オヤジが生まれ変わって?系救世主

無謀突撃娘

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エクリプス辺境伯家14

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「何ッ!もう戦争に決着が付いたのか!」

 ユーフォリア王女とリースリット王女が王都に戻ってきて説明する。

 ディングル王国では南部諸侯軍の宣戦布告に混乱を起こしていた。兵力は圧倒的でまず勝ち目など無いしこれはエクリプス辺境伯が勝手に判断したものだと貴族や臣下たちから非難が殺到していた。

 王妃たちら一部の臣たちは一人でも良いから援軍を出すべきだと進言したがほとんどは反対だった。もし負けても戦争の責任はすべてエクリプス家にとらせ引き分けでも開戦の決断をした責任で領地を召し上げる。

 はっきり言えば南部諸侯軍の好戦派の貴族よりもタチが悪かった。領地は増えないし開発しようにもお金と人手を出さないから発展しない。王妃たちはなんとかより良い王国にしようと努力していたが良く見られていない。上位貴族や資産家ではなく下級貴族や平民、場合によれば他国から能力ある者を連れてこようとする考えが原因だった。

 その判断は間違いではないが時間と金がかかり過ぎるため中々通らない。

「結局負けたのであろう?まぁ、当然だな。大人しくしていれば良い暮らしが出来たのにむやみやたらにでしゃばるからだ」

 王らの派閥の貴族たちはこれを理由に領地の取り上げと莫大なお金を要求しようとしたが、

「戦争はこちらの完全勝利で終わりました!これを切っ掛けに南部との外交関係の改善と交易の開拓、そして膨大な領地の統治権と賠償金などがエクリプス家に譲られます」

「「「「なんだと~!?」」」」

 完全に予想外の答えが返ってきた。その証拠を見せろとすべてが要求して南部のハインケル公爵を筆頭とした貴族家が連名した裁定書が提出される。

 それは完全に本物でユーフォリア王女らは南部貴族の領地から莫大な物資と金銀財宝と占領などが戦功として書かれていた。そして辺境伯はたった一人で50000もの兵を捕虜としたことや穏健派の南部貴族と信頼関係を築いたことなどが書かれていた。

「馬鹿な!ありえない!いくら王女様らと言えど書類の偽造は重罪ですぞ」

 何人かは偽物だと思い反論するが、

「これが偽物だというのですか?あなたたちはどこまで愚かなのですか、現実を見なさい!」

 後ろの青い髪の女性が怒声を上げる。

「「ステラさん」」

 その声に全員が動きを止める。二人の王女が制止する。

「そちらの女性と後ろの人達は誰ですか?」

 王妃らが誰なのか聞いてくる。

「私はハインケル公爵家の娘でステラと申します。後ろにいるのは戦争で南部諸侯軍の先陣を指揮したランドール伯爵とその臣下です。ここには戦争の一部始終を見た証人として来ています」

 淡々と戦争がどのように進みそして終わったのか説明をされる。

「するとあなたたちは王国に従うのですか?」

「違います。我らは王国に従うのではなくエクリプス家に従うのです。裁定書では統治権はこちらにあります。和解金も身代金も大幅に下げていますし捕虜などもすでに帰してもらいました。しかし、エクリプス家にはその分だけ恩や借金がありますがこれは王国に支払うのではなくエクリプス家にだけ支払うようになっています」

 つまり勝利したのはエクリプス家で王国ではない。南部の利権や貿易などの利益もエクリプス家だけに入り王国には入っては来ないことになる。戦争に勝てば負けた方の領地などはこちらに手に入るがエクリプス家がすべての責任を取ったことになるので負ければ死罪だが勝てばすべてを得られる。

 王を初めここに居るほとんどが反論したいのだろうが自分たちは先ほどまでエクリプス家を潰そうとして議論をしていたしこれだけ多くの人が話していたのだから誤魔化しようが無い。誰かしら援軍を送ったり援護すれば何とかなったかも知れないが後の祭りだった。

「それではこれから南部のエクリプス辺境伯家とはどういう付き合いをするのかを議論しましょう」

 反対に王妃らの派閥の貴族や臣下たちは元気づいた。逃がした魚はでかすぎるがまだある程度交流がある自分たちからすればそれに関わることが出来るのだ。エクリプス家にはまだ有力な重臣がいないしほとんどは下級貴族や平民などや他種族から臣下を大多数採用している。

