オヤジが生まれ変わって?系救世主

無謀突撃娘

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エクリプス辺境伯家2

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 私はリムネール=コネット。最下級の貴族の娘だ。特にとりえなどもなく平凡に生活していたが変化したのはエクリプス開拓団に参加したのが切っ掛けだった。

 団長のリーヴリルはわずか10歳という異例の人事であったが開拓した土地は無条件で与えられるという破格の条件だがそれは罠である。

 南部は荒廃が激しく人は住めない最悪の土地で外交関係が非常に悪い南部の最前線だ。そこの送られる私たちは生贄に等しく誰もが恐怖で内心怯えていた。

 〈マスター・ナイト〉になったユーフォリア王女や〈フェンリル・ナイト〉のリースリット王女が同行したが多分使い捨てにされるだろうと確信を抱いた。

「何の力もなかった王女が前線で戦うなどありえない。何かの冗談だ」

 開拓予定の場所に着くが物資などない。リーヴリルからは生活に必要なものだけを持ってくるように命令されたし馬車にはほかに荷物などを詰めるスペースなどない
 
 ひたすら荒野で野宿するのかと思ったがすぐさまそれは崩壊した。

 地形を操作して大きな湖のような物を作るとその中心に苗木のようなものを置くと水が大量に湧き出したのだ。

 喉が渇いていたのでみんな必死で飲むが水はとめどなく溢れてきて全員の渇きを癒す。

「プハァ~。水がこんなにおいしいなんて」

 正直水などどこにでもあるからなんてことはなかったが荒野に放り出されてそのありがたさが嬉しい。

 全員が水を飲み終わると麦などを入れる大袋を大量に出されて北に向かってひたすらばら撒けと命令される。どこからこれを出したのか?なぜ麦をこんな荒野にばら撒くのか?全員が疑問を浮かべるが命令なので夜が来るまでひたすら全員で作業を行う。

 合間合間に水筒の水を飲みながら作業を行いどれぐらいばら撒いたのか分からないほどになり戻ると全員が余裕で寝泊りできる家が建っていた。遠くを見るとユーフォリア様やリースリット様が向かったほうには森が出来ているような。

「どうなってるの?」

 住む家はそれぞれ自分で決めろと言われ入ると中は簡素だが充実していた。水を貯めておける大きな壷に料理をできる調理場に居間に椅子に薪などもあり生活に必要なものはほとんど揃っていた。質素だが個人用のベッドが二つあり実家よりも綺麗なほどだ。

 地面は拳ぐらいの平坦な岩で敷き詰められていて段差がほとんどない。馬車などが往来するのを見越しての工事だがあの短時間でどうやって出来たのだろうか?

 お腹が減ったので皆で集まって料理をする。家ごとに同じように出来ていて何も不自由などないがやはりここはまだ未開発の土地だ。何が起こってもおかしくはない。

 集団で料理をしたほうが効率的なので材料は高く造った家に備蓄してあるので好きに取り出してよいとの事なので普段より張り切って料理を作る。さすがに生肉や魚はなかったが色々な食材が山ほどあるのでみんなは好みにあった料理を作り堪能している。私も食べて家で眠りに付いた。ベッドがフカフカだった。

 夜が明けて水場で顔を洗う。仕事は昨日と同じだがそれがかえってやる気を無くす。

「あんな無駄なことが何になるって言うの」

 あんな食料を無駄にすることなど天罰が与えられるのだと思ったが男性があわただしく駆け込んできた。

「何かあったの?」

 敵が攻め込んできたのか?それならどうしようもない。ここに戦闘用の装備などほとんど持ち込んだ人がいないからだ。

 外に出て見るとみんなが北のほうを見ながら何か騒いでいる。

 北のほうに確認に行くと麦を撒いた場所すべてが一大穀倉地帯となっていた。まだ青々としているがこの成長速度なら後数日で収穫が出来る。みんながここでの生活に希望を持ち始めた。

