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第50話
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「デュペルじゃないか!」
「……はぁ、はぁ……? ん? トーマさん!?」
急に名前を呼ばれた雷心デュペルは、その方向へ振り向き仲間の存在に気が付く。
デュペルの体は、微かに泥が付着しており、激しい戦闘の跡を感じさせる。
この声を聞いて、この場にいた他の冒険者たちも、トーマガイとシェントルマの存在に気が付く。
「っあ! めっちゃ良いところに来たね、2人とも!」
盾殴りのナゲキスが、腕を振り上げて合図をする。彼女の両盾はひどく泥で汚れているが、靴以外の装備品には一切泥がついていなかった。しっかりと防御しているのだろう。
「......助かり、ます」
1人だけかなり離れた距離にいた精霊使いアシトンも、仲間の存在に気がつくことが出来た。彼女は戦う術をほとんど持っていない状態になっているので、泥から逃げることしかできていなかった。
そして、トーマガイたちとは仲間ではないが、合同クエストの協力パーティーである光炎万丈の3人も、それに気がついていた。
炎使いゲッキ、水虎使いシヲヌ、土蹴りのリマンロの3人は、大木に身を隠しながら、奴と戦い続けていた。
「何があったんだ……!?」
誰かに状況を報告して貰おうとトーマガイは考えたが、その必要はなくなった。
冒険者たちがいる場所から少し離れた距離に、奴を見つけたからだ。
「ば、バケガエル??」
ぶよぶよとした見た目の爬虫類を見て、シェントルマは瞬間的にそう呼称した。
泥を纏っているという事もあって、正確にその体を把握しづらいのもある。
「いや、サンショウウオだ。おそらくは……そう、デイダイオウ!」
トーマガイは、自分の溜め込んだ知識の中から、合致するモンスターの名を呼んだ。冒険者生活40年ほどの彼の歴史の中でも、ほとんど出会ったことがないモンスターだ。
「!? おいじいさん! こいつの弱点、知ってるか!?」
トーマガイの声を聞いた炎使いのゲッキが、思わず身を乗り出した。樹木に身を隠していたその姿が、敵の目に移り込んだ。
するとすかさず巨大サンショウウオ・デイダイオウは、得意のマッドブレスを小型版で放ってくる。
「危ない。【ウォーターウォール】」
それを察知した彼の幼馴染・水虎使いのシヲヌが、スキルを発動しながら彼の腕を引っ張った。
ゲッキはデイダイオウに背を向けた状態になっており、その背中に水で出来た簡素な壁が作られる。
そしてそれが、泥の弾丸を受け止める。が、すぐにその水壁をぶち破ってしまう。
が、すでに泥が進む方向には、ゲッキの姿はいなかった。
「っうわ、まじ助かった! さすがシヲヌだぜ」
「気をつけなさい」
真顔を貫く水虎使いのシヲヌは、舌ベロを軽く出して片手で丸を作る。よく分からないが、急に飛び出したことに怒ってはいないようだ。
「すまない少年、俺はあいつを見かけたことがあるだけだ」
熟年冒険者のトーマガイは、他のクエスト中にデイダイオウの住処を通りがかったにすぎないようだ。
そもそもクエストに関係ないモンスターを狩ることは少ないこともあるが、デイダイオウは見つけたからといって立ち向かうような相手ではないのだろう。
「っまっじか~。見ての通り、防戦一方、水も炎も、あと雷とかも効かないんだよ!
