雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!

コバひろ

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雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』その(16)スタンディング・チョーク・スリーパー

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堂島は驚いていた。
さっきまで自分がNOZOMIに馬乗りになり、その顔面に拳を振り下ろしていたというのに、恐るべき柔軟さであり得ない体勢から逃げられてしまう。
立ち上がったと同時に後ろにまわられ逆に捕まってしまった。しかも、首にあの長い腕が巻き付いてきた。
一番恐れていた体勢、、最悪の形になってしまったのだ。
(この形になると脱出するのは容易ではない。あと45秒? 時間まで耐えるしかない。そうなれば判定勝ちだ。俺は絶対にタップはしない...)

しかし、NOZOMIの身体の柔軟性と技に移る時の速さは何なのだろう? 背後にまわられ捕まったというより、何か異な生き物?に、シュルシュルっと巻き付かれた感覚。これは蛇だ! 雌蛇なのだ。こんな感覚は、試合でも練習でも経験したことがない。
これがNOZOMI言うところの女子の肉体の特長?男子より優れている部分なのだろうか? 筋肉と筋肉、力と力の勝負になれば男子が有利に決っている。
NOZOMIは男にはない部分で勝負してくる。あのセーラー服での入場もその一連の流れなのかもしれない。

“ 女の子であることを捨て、マッチョになって男性と戦うのではなく、普段はミニスカートも穿くオシャレな女の子として戦うことに意味がある”

NOZOMIはそう言っていた。

(実況)

「驚きました!さっきまでマウントを取られていたNOZOMI選手、それを脱出するや恐るべき速さで堂島選手の背後にまわり、気が付けばその首に腕が巻き付いています。この試合初めての組み合いになりました。あと40秒。堂島選手はこのスタンディングチョークスリーパーから逃れることは出来るのでしょうか?」

堂島はこのまま転がされ胴締めスリーパーに持っていかれるのか?と思ったが、時間がないのか? 立ったままでのスタンディングチョークスリーパーで彼女は決着をつけるつもりらしい。
堂島は必死に首を締め腕の侵入を少しでも防ぎたいのだが、NOZOMIの腕は蛇のように細くしなやかで長い。その腕は堂島の首に密着して巻き付く。
右腹部、左腹部に肘を打撃しようとするが身体も密着していて効果がない。
踵でNOZOMIの足を踏みつけようとしてもうまくかわされてしまう。
もがけばもがくほど蛇地獄に陥る。

「堂島さん、、今日は私の挑戦を受けてくれて感謝します。もう、逃げられません。このままタップして下さい。そうでないと、私は堂島さんの家族の前で、堂島さんを絞め落とすことになります。それは残酷です...」

残り30秒を過ぎたころ、NOZOMIは堂島の耳元に囁いた。
それは堂島にも分かっていた。このまま時間まで持つわけがない。きっと、無残な失神KO負けになるだろう。
でも “ タップして下さい” なんて、こんな女の子から武士の情けを受けることなんて出来ない。俺は “ド根性源太郎” と言われた男。プライドがある。
それと共に、戦ってみてNOZOMIに対する敬意のようなものも感じた。

NOZOMIも、堂島源太郎がタップしないのは分かっていた。全国のファンに残酷ショーを見せつけるつもりだったのだが、客席にいる堂島の家族の姿が目に入った。それで武士の情けをかけたくなったのだ。
家族にしてみれば、自分の愛する夫、尊敬する父が、17才の女子高生に絞め落とされ失神KO負けになればどんな思いをするだろうか?

堂島の妻佐知子はリング上でNOZOMIに首を締められている夫を正視出来ないでいた。(あなたはどうしてそんなに頑張るの?もういいからタップして下さい。否、夫は死んでもタップしないからレフェリーは試合を止めて。セコンドもタオルを投げて... 。女子に負けたからって恥ずかしいことじゃない。精一杯力を尽くした結果なのよ)

息子の龍太は目の前の光景が信じられない。父ちゃんが女にやられている。あと25秒しかない。このまま時間になって判定勝ちになっても、観ている人はNOZOMIの方が強いって思っちゃうよ。うそだろ!父ちゃん。
龍太は目を逸らした。見たくない!

娘の麻美は目に涙をいっぱいためて、リング上の光景をジッと眺めている。
NOZOMIに対する憧れが強かっただけに、それは逆に憎しみ憎悪になった。
(のぞみちゃんは、なんで私のパパにそんなひどいことするの? パパが苦しそうだよ。頑張ってパパァー!)

リング上では堂島がNOZOMIのチョークスリーパーから逃れようと必死にもがいている。でも、それは誰の目にもガッチリ極まっているように見えた。

「おいおい! 堂島の足元を見てみろ。爪先立ちになりそうだぞ...」

観客の誰かから声が飛んだ。

長身のNOZOMIに首を取られながらも堂島は足を踏ん張っていたのだが、意識が半濁になるに連れ、踏ん張りが効かなくなってきたのか? NOZOMIがグイッと仰け反ると堂島の身体が浮き上がりそうになり爪先立ちになる。NOZOMIはその細い身体に似合わずパワーもある。それともバネなのか?

残り20秒...。

朦朧とした意識の中で、堂島は視線の先に客席にいる家族が目に入った。

佐知子! 龍太! 麻美!
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