 王妃らの派閥はフェンリル公爵家を除けば低い身分の者たちばかりだ。行き先が無く息子や娘らはエクリプス家に仕官しているため今回挙げた戦功などから戦時報奨金が出されるしうまくいけば身分持ちの臣下になったり領地なども統治できるようになるかもしれない。

 辺境伯自身から能力を認められ信頼を得れば貴族家を建てたり爵位を上げたりも援助してもらえるなども言質を取っている。子供らがあの肥沃的な領地を治め計算できない利益を上げる辺境伯から認められるのはすぐには難しいがポストは数多く空いているので何かしらの役職を与えられる可能性は高い。

 そうなれば発言力や影響力も大きくなると計算したのだ。子供らにはなんとしてでも目に留まって欲しいと。

 それにはもう少し時間がかかると予想していたが王女らから驚きの言葉が飛び出す。

「王国に望みたい褒美があるのですが」

 それは採用した人たちの中で人を管理できるポストを与えているが身分をまだ王国に認めてもらっていない。何もしなかったことを不問にするからその代わり最低の身分で良いから貴族として認めて欲しいなどの条件とのことだ。

 そのリストを見ると王妃派が目を掛けていた人物が多く入っていてそれを王妃らはこの上なく喜ぶ。当分はその身分で仕事をこなしてもらうことになるそうだ。領地は無いが時機を見てまだ未開発地域を与えたりして家臣団を形成するそうだ。

 おそらくエクリプス家としてただお金を出すだけでは不十分だと判断したのだろう。援軍などは出さす傍観して切り捨てようとしたことを見通していたのだろう。王国として取り返しの付かない失態だ。

 戦後処理は終わっているのでとりあえず一息つく。

「どうやら何とかなりそうですね」

「そうだね」

「まさかここまで完璧に仕事をこなすとは」

 これで南部方面とは敵対関係になることは無くなった。もちろん、この報告を受けて他の国がどう動くのかが気になるがとりあえず猶予が出来た。これをきっかけに他国との関係改善を始めようと考える。

「エクリプス家の領地からもたらされた品々の評価はどうですか?」

「取引したすべての貴族家や商会からもっと融通して欲しいとの声が殺到しております。この分だと専売権を与えないといけないほどに」

 送られてきた品々は絶句するしかない物ばかりだった。莫大な量の麦などの食料を初め強力で量産可能な装備に織物や細工品にポーションなど世界中のどこにも無い技術の品々だ。当然その技術を盗もうと何人もの密偵が送られているが生死不明だ。こちらに渡す気など無いのだろう。

 王妃らとしては無闇にちょっかいを出す気など無い、王国のためになるのなら誰でもいいのだ。何かしらの信頼関係を証明するものは必要だが王や上位貴族たちやその子供たちが邪魔をするのでそれが手に入らない。

 はっきり言えば人事を一新したいほどだ。あいつらが権力を持っているから問題がこじれているのだ。

「申し上げますが王妃様らの近縁の者たちをエクリプス家に送り込んでは?」

 すでに娘たちを送り込んでいるので難しい問題だ。少し前に王達が無理矢理貴族の子供らを押し込もうとしたことで不信感を持たれているのだ。あの王達が問題を起こさなければある程度は受け入れられただろうがまだ南部方面の統治体制が混乱しているのでリーヴリルも当然そちらに力を貸すだろう。

 目を掛けていた者たちは全員採用されているしまた押し込もうとすれば間違いなく離反してしまう。南部との取引を通じて他国への繋がりも出来るので別に王国のことなど無視しても問題になどならないし南部のほうもあっさりと受け入れるだろう。特にハインケル公爵などは娘をこちらに寄越したのは間違いなくリーヴリルの才能を高く買っていて関係を深めるためだろう。

「どうにかならないかしら」

「う~ん」

 リーヴリルは知らないだろうがハインケル11人の子供たちは皆優秀で発言力の高いポストや大きな利権を握っている。ステラはその中でも飛び切り容姿が良く優秀で他国でも嫁に貰いたいと引く手数多だと聞いている。

 母親は4番目の妻だが南部最大のリミナージュ商会の会頭の娘だ。貴族の家柄ではないが様々な相手とのパイプは非常に強く顔も広い。実家のほうで社会勉強という形で母の商会の手伝いをしていると聞いていたがまさか使者としてここに来るとは思っていなかった。

「・・・幼稚な方法だけどこれならいけるかもしれない」

 リムラル王妃は周りの者たちに説明する。正直幼稚な子供でも騙すかのようにアホじみた作戦だが半分くらいは成功すると計算した。
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