メタデスゲーム

蓮實長治

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プロローグ

好きな事だからこそ金を注ぎ込むんじゃなかった

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『「マトモな方法では一生かかっても返せない程の多額の借金をこさえたせいで、このデスゲームに参加する羽目になったマヌケが居た」……んな、ありがちな説明から始まる小説が有ったら、最初のページを読み終えない内に、その小説を投げ出すだろうな……』
 マトモな方法では一生かかっても返せない程の多額の借金をこさえたせいで、このデスゲームに参加する羽目になったマヌケの1人は、そんな事を考えていた。
『ルールは簡単です。半月ごとの人気投票で下位の方から強制脱落していきます』
 ビデオ会議アプリに映っている(正確にはマヌケなツラの怪獣の着ぐるみを着ているので本当の顔や……本当の体格や性別や人種すら判らないが)司会者は、そう告げた。
 参加者達の脳内には遠隔リモートで起動する小型爆弾が埋め込まれている。
 下手に取り出そうとすれば……外科医のメスがほんの少しズレただけで残りの一生を半身不随で過す羽目になりかねない場所だ。
 その小型爆弾は、威力も押さえてあるので爆発しても死ぬ事は無い。ただ、ドカンとなったが最後、体もマモトに動かせなくなり、言語能力にも重篤な障害が発生し、記憶その他にも重大な後遺症が残るだけで。
『観客を楽しませる為なら何をしても結構ですが、観客に危険が及ぶ行為をした事が発覚した時点で強制脱落です』
 多分……俺も含めて……自分は独創的な発想が出来ると思ってたが実は凡庸な奴らばかりなんだろ~なぁ~。いや、参加者だけじゃなくて下手したら主催者も……。
 おそらくは、日本で唯一の参加者である彼は、そんな事を考えた。
『皆さんは観客の個人情報を知ったが最後、何をしでかすか判らないような人間の屑どもですので……もちろん観客が誰かは極秘事項です。では、最後の1人が賞金を総取りです。では、皆さん、頑張って下さい』
 さて……
 彼の脳裏に……そんな考えが過った。
 そして、こうも思った。
 傍から見ると順風満帆なのに、実は人生ドン詰まり……そんな単なる「人生ドン詰まり」なだけより酷い「人生ドン詰まり」なのに……何で、俺は、まだ、逆転のチャンスが有ると信じてるんだろう?……と。
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