転生令嬢は最強の侍女!

キノン

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【閑話】神様の眷属のお仕事

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 私は神様の眷属で、ミカルと言いまーす。つい最近まで、とある世界にあs…仕事しに行ってました。
 私の仕事は、私の神様の管理する本に少しでも汚れや亀裂があれば、その本の世界に異変がないかを確認するお仕事です。
 今回も毎度毎度の事ながら、神様の命令で、本に1ページだけ汚れが見つかったので、そのページにある場所に調査に来ているんだけど、この世界の日本って所は凄い人が多い。
 世界も結構発展していて、その中でも私が今一番ハマっているのは、ゲーム!
 なんと言っても、この乙女ゲームってのが凄い好きで、人間って本当面白い物作るよなぁって感心させられる。
 でも、ケチな神様のせいで渡されているお金も制限されている訳で、乙女ゲーム買う小遣い稼ぎに神様の眷属である私は家庭教師のバイトを始めました。
 そこで初めて会ったのが、手足が痩せこけていて、ゴボウの様に細く、少し力を加えたら、すぐに折れそうなほど貧弱な子だった。
 生まれつき病弱の為に、入退院の繰り返しで、まともに学校へ通ってないらしい。いろんな世界を見て来たけど、この子みたいな子は今までも沢山見て来たので余り気にならなかった。
 それよりも、お小遣い稼ぎの方が大事だったので。

 順調にお小遣いを稼ぎ、乙女ゲームをやり進めて行く中で私は気付いてしまった!
 神様の管理する世界にも、乙女ゲームに似た様なものがある事を…!!
 善は急げで、新しい乙女ゲームの企画書を作って、数々の乙女ゲームを作っている会社へ送ってみた。
 なんと企画書が通り、ゲーム化されて、家庭教師よりも稼げるようになりました。やったね!
 かと言って、家庭教師を辞めるつもりもなかった。
 最初は気にしてなかったんだけど、話をしてみると彼女は中々面白い子だった。知らない事が沢山あるみたいで、教えてあげると喜んで聞いてくれる。無邪気で素直で可愛い子。
 両親も良い人達で、彼女をいつも気にかけていた。彼女にとっては酷く生きにくい世界でもちゃんと愛されていた。
 出来る事が制限される毎日の中で、一生懸命お世話をしてくれる両親の事を思い、彼女は我儘も言わない良い子だった。

 それも束の間、妹が出来てからは両親達の彼女の扱いは、あからさまに悪くなって行った。
 それでも、彼女は変わらなかった。我慢している事も知っていた。
 でも、彼女の魂は穢れる事なく、強く綺麗な魂をしていた。
 普通の人なら穢れてしまうのに、何て強い子なんだろうと思った。強くて、可哀想な子。
 





 定期的に神様の元へ調査結果を提出している私は、ふと神様が難しい顔付きで見つめる本を覗いた。

「何この世界、前までこんな酷くはなかったのに…最近出来た所だったよね?」
 神様が創ったまだ新しい世界の本は、醜い人間達の争いが酷くて、争いが終わってもまた新たに争いが起こりの繰り返しで、綺麗だった世界は見る跡もない程、酷く荒んでいた。

「そうなのですが、中の人間達は無能な者が多くて、争いが絶えなく、とうとう世界の結末が記されてしまって…貴女が今行っている世界とは違って、発展していない綺麗な世界なのですが、残念ですね」
「もう手を加える事は出来ないの?」
「僕が直接的に手を出す事は出来ません。もし手を加えてたとして、一時的に良くなっても、更に悪化してしまうかも知れないので、無闇には出来ないのですよ」
「そっかぁーー…あっ、そういえば昔さ、酷く荒れ果てた世界に、違う世界の人間を転生させて復活した世界もあったよね」
 神様は大事そうに本を優しく撫でながら、悔しそうに神様は言った。
 悲しいよね。やっぱり自分の創った世界が滅ぶのは…
 どうにかならないかと私なりに考えると、一つだけ…昔の事を思い出し神様に提案してみた。別の世界の人間を他の世界へ転生させる事。

 昔、この世界と同じような事が起こり、滅びそうな世界があった。
 その時に丁度、別の世界では本の汚れによる世界の歪みが生じて、一人の青年が歪みの影響で命を落としてしまい、この部屋に来た事がある。
 あの時は、私も神様の眷属に成り立てで、歪みの修正を見逃してしまった。今だに心痛む話だ。
 しかも、その青年は前世での行いも良く、人柄も良い人間で、寿命もまだ残っていたけど、生き返らせる事は世界を変えてしまう為出来なかった。
 その為に、彼に祝福を授けて新たに違う世界で転生させようとした。
 その時、彼が自ら滅びかけていた世界への転生を望み、やむ終えず転生させると、彼は見事に滅びかけていた世界を救ってくれたのだ。

「ありましたね。あの時は上手く行きましたが、また同じ様に上手く行く保証もありませんし、適任者も居ません。あれは彼だから成し遂げられた事です」
「一人だけ、それに該当する人物が居たとすれば…どうする?」
 神様の言う事は正論だけども、可能性があるとすれば、私はやってくれそうな人物に心当たりがあった。
 彼女なら、逆境にも負けずに生きよう足掻いているあの子なら、出来るかも知れないと私は思った。
 もう、その世界は捨ててしまえばいいと思ってしまった。ごめんね。神様の眷属がこんな事思っちゃ駄目なのに。


***


「その本読んで、ストレス発散してね!あっ、でも無理は禁物だから!本も一気に読んじゃ駄目だよー。また来るね!欲しいものとかあったら、気軽に連絡してくれて大丈夫だから」
「ありがとう、先生。ちゃんと連絡するから」
「うん!またねー!」

 彼女がまた入院したと知り、私はお見舞いに来ていた。
 差し入れの本を渡すと彼女はとても申し訳なさそうにしていたが、素直に喜んでくれた。帰り際も笑顔で手を振る彼女に笑顔で手を振り返し、私は小さく『ごめんね』と呟いた。彼女はこれから起こる事を何も知らない。
 
 ごめんね。私はこれから貴女に酷い事をする。貴女を命を利用してしまう。上手く行くかも分からない賭けに貴女を巻き込んでしまう事を…

 彼女が次の世界で幸せになれますように、神様お願いしますよ。































 一人の少女が違う世界に転生をした。
 その世界の結末はまだ記されたままで、これといった変化はなかった。
 けれど、転生した少女はその世界で前世よりも楽しそうに人生を謳歌していた。

「カミル、貴女また見てるんですか」
「良いじゃん。減るもんじゃないんだから」
「そんなに気になるなら、様子を見に行けば良いでしょう」
「んー。まだ止めとく!どんな顔して会えば良いかわかんないからさぁ」
「馬鹿ですね、貴女も」

 毎日の様に彼女の転生した世界をニヤニヤしながら眺める私に、神様は呆れた顔をしていた。
 私は彼女が幸せそうに暮らしている姿を見てホッとしていた。でも、しばらくの間はまだ彼女の元へは行けそうにない。仕事がまだ残っていた。流石に仕事を放棄して行く事は出来ない。これでも、神様の眷属だからね。
仕事が一段落したら、一度彼女の元へ行こうと思っている。正直に話して謝る為に。でも、彼女なら笑って許してくれる。そんな気がした。



______

先生視点のお話でした。
次回は本編です。
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