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六章 王子様の誕生パーティー
78話 パーティーの終わり
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パレットが騎士の恰好をした兵士たちに護衛されながら会場に戻ると、招待客はみんなテラスで花火に見入っていた。
――へえ、こんなものを仕掛けていたのね。
パレットはあれが攻撃用魔法具のなれの果てだとは思いもせず、純粋に関心していた。
「人が多くなってきたし、俺らはここまでだな」
「明るいところに出ると、さすがに騎士じゃないとバレる」
兵士が護衛はここまでだと、テラスの手前で言って来た。
――騎士っぽい方なのは断然この人たちだけど、美しさこそ全てな連中の仲間には見えないわね。
微妙な納得の仕方をして、パレットは彼らにここまで付いて来てくれた礼をする。
「明るいところまで送ってくれて、ありがとうございます」
パレットはざっと自分の格好を確認したが、叔父から逃げるのに草の上を転がったりしたが、ドレスは目立った汚れもない。
――たった一度だけ着て駄目になった、なんてことにならずによかった。
パレットが安堵した時。
「パレット!」
パレットの姿に気付いたジーンが、テラスの方から足早に駆けて来た。
パレットと別れて持ち場に還ろうとしていた兵士たちも、立ち止まって振り返る。
ジーンは一度パレットの前で立ち止まる。
「……無事で、良かった」
そう言ってパレットをぎゅっと抱きしめてきた。
――ちょっと、人前!
普段ではないジーンの行動に、パレットは顔を赤くしたり慌てたりと忙しない。
「怪我は?」
ジーンがそのままの体勢で聞いてきた。
「ないです、兵士の方々に早めに見つけてもらえましたから」
ジーンを安心させるように、パレットは背中を軽く叩いた。
この様子を、静かに見ていないのが兵士たちだ。
「よ、色男!」
「おうおう、お熱いねぇ!」
兵士たちが口笛を吹いてからかいの声を上げる。
ジーンはようやくパレットから身体を離すと、彼らに向き直った。
「お前ら、本当にありがとう」
ジーンが深々と頭を下げた。
これに、兵士たちが驚いた。
「ジーンが女のために頭を下げた!」
「本気の女の効果ってすげぇな!」
そんな風に、いつまでも兵士たちと別れずにおしゃべりしていたパレットたちに、近づいてきた人物がいた。
「あ……」
パレットたちはもちろん、兵士たちも慌てて頭を下げる。
テラスに出ていた貴族たちの視線を一身に受けて、こちらにやって来たのは王子様だった。
護衛としてテーブルに潜んでいたミィも一緒だ。
さらにその後方に、キールヴィスとオルディアの姿がある。
パーティー会場に獣が現れたので貴族たちがざわめくが、連れているのが王子様たちとあっては、表立って非難するものはいない。
「二人とも、ここにいたのか」
王子様が声をかけると、ミィがパレットに向かって飛び込んで来た。
甘えるようにすり寄るミィは、まるで褒めてもらうのを待つ子供のようだ。
「ミィ、お役目ご苦労様」
「みゃ!」
パレットが小さく言うと、ミィは満足そうに鳴いた。
「悪だくみをしていた者は捕まったそうだ。
こうして無事にパーティーを終えようとしているのは、そなたたちのおかげだ。
ミィを貸してくれて感謝する」
パレットたちに謝意を表した王子様に、周囲の貴族たちが騒ぎ出す。
様々な思惑を交わす貴族たちを務めて意識から外し、パレットは王子様に微笑んだ。
「感謝は不要です、殿下。
ミィはきっと、友達のために頑張ったのですもの」
「うみゃん!」
パレットの言葉を肯定するように、ミィが鳴いた。