 ユーフォリア様からここでの収穫物は他国への販売などを除いて自分たちに与えられるそうで収穫した麦などはそのまま撒けば同じようの育つとの事だ。

 将来的にはこの穀倉地帯を管理する人たちを開拓団の人から選ぶそうなのでみんな俄然とやる気が出る。これだけの肥沃的な土地ならば王国の年間収穫量をここだけで塗り替えてしまうほどだ。この世界では麦などは珍しくないがこれほど肥沃的な土地はこの辺りでは存在しないし王国でも慢性的に不足しているから商売として取引すれば多額のお金が入る。

 普通は土地の持ち主が多く取るがリーヴリル様はこう言った。

「生産高を安定させる量を残して利益の7割を生産者に分配する」

 皆が狂喜した。普通は逆だがまだ開拓の手が入っていない場所は数多くある。その7割を分配するとなれば一般市民が一年は生活に困らない額だ。さらにリーヴリル様は莫大な資源が眠る鉱山地帯も領地として確保して麦などの生産では収入が満足できない人たちへの斡旋も行ってくれる。

 鉱山労働は過酷だがダントツの人気がある花形職場だ。すでに鉱脈まで掘り進んだ鉱山がいくつもあり出稼ぎ労働者や鉱山技師などを募集している。能力が認められれば管理職として給金が出る。今の所はこちらの開発が優先だが人が増えればそちらにも人を回すそうだ。なんでも数百年は掘りつくせないほど膨大な鉱脈だそうで近くの労働者が通りかかったので話を聞いた。

 これだけの莫大な資源があるのがわかっていたからあんな大胆な発言が出来たのかと信じた。もしリーヴリルが領主様になったら臣下に取り立てて欲しいと強く願ったがおそらく他の貴族たちが山ほど来るので無理だと思った。

 それからしばらくは北のほうに向かって種まきを無心で行う。時間をかけるごとに豊かになっていく土地にみんな安心していたが大量の他種族が南から来た。リーヴリル様がこの領地に亡命させてきたのだ。これでは開拓団のみんなの利益が減ってしまうのだと誰もが思ったが意外な言葉を口にした。

「利益の分配金は私が存命している限り下がらない、安心して励んでくれ」

 反発する者たちもそれなりにいて彼らには、

「離反したいならそれでもかまわない、その人たちには1キロのミスリルインゴットを50本手切れ金として渡すかわりにわたしが関わる開発の利権には二度と関与しないことを契約書に書いてもらう」

 ドスンとミスリルインゴッドをうず高く積み上げる。約半数の人が欲に負けて去っていったが私はここに残ることにした。おそらく彼らには見えていなかったのだろう。この人がどれだけ信じられるのかを。

 そうして村などがいくつも出来て領地として形になり始めていたある日のことだ。

「ここの開拓団のリーヴリルはいるか?大至急会いに来いと伝えろ!」

 やたら傲慢な男女たちが数多くやってきてリーヴリル様を呼び出せと言い出した。こいつらは多分王国の貴族の子供たちだ。治めている当主様らは住民の声を聞くことが多いがその子供らは無能ばかりだ。父はいつでも見本になる人でなければ簡単に身分を取り上げられると私に忠告していました。

「リーヴリル様は多忙で会うことは出来ません。用件ならここで聞きます」

「なんだと!たかが開拓がまぐれで出来たくせに王国貴族の子供らである自分らには会えないだと!」

 どうやらこの人たちは完全に思い違いをしているようです。ここに残る人たちがどれだけ努力したか、それに全力で応えたリーヴリル様がどれだけすごいのか。

 結局彼らは無理矢理リーヴリル様のところに押しかけました。

「リムネールさんだっけ?彼らは一体何の用事なの?」

 高く積まれた書類はどれだけ多忙なのかを物語っていましたが彼らにはそれすら見えていません。

「お前がリーヴリルか!」

「アンタたち誰?」

「われらは王国貴族らの子供の代表だ!われらを全員臣下に取り立てろ。今すぐにだ!われらの能力なら今すぐにでも重臣として活躍できる!これを見逃すことなどどれだけ愚かかすぐに分かるだろう!」

 リーヴリル様やユーフォリア様もリースリット様もシャナ様もポカーンとした顔をしました。
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