ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します

たぬきち25番

文字の大きさ
99 / 308
第三章 チームお飾りの王太子妃、隣国奪還

23 王都からの伝令

しおりを挟む
そして辺境伯の屋敷の庭には、王都より伝令として騎兵隊最速の男であるロニ・ダーレンが到着していた。

「ロニ!! どうしたんだ?! 久しぶりだな。元気だったか?」

 ロニを出迎えたのは、丁度訓練を終えたばかりのレガードだった。

「うわぁ~~レガード。おまえ……相変わらず、美形なくせに爽やかで……男の敵だな。笑いかけるな、変な顔してろ。……いや、やめろ。お前の変な顔はなぜか『可愛い~~』とか言ってお姉様方に人気だった!! くっ!! 変な顔も可愛いとか、隙なしかよ!!」

 悔しそうなロニに、レガードはいつものように答えた。

「ああ、いつも褒めてくれてありがとう」
「だ・か・ら!! 褒めてねぇ!」

 ロニが怒鳴るように言うと、レガードはロニの怒りは流して尋ねた。

「ところでロニ、何かあったのか?」

 レガードの問いかけにロニは真剣な顔で答えた。

「ああ。現在、ヌーダ国に滞在中のロウエル元公爵から、クローディア様宛に至急の手紙が届いたんだよ。さらに団長もレナン様に伝えたいことがあるっていうんで、団長の命で、俺が直接クローディア様にロウエル元公爵からの手紙と、団長の手紙を届けることになったんだ」

 そして今後はお道化た顔で言った。

「まぁ、ついでに久しぶりにお前の嫌味なほどに整った顔も拝んでやろうと思ってな。ああ、あと、第五部隊の隊長から言付けだ。『何かあったらすぐに駆けつけてやるから暴れて来い』だと。まぁ、団長からの通達で、騎士団は今、第三、第四、第五、騎兵隊全て、すぐに駆けつけられるように準備してる。って……お前、今、愛しのクローディア様の護衛だよな? 三部隊と騎兵隊全部派遣準備って……今回の任務どれだけ危険に晒されてるわけ?」

 ロニの言葉に、レガードは胸を張って答えた。

「すでに危険はあったが、クローディア様は、華麗に知恵と勇気で乗り越えられた。だが……あの方の周りには……危険が絶えない。団長が準備してくれているのなら有難い」

 ロニは眉を寄せると、レガードを見ながら言った。

「すでに危険があったのか?! まぁ~副団長と、お前が護衛してるってだけでも訳ありっていうのはわかるけどな。陛下も今回の件はレナン様に一任してるって言ってらしいからな。クローディア様とレナン様に会えるか? 直接手紙を渡すように言われているんだ」

 ロニの問いかけに、レガードは首を横に振りながら答えた。

「生憎と、クローディア様もブラッド殿も今は不在だ」

 ロニは、眉を下げながら言った。

「不在かぁ~タイミング悪かったな……じゃあ、待たせてもらう。どっちらにしても俺はこのままクローディア様に付きそうことになったからな」
「そうなのか?」

 レガードの嬉しそうな問いかけに、ロニは力強く頷きながら答えた。

「ああ。レナン様から騎士団派遣の要請があっても、一般人じゃ国境越えは荷が重いだろ? だから俺が待機することになった」

 レガードは嬉しそうに笑いながら言った。

「そうか、ロニがいてくれるなら心強いな」
「お、おお。まぁ、出来ることをするさ。あ、何度も言うが俺の隣にいる時、お前はそんないい顔で笑うな。さっき馬小屋からエントランスまで案内してくれた女の子……可愛かったんだ。ここに来るまでにも数人女の子を見たが、この屋敷の女の子は可愛い子が多い気がする。レガードみたいな男が笑顔でうろついていたら、女の子の視界に俺が映らなくなるからな。むしろ袋をかぶれ!!」

 ロニの言葉に、レガードは困ったように答えた。

「ロニ、こちらも何度も言うが、袋をかぶったら空気が薄くなるし、視界が悪くなるだろ?」
「レガードはそれくらいの負荷があって丁度いいんだよ」

 レガードは息を吐くと、ロニの地面に置いていた荷物を担いで言った。

「とにかく、ずっと馬を飛ばして疲れただろう。休めるところに案内するから。お腹は空いていないか?」

 するとロニが不機嫌そうに言った。

「あ~~もう!! さらりとそういうカッコイイことするなよ!! ……お腹空きました」
「はいはい。ほら、行こう、ロニ。後で厨房で何か貰えないか聞いてみる」

 またしても微笑むレガードに、ロニが「くっ……優しい!! お願いします」と言いながらレガードについて歩いたのだった。

 レガードはロニの持ってきた知らせは気になったが、自分が先に内容を見る訳にはいかないので、とにかく同僚を休ませることにしたのだった。
しおりを挟む
感想 955

あなたにおすすめの小説

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。

新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。 趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝! ……って、あれ? 楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。 想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ! でも実はリュシアンは訳ありらしく…… (第18回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった皆様、ありがとうございました!)

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。