「友達、そうか!」
王子様が嬉しそうに笑った。
「改めまして殿下、七歳のお誕生日、おめでとうございます」
ジーンが王子様にそう告げるのに合わせて、パレットもお辞儀する。
「うむ! 二人ともこれからもよろしく頼むぞ!」
王子様が仰々しく言った。
こうして、王子様の誕生パーティは無事に終了した。
キリング公爵が国家反逆の罪で拘束された。
国外からの招待客に騒乱を気取られないためと、キリング公爵が根回しをしていた貴族の横槍を防ぐ理由もあり、パーティーの舞台裏での静かな幕引きだったという。
これからキリング公爵の罪を全て明らかにし、王族に連なる者としての尊厳ある終わり方を求めることになるそうだ。
パレットはパーティーの後、アレイヤードから取り調べを受け、襲われた時のことを詳しく話した。
それから調査が進み、叔父を初めとしたパレットを襲った犯人が捕まった。
休業させていたドーヴァンス商会は、商会長である叔父がキリング公爵の仲間として捕まったことにより、取り潰しとなった。
叔母も、叔父が犯罪に手を染めていることを知ってなお、大金に目が眩んで加担したとわかり、叔父と同罪となった。
叔父にはそれに加えて、パレットの殺人未遂が加担される。
叔父夫婦は恐らく残りの人生を、強制労働に費やすこととなるだろう。
ジェームスはどうなるかと思ったが、彼は直接犯罪に関与していないとされ、恩赦が下ったようだ。
そして次に明らかになったことは、パレットを囲んで襲った女性たちだ。
室長から聞いた話によると、彼女らは騎士の家族であった。
リーダーらしき女性は、騎士団長の姉であったそうだ。
彼女たちが取り調べで、パレットに復讐をする理由について語ったところによると。
『あの女のせいで、新しいドレスが買えなくなったのよ!』
口々にそう叫んでいたらしい。
なんでも彼女たちは、一度来たドレスは二度と袖を通さないのが自慢というか、ポリシーだったそうだ。
それがパレットを始めとした財務の文官の奮闘で予算管理が厳重になり、騎士である家族がお金を持って帰らなくなった。
そのせいで彼女たちは新しいドレスを作れなくなり、一度来たドレスに再び袖を通すという屈辱を味わされたというのだ。
――呆れたわ、全く。
王妃様にドレスを作ってもらう時、貴族女性のドレス事情を教えてもらったが、彼女たちはその常識から大きく逸脱している。
――馬鹿なんじゃないの?
騎士たちが請求していた法外な装飾や美容品代は、ほとんど家族の女性に与えるための金だったようなのだ。
彼女たちは騎士の経費で、自分たちの服飾品を買い漁っていたというわけだ。
「逆恨みにもほどがあるわ」
パレットは馬鹿みたいな話への怒りの矛先を求めて、夜帰ってきたジーンを捕まえて愚痴った。
「そんな馬鹿な話で捕まったアンタには、確かに同情するがね」
ジーンが酒を飲みながら苦笑する。
――国から与えられる経費を、あの人たちはなんだと思っているのかしら。
パレットがブチブチと文句を漏らすと、ジーンは騎士たちの現状を話してくれた。
「以前から騎士の給与は徐々に減らされ、その浮いた金額を兵士強化の経費に充てていたらしい。
キリング公爵に王城のそれなりの戦力を引き抜かれた対策だな。
だがそのせいで、連中は今まで通りの生活が難しくなった。
それでも、貴族として普通に生活をする程度は与えていたというぞ」
貴族の普通がどのくらいか、パレットたちにはわからない。
しかしアレイヤードが言うのだから、十分な金銭だったのだろう。
ちなみにこの件は他の貴族に知られる事態となり、領地持ち貴族からは苦情が殺到しているそうだ。
自分たちが国に収めた税金を、なんという無駄遣いしてくれるのだ、というわけだ。
