュー隊員」の1人が、私にあるものを渡す。
多分……型式は「外」の最新型なのだろう。
だが、それは……単なる携帯電話に見えた。
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