「Dystopia Now!!」:第一部「模倣遊戯」

蓮實長治

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第一章:シュミラクラ

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 ただ、ひたすらに走り続けていた。
 感情をほとんど失なってからの楽しみは、肉体的な刺激ばかりになっていた。
 食べ物の味付けはの好みは、日に日に濃く刺激的なモノになっていく。
 休みの日はいつもジョギング。
 たまの贅沢はサウナ。
 小説やマンガを読んだり、映画やドラマを観ても何も感じない。
 ネット上で、かつては賛同していたであろう政治的意見や、逆に、かつては危険思想だと思っていたであろう主張を見付けても、やはり、何も感じない。
 例えば、かつては……論理的だと思っていた意見を読み直しても……わからない。どんな理由で、自分が、その意見を論理的だと思っていたのかが……。
 ある意見や主張を「論理的」「合理的」だと思う事にも、感情的判断が関係しているのか?
 そして、もし、自称「レスキュー隊」の言う通り、かつての私の感情が本当は私の感情で無かったとすれば……私が正しいと思ってきた事は……何を根拠に「正しい」と思っていたのか?
 いや……私があまりに異常な状態に置かれたせいで、逆に気付いてしまっただけで、かつての私を含めた大多数の人間は、ある意見や主張に対して、のでは無いのか?
 それとも、感情的判断こそが真に合理的であって……感情をほとんど失なった状態では、何が合理的かを巧く判断出来なくなっているのだろうか?
 少し走るだけのつもりが、2㎞は走っていた。
 乾いた喉をスポーツドリンクで潤す。
 たったそれだけの事が、感情的に基く感動や悦びを得られなくなった私にとって無上の悦びになっていた。
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