そして騎士たちはというと、騎士団長を初めとした騎士たちが、キリング公爵に加担してジーンを襲撃したそうで、懲戒免職となった。
他にも王城の守りについての情報をキリング公爵に流して金銭をもらっていた騎士が大勢いて、彼らも同様の処分となった。
「まあ、そいつらに知られた情報は、たいてい偽物だがな」
上層部は最初から騎士らを信用していなかったので、裏切られても痛くもかゆくもないそうだ。
懲戒免職となった騎士を輩出した家が、新たに騎士を生み出すには、相当の努力と苦労が必要になりそうだ。
――生まれた頃から保証された身分に胡坐をかいて、真面目に仕事をしてこなかったツケでしょうね。
これで少しでも必要な人材だと思われていたら、処分も見直してもらえたかもしれない。
そして大幅に欠けた騎士の人員を、兵士から補てんするそうだ。
先だっての兵士の動員は、騎士採用テストも兼ねていたという。
ジーンの友人も何名か騎士に採用されたらしく、近いうちに一緒に働くことになる。
「これで、肩身の狭い思いをせずに済む」
ジーンがそう言って喜んだ。
たった一人の庶民出の騎士ということで、王城でも城下町でも、良くも悪くも目立っていたジーンだが、これで少しはマシになるだろうとのこと。
兵士上がりの騎士が増えることで、新たに騎士舎を作るそうだ。
今までわざわざ兵士舎まで行っていた分、訓練にも時間がとれるようになるらしい。
「文官も、庶民からの採用を検討するようですよ」
本日パレットは室長に言われたことを、ジーンに教える。
騎士同様に、文官でも懲戒免職となった者が多数出たのだ。
捕まった者の大半は、自分が罪を犯している自覚がなかった。
今まで一族がずっと続けていたことだと、むしろ正当性を主張している。
文官の取り調べに立ち会ったパレットは、彼らの歪んだ職業意識にぞっとした。
「家同士の関係やら利権やらで、なにが正しいのかわからなくなっていたのでしょうね」
庶民であれば、成人して初めて職に就く時に教えられる常識を、彼らは教えられなかったのだ。
これらの件で、役職を家で代々継いでいく弊害があることが認められた。
一つの役職を継いでいくことが必ずしも悪いわけではなく、得難い技術を守っている貴族家もちゃんとある。
しかしそうでない者を優遇することなない、と王城からお触れが出た。
そして雇用の枠が広げられることとなり、庶民の採用にこぎつけたのだ。
マトワール王国に、新たな時代が訪れようとしていた。
――へえ、こんなものを仕掛けていたのね。
パレットはあれが攻撃用魔法具のなれの果てだとは思いもせず、純粋に関心していた。
「人が多くなってきたし、俺らはここまでだな」
「明るいところに出ると、さすがに騎士じゃないとバレる」
兵士が護衛はここまでだと、テラスの手前で言って来た。
――騎士っぽい方なのは断然この人たちだけど、美しさこそ全てな連中の仲間には見えないわね。
微妙な納得の仕方をして、パレットは彼らにここまで付いて来てくれた礼をする。
「明るいところまで送ってくれて、ありがとうございます」
パレットはざっと自分の格好を確認したが、叔父から逃げるのに草の上を転がったりしたが、ドレスは目立った汚れもない。
――たった一度だけ着て駄目になった、なんてことにならずによかった。
パレットが安堵した時。
「パレット!」
パレットの姿に気付いたジーンが、テラスの方から足早に駆けて来た。
パレットと別れて持ち場に還ろうとしていた兵士たちも、立ち止まって振り返る。
ジーンは一度パレットの前で立ち止まる。
「……無事で、良かった」
そう言ってパレットをぎゅっと抱きしめてきた。
――ちょっと、人前!
