成功条件は、まさかの婚約破棄!?

たぬきち25番

文字の大きさ
6 / 28

しおりを挟む
私は満足気に紙を見直した。

(1つ以外、クリアしたから問題ないわ!!いよいよ婚約破棄だわ!!長かった。)

そして、いつものように机の引き出しに入れた。
後に、この紙を鍵のついた場所に保管するべきだったと後悔することになるのだが・・・。






そうして、殿下の卒業の日を迎えた。
私は卒業式を終え、卒業パーティーの前に控室に呼ばれた。
控室には、殿下と殿下の側近の方がいらっしゃった。

どうやら殿下は、みんなの前で婚約を破棄するという過激なことをするつもりはないようだった。

「アリエッタ嬢。この3年、君を近くで見てきた。」

アルベルト殿下が真剣な顔で見つめてきた。

(いよいよだわ!!いよいよ、婚約破棄よ。
殿下のことは嫌いではないけれど、王妃は無理だわ。)

この3年で、殿下のことは好ましいと思えるようになった。

(この方なら素晴らしい王になるわ。
アルベルト殿下。私は今後もあなたの忠実な臣下として、領地で、あくまで我が侯爵領で頑張りますね。
離れていても、殿下の忠臣であることは変わりません。)

そう思って、殿下の顔を真っすぐと見つめた。

「アリエッタ、あなたとの婚約を破棄する・・。」
「殿下。大変残念ですが、謹んでお受け致します。それが臣下の義務ですから。」

私は、扇で隠した口元が緩むのを抑えることが出来なかった。

(やったわ!!やったわ!!ついに!!婚約破棄よ~~!!)



すると、殿下にぎゅっと抱きしめられた。

(え?)

頭の中が真っ白になった。

「本当に君は・・。周りのことはかなりよく見ているのに、肝心の君自身のことは全く見えていないんですね。」
「え?」
「ふふふ。」

殿下は楽しそうに笑うと、そっと私の唇にキスをした。

(え?キス?どうして?婚約破棄したのに???)

そして、さらにきつく抱きしめられると、耳元で囁くように言った。

「婚約破棄なんてするわけないでしょ?あなた以上に、王妃の資質のある人物はいません。私の妃。」

そう言って、またキスをされた。

「それに先程は、『あなたとの婚約を破棄するなんてことはできません。ですので、すぐに結婚しましょう。』という予定だったのですよ。」
「しかし、私は・・。結婚?」

(え?婚約破棄できない?え?え?しかも結婚?)

「アリエッタ嬢も『謹んでお受け致します。』とのことですので、このまま結婚式でもいいですね?」

殿下が綺麗な顔で笑った。

(私。結婚を承諾したの?どうして?私の婚約破棄の計画は完璧だったはずなのに・・。)

疑問に思っていると、殿下はすっと一枚の紙を取り出した。
その紙を見て、はっとした。

「どうして、それがここに?!」

すると、殿下がにっこりと笑った。

「すみません。この紙の存在は3年前から知っていたんです。」
「え?嘘。」

そして殿下は私の腰に手を回し、抱き寄せながら、説明を始めた。

しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話

鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。 彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。 干渉しない。触れない。期待しない。 それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに―― 静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。 越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。 壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。 これは、激情ではなく、 確かな意思で育つ夫婦の物語。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

どうしてか、知っていて?

碧水 遥
恋愛
どうして高位貴族令嬢だけが婚約者となるのか……知っていて?

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

残念ながら、定員オーバーです!お望みなら、次期王妃の座を明け渡しますので、お好きにしてください

mios
恋愛
ここのところ、婚約者の第一王子に付き纏われている。 「ベアトリス、頼む!このとーりだ!」 大袈裟に頭を下げて、どうにか我儘を通そうとなさいますが、何度も言いますが、無理です! 男爵令嬢を側妃にすることはできません。愛妾もすでに埋まってますのよ。 どこに、捻じ込めると言うのですか! ※番外編少し長くなりそうなので、また別作品としてあげることにしました。読んでいただきありがとうございました。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

処理中です...