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星は僕たちを待っててくれている。ターコイズブルーの石ころ、永遠の誕生日、成功と健康、旅のあんぜん。
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お月様から地球を見たならば、地球はどんなふうに見えるのだろうか。
月にから誰かが空をみあげたならば、
地球はまるで青色の石のかたまりみたいに見えるのだろうか。
僕以外の人から自分がどんなふうに見えているのか、
みんなが僕のことをどう思っているのか、
その時の僕にとって大切なテーマだった。
人が自分のことをどう思っているか気になって仕方がなかった。
それがその頃の自分にとってほとんど全てだったかもしれない。
そんな人のことを気にする自分のことが恥ずかしかった。
他人を気にしないで、自分らしく自信を持って生きている人が
眩しくて羨ましくてそんな人の前にいくと緊張して途端に
緊張して体が動かなくなってしまう。
でも今ならわかるけれど、
そんなふうに誰かを気にすることは決して恥ずかしいことでない、
野の花が美しく咲くのはミツバチに見つけてもらうためだし、
音楽家が美しい旋律を奏でるのは、観客の心を癒すためだから。
みんな自分の愛する人のために美しく着飾る。
では夜空に見える、
月や星たちは、いったい誰のために美しく輝いているのだろうか。
空の星たちは僕たちのことに気がついているのだろうか。
星たちは僕らが語りかけるのを待っててくれているのだろうか。
仁の話を聞きながら、
僕は金属のフェンスの向こうで泳ぐ他校の生徒たちの姿を見ていた。
そこで泳いでいたたくさんの中で、
僕が見ていたのは名前も知らないたった一人の泳ぎ手の姿だった。
僕は仁の話を聞ききながら、
他の泳ぎ手のペースに惑わされないように、
一人でゆっくり自由に泳いでいるその人の姿を自然と目で追っていた。
「コージくん、今日、僕、美園アズサさんに映画誘われてるから、
僕、部活休むね。東南高の監督代行のマネージャーさんに伝えといて」
「どうして僕が伝えるの?」
「エリート集団の東南高校水泳部が僕たちの学校にわざわざきてくれてるのに、副キ
ャプテンの僕が休みなのは失礼でしょ。だから、
そこはキャプテンのコージくんが謝っておいてね。くれぐれもよろしくだよ、
今日の要件はそれだけ」
「ほんとにそれだけ?」
「そう」
仁は優しく微笑んだ。
そうして、学生鞄の中の蓋を開けて中から小さな巾着袋を取り出した。
「あ、もいっこだけ、少し早いけれど18歳のお誕生日おめでとう、コージくん」
仁は小さな袋に手を入れて、その中にある小石を指で摘んで僕に見せた
それは青色の石だった。
「ターコイズブルーストーン、和名トルコ石、成功、健康、旅の安全、を約束してくれるよ。コージくんが大人になっても元気でいられますように」
12月生まれの僕にとっては半年ほども早い誕生日プレゼントだった。
「コージくん、良い旅を、ごあんぜんにね」
「まだ、12月の誕生日まで半年くらいあるけど、ありがとう」
それが僕と仁が言葉を交わした最後の時間となった。
後で知ったけれど、仁が美園アズサに映画に誘われていたのは本当だけれど、
その日、仁は美園アズサの前には現れなかった。
仁はその時まだ美園とは付き合っていなかった。
もしかしたら美園は仁の心をわかっていて、付き合うことで
なんとかして仁のことを救おうとしたのかもしれない。
仁の中に住んでた恐ろしい怪物に彼の心がくわれてしまう前に。
しかし、美園にも仁を救えなかった。
あの時、もっと真剣に仁の言葉に耳を傾けていればよかったと今でも悔やむ。
仁は最高に優しい笑顔だけを残していなくなってしまった。
僕はその笑顔が隠していた、
仁の心を喰い荒らしていた怪物に気が付くことができなかった。
おそらく心無い人たちは彼がいなくなってなお、
憶測だけで彼のことをとやかくいうことだろう。
けれど、そんな声も仁が聞くことはもうない。
僕はあの時、彼がなんらかの救いを求めて伸ばした手を掴むことができなかった。