普段ではないジーンの行動に、パレットは顔を赤くしたり慌てたりと忙しない。
「怪我は?」
ジーンがそのままの体勢で聞いてきた。
「ないです、兵士の方々に早めに見つけてもらえましたから」
ジーンを安心させるように、パレットは背中を軽く叩いた。
この様子を、静かに見ていないのが兵士たちだ。
「よ、色男!」
「おうおう、お熱いねぇ!」
兵士たちが口笛を吹いてからかいの声を上げる。
ジーンはようやくパレットから身体を離すと、彼らに向き直った。
「お前ら、本当にありがとう」
ジーンが深々と頭を下げた。
これに、兵士たちが驚いた。
「ジーンが女のために頭を下げた!」
「本気の女の効果ってすげぇな!」
そんな風に、いつまでも兵士たちと別れずにおしゃべりしていたパレットたちに、近づいてきた人物がいた。
「あ……」
パレットたちはもちろん、兵士たちも慌てて頭を下げる。
テラスに出ていた貴族たちの視線を一身に受けて、こちらにやって来たのは王子様だった。
護衛としてテーブルに潜んでいたミィも一緒だ。
さらにその後方に、キールヴィスとオルディアの姿がある。
パーティー会場に獣が現れたので貴族たちがざわめくが、連れているのが王子様たちとあっては、表立って非難するものはいない。
「二人とも、ここにいたのか」
王子様が声をかけると、ミィがパレットに向かって飛び込んで来た。
甘えるようにすり寄るミィは、まるで褒めてもらうのを待つ子供のようだ。
「ミィ、お役目ご苦労様」
「みゃ!」
パレットが小さく言うと、ミィは満足そうに鳴いた。
「悪だくみをしていた者は捕まったそうだ。
こうして無事にパーティーを終えようとしているのは、そなたたちのおかげだ。
ミィを貸してくれて感謝する」
パレットたちに謝意を表した王子様に、周囲の貴族たちが騒ぎ出す。
様々な思惑を交わす貴族たちを務めて意識から外し、パレットは王子様に微笑んだ。
「感謝は不要です、殿下。
ミィはきっと、友達のために頑張ったのですもの」
「うみゃん!」
パレットの言葉を肯定するように、ミィが鳴いた。
「友達、そうか!」
王子様が嬉しそうに笑った。
「改めまして殿下、七歳のお誕生日、おめでとうございます」
ジーンが王子様にそう告げるのに合わせて、パレットもお辞儀する。
「うむ! 二人ともこれからもよろしく頼むぞ!」
王子様が仰々しく言った。
こうして、王子様の誕生パーティは無事に終了した。
キリング公爵が国家反逆の罪で拘束された。
国外からの招待客に騒乱を気取られないためと、キリング公爵が根回しをしていた貴族の横槍を防ぐ理由もあり、パーティーの舞台裏での静かな幕引きだったという。
これからキリング公爵の罪を全て明らかにし、王族に連なる者としての尊厳ある終わり方を求めることになるそうだ。
パレットはパーティーの後、アレイヤードから取り調べを受け、襲われた時のことを詳しく話した。
それから調査が進み、叔父を初めとしたパレットを襲った犯人が捕まった。
休業させていたドーヴァンス商会は、商会長である叔父がキリング公爵の仲間として捕まったことにより、取り潰しとなった。
叔母も、叔父が犯罪に手を染めていることを知ってなお、大金に目が眩んで加担したとわかり、叔父と同罪となった。
叔父にはそれに加えて、パレットの殺人未遂が加担される。
叔父夫婦は恐らく残りの人生を、強制労働に費やすこととなるだろう。
ジェームスはどうなるかと思ったが、彼は直接犯罪に関与していないとされ、恩赦が下ったようだ。
そして次に明らかになったことは、パレットを囲んで襲った女性たちだ。
室長から聞いた話によると、彼女らは騎士の家族であった。
リーダーらしき女性は、騎士団長の姉であったそうだ。
彼女たちが取り調べで、パレットに復讐をする理由について語ったところによると。
『あの女のせいで、新しいドレスが買えなくなったのよ!』
口々にそう叫んでいたらしい。
なんでも彼女たちは、一度来たドレスは二度と袖を通さないのが自慢というか、ポリシーだったそうだ。
それがパレットを始めとした財務の文官の奮闘で予算管理が厳重になり、騎士である家族がお金を持って帰らなくなった。
そのせいで彼女たちは新しいドレスを作れなくなり、一度来たドレスに再び袖を通すという屈辱を味わされたというのだ。
――呆れたわ、全く。
王妃様にドレスを作ってもらう時、貴族女性のドレス事情を教えてもらったが、彼女たちはその常識から大きく逸脱している。
――馬鹿なんじゃないの?
