オヤジが生まれ変わって?系救世主

無謀突撃娘

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リーヴリル、西部に行く1

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「ここは完全に別世界ですね」

「そうだね~」

 リムラル王妃とユラ王妃たちは南部の劇的な発展ぶりに正直に驚いていた。王都まで綺麗に整備された街道に肥沃的な穀倉地帯に豊かな森、豊富に蓄えられた貯水池に用水路、頑丈な石作りの家々に整理された家の中に、そこらじゅうで活気に溢れる声に幸せそうな顔をした住人たち、まるで理想郷のようだと。

「この料理は王国中の料理人が馬鹿に見えるほど美味しいですね」

「クーッ、リースリットたちは毎日こんなのを食べてるの。羨ましすぎるよ」

 用意された料理などを食べて愚痴をもらす。王国とはもはや相容れないほどに別世界なのだから当然だろう。そうしている内に時間が経ちここに来た理由を聞く。

「西部地方の開拓および国交を結ぶ、ですか」

「はい。ここでもたらされる品々をいくつか西部に回したのですが向こうから交流を深めたいとの使者が来ました」

「今はまだその品々がここで作り出されていることを大々的に話したよ。その間に王国が入るってことだね」

 そういえば王国は崖っぷちだったことを説明されたな。

「外交関係が改善され始めたってことだね」

「そうです。今まではほんの少ししか交流がなかったのですが南部諸侯軍を壊滅し政治方針が変わったのでその張本人であるリーヴリルに会いたいと言って来たのです」

「間に王国が入るのはここが王国が認めた領地でその領主として治めているからだよ」

「別に会うのはかまわないし街道などの整備もしたいけどまだ南部とは緊張状態が続いているし迂闊に離れるわけにはいかないけど多少落ち着いたし今後を考えるとそれも必要だね。念押しするけど王国の方からも問題を押し付けられたりしたら反乱を起こすよ」

 疑いを持つ。離れている隙にまた馬鹿な連中を寄越されても困るのだ。

「その件に関しては厳しくしていますのでとりあえず問題はないと思うのですが・・・」

 いまだに上位貴族たちはこの領地を狙っていて密偵もかなり入ってきている。もっとも全て捕獲しているので今は大丈夫だがわたしが離れた隙を狙う可能性がある。所属する国で情報や技術は共有するべきであるなどとほざいているが要はここの領地や技術や知識が欲しいだけなのだ。独占して利権を握ればどうにかなるなどと甘い考えで引き篭り体質なので面倒が増えて上から目線でしかいないからだ。わたしならどこでも出来るが他の人はただそれを見ていることしかできないのでお預け状態なのだ。

「あんな馬鹿な連中と同席しないといけないの?」

「「そ、そこはまぁ何とか大目に見てもらえれば・・・」」

「どれぐらい西部と交流しているの?」

「「3年に1回ほど使者を送ったり来たりする程度で・・・」」

「有力な人物のはどれぐらいいるか分かる?」

「「えっと・・・」」

「何の情報もない状態でよく統治者なんて言えるね。個人的にお金を出して顔つなぎもしておいたほうがよかったんじゃないの?」

「「・・・・・・」」

 最底辺だと言っていたがここまで酷いとは。これからの交渉が面倒なことになるのは確実だ。

「はぁ・・・。とりあえず他国から来た使者のところに行こうか」

「「ごめんなさい!実は王らが先に交渉を勝手に始めて大問題になっているのです!助けてください!」」

 泣き顔でひたすら頭を下げまくる王妃たち。王らがこちらの承諾もなくゴリ押ししようとして険悪な状態になっているのだとか。簡潔に話を聞くと「こちらの申し出を断れば辺境伯に攻撃させるぞ!」と無茶苦茶なことを言い出してもはや戦争状態になってもおかしくないそうだ。

