「Dystopia Now!!」:第一部「模倣遊戯」

蓮實長治

文字の大きさ
10 / 12
第一章:シュミラクラ

(9)

しおりを挟む
 解放された私は、新宮市役所の契約職員の仕事を紹介された。
 二十数年前の旧政府と旧首都圏の崩壊の頃までは「新宮町」だったが、富士の噴火による「関東難民」の流入により「市」となったらしい。
 給料は……「外」の基準では高いか安いか判らない。
 まぁ、何か趣味を持っていて、週に1回はいつもの2~3倍の値段の食事をする程度の「贅沢」をしても、収入の五~一〇%は貯金に回せる……その位の給料だ。
 仕事はPCさえ使えれば誰でも出来る事務仕事。
 パワハラもセクハラもない職場が……何か清潔過ぎて違和感を感じるが……それ以外に特に不満は無かった。
 仕事ぶりが良ければ、正採用になる可能性も有る、とは今の上司から言われているが……もし自称「レスキュー隊員」達の言うように、私に何かの脳改造がされているなら……正規の職員となっても、管理職になれるかは判らない。
 私に行なわれた……行なわれたと云うのが本当だとすればだが……「脳改造」が管理職に必要な、例えば柔軟な判断能力を奪っている可能性が有るからだ。
 仕事が終ると、近くのカレー屋で夕食を取る。
 辛さは最も辛い「激辛」を指定し、更にそれに辛味付けの液状スパイスを振りかけて黙々と食べる。
 続いて、喫茶店に入り……一番甘いジュースを注文し……更に、それにガムシロップを入れて飲む。
 変な飲み方だが……「外」では稀に異能力と引き換えに高カロリーの食事を必要とする者が居るらしく、店員には私もそんな人間だと思われているようだ。
 同僚に勧められた小説を読んでみるが……感動も笑いも感じない。
 食事シーンになっても美味そうだと云う感想は湧かず、SEXシーンになっても男性器は反応しない。
 「どうやら作者はギャグのつもりで書いているらしい」と云う場面になって、自称「レスキュー隊員」に渡された携帯電話ブンコPhoneに入っているアプリで「笑い(軽度)」を選択する。
 自称「レスキュー隊員」の説明では、私の脳内の電子機器に対して無線LAN通信で干渉を行ない、感情を一時的・擬似的に取り戻す方法を見付けたらしいが……まだ、完全では無いようだ。
 ようやく楽しい気持ちになってきたが……私の心の一部は理性的だが極めて陰気な感じで「虚しいだけだ」と指摘している……ように感じる。
 どうやら……私は、感情の起伏が乏しくなったらしい。ただし、全く無くなった訳ではない。
 自称「レスキュー隊員」の説明だと……脳改造の影響だ。
 近くに……脳内に埋め込まれている無線LAN機器の電波が届く範囲と云う意味らしい……私と同じ脳改造をされた者が入れば、互いの感情を共有し、それによって起きる「感情の相互増幅」とでも呼ぶべき現象によって、ようやく人並の感情を持てるようになる……そうだ。
 その方法で何かの感情を感じてから、1~2日程度は、相互増幅された感情の残滓でマトモな感情が有るように振舞えるとも言われた。
 それならば……「外」に拉致されてから感情を失なったのも説明は付くが……どこまで信じて良いのだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...