騎士たちが請求していた法外な装飾や美容品代は、ほとんど家族の女性に与えるための金だったようなのだ。
彼女たちは騎士の経費で、自分たちの服飾品を買い漁っていたというわけだ。
「逆恨みにもほどがあるわ」
パレットは馬鹿みたいな話への怒りの矛先を求めて、夜帰ってきたジーンを捕まえて愚痴った。
「そんな馬鹿な話で捕まったアンタには、確かに同情するがね」
ジーンが酒を飲みながら苦笑する。
――国から与えられる経費を、あの人たちはなんだと思っているのかしら。
パレットがブチブチと文句を漏らすと、ジーンは騎士たちの現状を話してくれた。
「以前から騎士の給与は徐々に減らされ、その浮いた金額を兵士強化の経費に充てていたらしい。
キリング公爵に王城のそれなりの戦力を引き抜かれた対策だな。
だがそのせいで、連中は今まで通りの生活が難しくなった。
それでも、貴族として普通に生活をする程度は与えていたというぞ」
貴族の普通がどのくらいか、パレットたちにはわからない。
しかしアレイヤードが言うのだから、十分な金銭だったのだろう。
ちなみにこの件は他の貴族に知られる事態となり、領地持ち貴族からは苦情が殺到しているそうだ。
自分たちが国に収めた税金を、なんという無駄遣いしてくれるのだ、というわけだ。
そして騎士たちはというと、騎士団長を初めとした騎士たちが、キリング公爵に加担してジーンを襲撃したそうで、懲戒免職となった。
他にも王城の守りについての情報をキリング公爵に流して金銭をもらっていた騎士が大勢いて、彼らも同様の処分となった。
「まあ、そいつらに知られた情報は、たいてい偽物だがな」
上層部は最初から騎士らを信用していなかったので、裏切られても痛くもかゆくもないそうだ。
懲戒免職となった騎士を輩出した家が、新たに騎士を生み出すには、相当の努力と苦労が必要になりそうだ。
――生まれた頃から保証された身分に胡坐をかいて、真面目に仕事をしてこなかったツケでしょうね。
これで少しでも必要な人材だと思われていたら、処分も見直してもらえたかもしれない。
そして大幅に欠けた騎士の人員を、兵士から補てんするそうだ。
先だっての兵士の動員は、騎士採用テストも兼ねていたという。
ジーンの友人も何名か騎士に採用されたらしく、近いうちに一緒に働くことになる。
「これで、肩身の狭い思いをせずに済む」
ジーンがそう言って喜んだ。
たった一人の庶民出の騎士ということで、王城でも城下町でも、良くも悪くも目立っていたジーンだが、これで少しはマシになるだろうとのこと。
兵士上がりの騎士が増えることで、新たに騎士舎を作るそうだ。
今までわざわざ兵士舎まで行っていた分、訓練にも時間がとれるようになるらしい。
「文官も、庶民からの採用を検討するようですよ」
本日パレットは室長に言われたことを、ジーンに教える。
騎士同様に、文官でも懲戒免職となった者が多数出たのだ。
捕まった者の大半は、自分が罪を犯している自覚がなかった。
今まで一族がずっと続けていたことだと、むしろ正当性を主張している。
文官の取り調べに立ち会ったパレットは、彼らの歪んだ職業意識にぞっとした。
「家同士の関係やら利権やらで、なにが正しいのかわからなくなっていたのでしょうね」
庶民であれば、成人して初めて職に就く時に教えられる常識を、彼らは教えられなかったのだ。
これらの件で、役職を家で代々継いでいく弊害があることが認められた。
一つの役職を継いでいくことが必ずしも悪いわけではなく、得難い技術を守っている貴族家もちゃんとある。
しかしそうでない者を優遇することなない、と王城からお触れが出た。
そして雇用の枠が広げられることとなり、庶民の採用にこぎつけたのだ。
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