 【繋がる門】で移動して王都まで急いで行きその使者に急遽会うことにした。

 王らの所に行くとやたら豪華な服装をした誰かがいた。

「こいつ、誰なの?」

「この偽物辺境伯め!自分が本物のエクリプス辺境伯だ!さっさとここから出て行け!」

 その姿と言葉だけで全てが理解できた。それらしい偽物を使いゴリ押ししようとしているのだと。どこまで愚かなのだ、本当に滅ぼしてあげようかとも思ってしまう。

「何をしている!さっさとこいつをお」

「黙れ」

 問答無用で近づいて腹に一撃を打ち込むと口から血の色をした何かを吐き出す。

「あなた、いつからこんなに横暴になりましたか?」

「私達にどれだけ不幸をもたらすの?」

 二人の王妃らが殺気を放ちながら周りを威圧する。

「いやな・・・エクリプス辺境伯も忙しいだろうからできるだけ仕事を減らそうとしてだな・・・」

 王らがしどろもどろに説明するが、

「「余計な仕事をしないでください!」」

 激怒した二人の大声が響き渡り全員が怯える。結局使者を含めて全員頭を冷やすため1日空けてに話を再開することになった。

 そうして話し合いは再開されたのだがお互いの話がかみ合わない。どうしてだかこちらの方が強気で横暴なことばかり言い始める、もちろん王と上位貴族らだ。

「だからこちらの意見を採用すればいいのだ」

 とかなんだとか一方的に相手に身勝手な理由を押し付けようとして相手をただ下に置こうとするだけだ。王妃らと一部の臣たちは、

「そんな意見は通りません」

 そうやって制止するの繰り返しだ。

 これでは王国と西部の話ではなくただの身内の言い争いだ。西部から来た使者たちはもはやそんな言い争いに参加する気はなくわたしが用意したお茶や菓子に注目している。

「すみません。こういう争いはどこにでもあるのでしょうがこの王国はどうしてだかそういことばかりが強くて」

「別にかまいませんよ」

 使者たちは大らかな人柄のようでそんな話し合いにはなれているようだ。

「これは砂糖ですか?高級品の砂糖をこれほど使ったお菓子は初めてです」

 観察眼が鋭いな。この世界ではサトウキビの栽培は地質的にも気候的にも難しいのだ。わたしの領地では広大なサトウキビの畑があるし精製施設も力を入れているので格段に安く手に入る。

「なんなら帰るときに一人当たり5つの大袋で手土産として持ち帰らせましょうか?」

「それはありがたい」

 いまだに不毛な論争をしている王たちを除いてこちらの交渉を進めることにした。

「西部では麦ではなく米が主食なのですが近年災害が相次いで起こり無事な場所が少なくなっているのです、どうにかならないでしょうか?」

「それなら地質を向上させ区画整理できる魔法使いがいますよ。健全な依頼ですのでよろしければ頼んでおきましょうか」

「森資源が豊かな反面どうしても鉱物などの資源が不足しています、王国側から融通してもらえませんか?」

「分かりました。一応大体の鉱物が取れるので手間を省くためにインゴッドに加工してからそちらに回しましょう」

「毎日似たような食事ばかりでうんざりしています」

「それなら簡単で新しい料理のレシピを教えましょう。食生活が豊かになりますよ」

「木材などの資源の売り場がなく困っています。森などに人手を入れなくてはならないのですが満足な維持費が出せず荒れ始めています」

「それならばエクリプス家で優先的に買いましょう。ただ、必要以上に木を切りすぎると問題になりますので森資源の管理などを十分に配慮してください」

 西部の方にも豊かな部分とそうでない部分があり苦労しているようだ。なので、相談相手になり始めるとすぐさま打ち解けてこちらだけで勝手に話が進んでしまう。結局彼らの話をまともに聞いていたのはわたしだけだ。

 そうして2時間ほど彼らの話を聞き続けていている内に交渉相手が王国ではなくエクリプス家となり使者たちとの話し合いが終わる。王たちは結局最後まで彼らを放置していた。
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