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しおりを挟む「フェリツィア、貴様の罪を数える!」
柱にくくりつけられ、口を塞がれた私。
涙を浮かべたところで、かつて愛した彼が心変わりしないのは分かっていた。
彼は、この国の王太子。
見目麗しく性格の優しい彼は、王都に連れてこられた魔女の私に同情し、国賓扱いで匿ってくれた。
魔女は禁忌の象徴。人には見えない精霊を従え、人間よりも高度な魔法が使える。疎まれ蔑まれるのは当たり前。
だから、こんな優しい人間もいるのか驚いたし、すぐ彼を好きになった。綺麗なドレスを与えられるたびに彼の方から告白してくれるのではないかと期待に胸を膨らませた。
ただの自惚れだった。
彼は、初めから私の利用価値を悟っていた。魔女の身体能力や魔法の力は人間とは比べ物にならない。懇願されるがまま、私は「人間に教えてはならない魔女の掟」を破り、彼に色々な知識を授けた。魔女しか知らない薬草の知識、魔力の少ない人間がより高度な魔法を使用する方法。
そしてなにより──
「八つ目、貴様はあろうこと己の『銀の炎』にて罪なき人々を虐殺し、私利私欲のために人々の血を求めた」
私は、最後の銀炎の魔女。
どんなものでも焼き尽くす、最凶の銀色の炎を操る一族の生き残り。
王国は私を最強の兵器として戦争の最前線に放り込んだ。
おかげで王国は歴史的大勝利を収めたのに、終わってみればこのザマ。
「恐ろしき銀炎の魔女フェリツィアよ。以上、八つの大罪で貴様を火刑に処す!!」
人を殺したくて殺したわけではない。
でも、多くの兵士を殺めた事実は変わりない。
私がすべて悪いのかしら?
いいえ、そんなことはないわ。
悪いのは私を騙した人間よ。
かつて愛していた彼も、戦利品でぼろ儲けし豚のように肥え太った国王も、びくびく怯えて顔色を伺う事しか出来ない大臣も、私を大罪人として見上げ「処刑しろ!」と叫ぶ国民達も。
悪いのは全て、醜い心を持つ人間だ。
「火を放て────ッ」
王太子が手をあげ、薪に火を放つ。
私は、準備していた魔法陣を展開し、口を塞いでいた忌まわしい布を破った。
「精霊よ、私を守れ!」
周りの人間がすべて吹き飛ぶような大爆発が起きた。
大魔女フェリツィアの逃亡。
これが、後世に語り継がれる王族根絶やし事件の全貌である。
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