っあ、じいさんたちは何が出来るんだよ」
「殴る、蹴る、あとはタックルだな」
「僕は氷だよ。けど、泥って凍るのかな?」
トーマガイと氷刃のシェントルマが、自分のできることを簡潔に述べる。
水ならば、氷で凍らせることは可能だろう。性質の似ている泥も、同じ現象を引き起こせる可能性は大いにある。
「そうじゃん! 氷ならいけるんじゃないか?」
そう言ったのは、雷心デュペルだった。氷系統のスキルを使えるシェントルマなら、何か対抗できるのではないかと。
それを確かめるために、彼はあえてデイダイオウから自分が発見される位置に移動した。
すると、決まりごとのようにマッドブレスが飛んできた。小型版ではあるが、人サイズがぶつかれば、あっという間に全身泥だらけになる。
「ちょ、あっぶないって」
氷刃のシェントルマは、彼の考えていることになんとなく気が付きながら、彼の側に走り寄る。
雷心デュペルは、手に持った槍を構えようともしなかった。
デュペルに泥がぶつかる瞬間、シェントルマは剣を抜いて、そのままスキルを発動する。
「【アイシクルスラッシュ】!」
氷を纏った剣が、【マッドブレス】に切りかかる。
すると、冷気が泥に伝わり、一気に円状に包むように凍らせていく。
「っお! これなら」
と、雷心デュペルが喜んだ時だった。
「っぐ! デュペルくん、逃げて」
氷刃のシェントルマは、苦しんだ表情で、剣を強く握っていた。確かに泥を凍らせることはできた。が、スキル効果まで凍結させるという概念的な効果はない。
つまり、今度は氷の弾丸がシェントルマの剣と衝突していることに置き換わったに過ぎない。
もちろん、【アイシクルスラッシュ】は凍らせるだけではないので、しっかりと斬撃で泥の勢いは止めている。
が、シェントルマとデイダイオウには、それなりにレベル差があるようで、押し負けている。
「うぅぅぅう、そりゃあ!」
シェントルマはなんとか、氷に変化した塊をはじき返した。しかし、かなりの衝撃をシェントルマは受けており、そのまま少し後方に吹っ飛ばされる。
そしてそこには、自分から飛び出してきた雷心デュペルがいた。
「うわ!」
シェントルマの体がデュペルに覆いかぶさり、2人は仲良く一緒に倒れてしまう。しかも、その辺りは、泥で少し汚れており、2人の装備品に泥が付着する。顔にはつかなかったようで、泥によるダメージはそこまでではない。
「……はぁ、はぁ……? ん? トーマさん!?」
急に名前を呼ばれた雷心デュペルは、その方向へ振り向き仲間の存在に気が付く。
デュペルの体は、微かに泥が付着しており、激しい戦闘の跡を感じさせる。
この声を聞いて、この場にいた他の冒険者たちも、トーマガイとシェントルマの存在に気が付く。
「っあ! めっちゃ良いところに来たね、2人とも!」
盾殴りのナゲキスが、腕を振り上げて合図をする。彼女の両盾はひどく泥で汚れているが、靴以外の装備品には一切泥がついていなかった。しっかりと防御しているのだろう。
「......助かり、ます」
1人だけかなり離れた距離にいた精霊使いアシトンも、仲間の存在に気がつくことが出来た。彼女は戦う術をほとんど持っていない状態になっているので、泥から逃げることしかできていなかった。
そして、トーマガイたちとは仲間ではないが、合同クエストの協力パーティーである光炎万丈の3人も、それに気がついていた。
炎使いゲッキ、水虎使いシヲヌ、土蹴りのリマンロの3人は、大木に身を隠しながら、奴と戦い続けていた。
「何があったんだ……!?」
誰かに状況を報告して貰おうとトーマガイは考えたが、その必要はなくなった。
冒険者たちがいる場所から少し離れた距離に、奴を見つけたからだ。
「ば、バケガエル??」
ぶよぶよとした見た目の爬虫類を見て、シェントルマは瞬間的にそう呼称した。
泥を纏っているという事もあって、正確にその体を把握しづらいのもある。
「いや、サンショウウオだ。おそらくは……そう、デイダイオウ!」
