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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』その(22)ウルフ加納vs鎌田桃子。
しおりを挟む2○○○年大晦日。
NOZOMI率いるNLFSが男子格闘技界に殴り込みをかける『G』主催の大晦日格闘技戦は大変な話題で○○ドームにはなんと5万人以上の大観衆が詰めかけた。凄い熱気である。
当日計量。
ウルフ加納(27) 185.2cm 98kg
(帝国プロレス男子プロレスラー)
VS
鎌田桃子(30) 180.4 cm 83.5kg
(NLFS所属 女子総合格闘家)
村椿和樹(30) 174cm 63.5kg
(フリー、男子キックボクサー)
VS
シルヴィア滝田(19) 177cm 69.8kg
(NLFS所属 女子空手家)
渡瀬耕作(38) 184.2cm 92.5kg
(前MMA日本王者 男子総合格闘家)
VS
NOZOMI(21) 181.5cm 63kg
(NLFS代表 女子総合格闘家)
メインで行われる大田原慎二(29)vs川上力(23)は、大田原183 cm 102kg、川上190cm 95kgと、これも日本MMA最強決定戦であり大変な話題であったがどうしてもNLFSに注目が集まる。
(実況)
「さあ!男子vs NLFSの第一戦のゴングが打ち鳴らされた。NLFSのコーチ兼選手である鎌田桃子に対するのは人気若手プロレスラーであるウルフ加納です。前回のハリケーン羽生戦では名勝負を演じ勝利した鎌田選手ですが、今日はどんな試合になるのか?」
最初はNOZOMIのことをモデル活動の合間に格闘技をしている?チャラい女だと思っていた鎌田桃子だが、2年半前の夏の大会で戦い完敗しNOZOMIと色々話す機会を得るとその考えに共感した。その後、立ち上げられたNLFSのコーチ兼選手として迎えられ、今では
すっかりNOZOMIの片腕的存在だ。
前回の相手もプロレスラーで、そのハリケーン羽生とは名勝負になり観衆を大いに湧かせたが、今日の相手は若く何をして来るか分からない雰囲気がある。それに羽生より一回り大きい。
ウルフ加納はキャリアが必要なプロレスラーとしては若手の27才。
中学高校と柔道経験があり、県の大会では準優勝したこともあった。
しかし、彼は幼い頃からプロレスラーになるのが夢で自己流のトレーニングを積み高校を卒業すると同時に帝国プロレスに入門した。
イケメンで恵まれた体格にセンスも良く、次代のスター候補として期待されているのだが問題も抱えている。
魅せることが重視される現代プロレスにおいて「強さ」に拘りすぎるのだ。
時としてそれが危険(不穏)試合になってしまうこともしばしば。
「いくらプロレスはショーだと言っても、ガチの強さもなければ世間にバカにされるだけですよ!」
そう言って先輩レスラーに反抗することもあり問題児であった。
「ならば、一度真剣勝負してくるか?相手は鎌田桃子だ!」
反抗的な加納に会社側から打診されると、女と真剣勝負することに抵抗はあったが引くに引けなくなった。
それに、先輩のハリケーン羽生は鎌田桃子に敗れている。
羽生が本気で戦ったかどうかは分からないが、加納としては真剣勝負の名目で男子プロレスラーが女子格闘家に負けた事実が悔しくて仕方ない。
自分は相手の技を受けない。
本気であの女を叩き潰してやる。
(実況)
「第2ラウンドも半分を過ぎました。これは壮絶な試合になりました。鎌田のパンチを浴びた加納は内出血なのか顔が腫れています。鎌田も加納のキックを浴びて足を引きずっています」
試合は5分3ラウンド。
帝国プロレス内で加納は若手シュートレスラーと言われているが、実際に真剣勝負をしたのは初めてだ。
逆に鎌田は経験があり、試合は鎌田が優勢のままここまできた。
スタンディングで真正面から男子プロレスラーと殴り合い、グラウンドになっても柔道、レスリングで世界屈指の実力者だった鎌田に一日の長がある。
それに加納には女と戦っているという戸惑いに遠慮もあった。
このままではハリケーン羽生のように判定で負けてしまう。
女に負けてしまったら、今後、プロレスラーとしてやっていく自信がなくなってしまう。加納は焦っていた。
そして、第2ラウンドも終了。
この試合をNOZOMIは控室のモニターでジッと観ていた。
(鎌田さんは本当にパワーもテクニックもあって強い。でも、男子レスラーと真っ向から力と力でぶつかれば限界がある。彼女には女性特有の身体能力を活かした女性の武器がない。それが欠点。次のラウンドはきつい...)
第3ラウンドになると、女子相手に遠慮がちだった加納がなりふり構わず前に出てきた。必死の形相である。
鎌田桃子は今までこんな大きな相手と戦ったことはない。本気になった男子のパワーは想像を超えている。
女子としては巨体でマッチョな鎌田であったが、185cm 100kg 近い男子レスラー、その本気の圧力にじわじわスタミナを奪われ動きが鈍くなってきた。
一瞬だった。
膝蹴りから強引に倒されると鎌田はマウントになられた。キレかかっている加納が拳を振りあげると鎌田の顔面に何度も振り落とした。
レフェリーが間に入り試合を止める。
(実況)
「ああ~! これは残酷だ。加納の拳が容赦なく鎌田の顔面を襲った。第3ラウンド3分17秒、レフェリーストップによりウルフ加納が勝ちました」
女子勢に席巻されている格闘技界で、どうにか男子の面目を保った加納だが、女子にマウントになり拳を振り下ろすその姿に観客は引いていた。これが逆なら違うのだろうが...。
敗れた鎌田桃子に場内から惜しみない拍手が起こった。彼女は負けた悔しさより全力を尽くした満足感の表情だ。
勝った加納は殴られた顔が内出血しており脱力したように座り込んでいる。
その表情には女の顔面を馬乗りから殴ってしまったという罪悪感のようなものが見える。彼も必死だったのだ。
それを観ていたNOZOMIは首をひねっていた。
何故正規の試合なのに男が女にああいう勝ち方をすると罪悪感を感じ、お客さんも引いてしまうのか?
女が男にああいう勝ち方をしても罪悪感なんて感じないし、お客さんも残酷だなんて思わないでしょ?
そんな考えがある限り、本当のジェンダーレスは遠い遠い先のこと。
その頃、男子側控室では暗い目をした村椿和樹が口元に笑みを浮かべながら立ち上がった。
NLFS側控室でも「押忍!」と、シルヴィア滝田が気合を入れ立ち上がった。
村椿和樹vsシルヴィア滝田の試合が始まるのだ。
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