僕はいつも、大切なことが過ぎ去ってから初めて気が付く。
あの時僕が、どうしたら仁のことを止められたのか。
仁はその夜、理由も言わずに行方をくらませた。
月にから誰かが空をみあげたならば、
地球はまるで青色の石のかたまりみたいに見えるのだろうか。
僕以外の人から自分がどんなふうに見えているのか、
みんなが僕のことをどう思っているのか、
その時の僕にとって大切なテーマだった。
人が自分のことをどう思っているか気になって仕方がなかった。
それがその頃の自分にとってほとんど全てだったかもしれない。
そんな人のことを気にする自分のことが恥ずかしかった。
他人を気にしないで、自分らしく自信を持って生きている人が
眩しくて羨ましくてそんな人の前にいくと緊張して途端に
緊張して体が動かなくなってしまう。
でも今ならわかるけれど、
そんなふうに誰かを気にすることは決して恥ずかしいことでない、
野の花が美しく咲くのはミツバチに見つけてもらうためだし、
音楽家が美しい旋律を奏でるのは、観客の心を癒すためだから。
みんな自分の愛する人のために美しく着飾る。
では夜空に見える、
月や星たちは、いったい誰のために美しく輝いているのだろうか。
空の星たちは僕たちのことに気がついているのだろうか。
星たちは僕らが語りかけるのを待っててくれているのだろうか。
仁の話を聞きながら、
僕は金属のフェンスの向こうで泳ぐ他校の生徒たちの姿を見ていた。
そこで泳いでいたたくさんの中で、
僕が見ていたのは名前も知らないたった一人の泳ぎ手の姿だった。
僕は仁の話を聞ききながら、
他の泳ぎ手のペースに惑わされないように、
一人でゆっくり自由に泳いでいるその人の姿を自然と目で追っていた。
「コージくん、今日、僕、美園アズサさんに映画誘われてるから、
僕、部活休むね。東南高の監督代行のマネージャーさんに伝えといて」
「どうして僕が伝えるの?」
「エリート集団の東南高校水泳部が僕たちの学校にわざわざきてくれてるのに、副キ
ャプテンの僕が休みなのは失礼でしょ。だから、
そこはキャプテンのコージくんが謝っておいてね。くれぐれもよろしくだよ、
今日の要件はそれだけ」
「ほんとにそれだけ?」
「そう」
仁は優しく微笑んだ。
そうして、学生鞄の中の蓋を開けて中から小さな巾着袋を取り出した。
「あ、もいっこだけ、少し早いけれど18歳のお誕生日おめでとう、コージくん」
仁は小さな袋に手を入れて、その中にある小石を指で摘んで僕に見せた
それは青色の石だった。
「ターコイズブルーストーン、和名トルコ石、成功、健康、旅の安全、を約束してくれるよ。コージくんが大人になっても元気でいられますように」
12月生まれの僕にとっては半年ほども早い誕生日プレゼントだった。
「コージくん、良い旅を、ごあんぜんにね」
「まだ、12月の誕生日まで半年くらいあるけど、ありがとう」
それが僕と仁が言葉を交わした最後の時間となった。
後で知ったけれど、仁が美園アズサに映画に誘われていたのは本当だけれど、
その日、仁は美園アズサの前には現れなかった。
仁はその時まだ美園とは付き合っていなかった。
もしかしたら美園は仁の心をわかっていて、付き合うことで
なんとかして仁のことを救おうとしたのかもしれない。
仁の中に住んでた恐ろしい怪物に彼の心がくわれてしまう前に。
しかし、美園にも仁を救えなかった。
あの時、もっと真剣に仁の言葉に耳を傾けていればよかったと今でも悔やむ。
仁は最高に優しい笑顔だけを残していなくなってしまった。
僕はその笑顔が隠していた、
仁の心を喰い荒らしていた怪物に気が付くことができなかった。
おそらく心無い人たちは彼がいなくなってなお、
憶測だけで彼のことをとやかくいうことだろう。
けれど、そんな声も仁が聞くことはもうない。
僕はあの時、彼がなんらかの救いを求めて伸ばした手を掴むことができなかった。
僕はいつも、大切なことが過ぎ去ってから初めて気が付く。
あの時僕が、どうしたら仁のことを止められたのか。
仁はその夜、理由も言わずに行方をくらませた。
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