トーマガイは、自分の溜め込んだ知識の中から、合致するモンスターの名を呼んだ。冒険者生活40年ほどの彼の歴史の中でも、ほとんど出会ったことがないモンスターだ。
「!? おいじいさん! こいつの弱点、知ってるか!?」
トーマガイの声を聞いた炎使いのゲッキが、思わず身を乗り出した。樹木に身を隠していたその姿が、敵の目に移り込んだ。
するとすかさず巨大サンショウウオ・デイダイオウは、得意のマッドブレスを小型版で放ってくる。
「危ない。【ウォーターウォール】」
それを察知した彼の幼馴染・水虎使いのシヲヌが、スキルを発動しながら彼の腕を引っ張った。
ゲッキはデイダイオウに背を向けた状態になっており、その背中に水で出来た簡素な壁が作られる。
そしてそれが、泥の弾丸を受け止める。が、すぐにその水壁をぶち破ってしまう。
が、すでに泥が進む方向には、ゲッキの姿はいなかった。
「っうわ、まじ助かった! さすがシヲヌだぜ」
「気をつけなさい」
真顔を貫く水虎使いのシヲヌは、舌ベロを軽く出して片手で丸を作る。よく分からないが、急に飛び出したことに怒ってはいないようだ。
「すまない少年、俺はあいつを見かけたことがあるだけだ」
熟年冒険者のトーマガイは、他のクエスト中にデイダイオウの住処を通りがかったにすぎないようだ。
そもそもクエストに関係ないモンスターを狩ることは少ないこともあるが、デイダイオウは見つけたからといって立ち向かうような相手ではないのだろう。
「っまっじか~。見ての通り、防戦一方、水も炎も、あと雷とかも効かないんだよ!
っあ、じいさんたちは何が出来るんだよ」
「殴る、蹴る、あとはタックルだな」
「僕は氷だよ。けど、泥って凍るのかな?」
トーマガイと氷刃のシェントルマが、自分のできることを簡潔に述べる。
水ならば、氷で凍らせることは可能だろう。性質の似ている泥も、同じ現象を引き起こせる可能性は大いにある。
「そうじゃん! 氷ならいけるんじゃないか?」
そう言ったのは、雷心デュペルだった。氷系統のスキルを使えるシェントルマなら、何か対抗できるのではないかと。
それを確かめるために、彼はあえてデイダイオウから自分が発見される位置に移動した。
すると、決まりごとのようにマッドブレスが飛んできた。小型版ではあるが、人サイズがぶつかれば、あっという間に全身泥だらけになる。
「ちょ、あっぶないって」
氷刃のシェントルマは、彼の考えていることになんとなく気が付きながら、彼の側に走り寄る。
雷心デュペルは、手に持った槍を構えようともしなかった。
デュペルに泥がぶつかる瞬間、シェントルマは剣を抜いて、そのままスキルを発動する。
「【アイシクルスラッシュ】!」
氷を纏った剣が、【マッドブレス】に切りかかる。
すると、冷気が泥に伝わり、一気に円状に包むように凍らせていく。
「っお! これなら」
と、雷心デュペルが喜んだ時だった。
「っぐ! デュペルくん、逃げて」
氷刃のシェントルマは、苦しんだ表情で、剣を強く握っていた。確かに泥を凍らせることはできた。が、スキル効果まで凍結させるという概念的な効果はない。
つまり、今度は氷の弾丸がシェントルマの剣と衝突していることに置き換わったに過ぎない。
もちろん、【アイシクルスラッシュ】は凍らせるだけではないので、しっかりと斬撃で泥の勢いは止めている。
が、シェントルマとデイダイオウには、それなりにレベル差があるようで、押し負けている。
「うぅぅぅう、そりゃあ!」
シェントルマはなんとか、氷に変化した塊をはじき返した。しかし、かなりの衝撃をシェントルマは受けており、そのまま少し後方に吹っ飛ばされる。
そしてそこには、自分から飛び出してきた雷心デュペルがいた。
「うわ!」
シェントルマの体がデュペルに覆いかぶさり、2人は仲良く一緒に倒れてしまう。しかも、その辺りは、泥で少し汚れており、2人の装備品に泥が付着する。顔にはつかなかったようで、泥によるダメージはそこまでではない。
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