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番外編【NEW!!】
ブルーノSIDE
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王宮内を歩いていると最近は文官たちがディラン殿下の話題で持ちきりだ。
聞きたいわけではないが、耳に入ってきてしまう。
以前は「ディラン殿下は優秀だ」「仕事をこなしている」という可もなく不可もなくという評価だったが、最近は違った。
「ディラン殿下は最近随分と変わられたよな」
「ああ。以前も賢い方だとは思ったが、これほど積極的に政務に参加はされなかったよな。
しかもどんどん仕事が楽になるだろう?
たまに今までの大変さはなんだったんだ? って思うよな。
くっ!! 少し前に変ってくれたら、俺、忙し過ぎて彼女に捨てられなく済んだかもしれないのに!!」
「いや、お前が振られたのは自業自得だろ?
でも確かに仕事は楽になったよな~~~。
ディラン殿下、いいと思ったことはどんなに位の低い貴族の提案も取り入れるしな……高位貴族がやっかみでの反対しても、簡単に論破されてしまうものな」
「少し前までは、反対意見の出そうなことはおっしゃらなかったもんな……」
「やはり、次期国王としての自覚が出てきたのだろうな」
「だろな~~だが、自覚しただけで変れるって凄いよな」
「確かにな~~。本当に頭のいい人間ってのは、自覚しただけで自分を変えられるんだろうさ」
「よ~~~し!! 俺も今日から変わる!!」
「…………まぁ、がんばれ……ところでお前は何を自覚したんだ?」
「……え? なんだろう?」
「…………変われねぇな~~~」
最近のディラン殿下の文官たちの評判はとてもいい。
これまで見逃していた高圧的な高位貴族の我儘な政策を粛正し、民がずっと望んでいたが、利権を気にする貴族に反対されてできなかった事業を次から次へと実行に移している。
それに初めは戸惑っていた実務を行う文官や女官たちも、今ではディラン殿下の政策が実行される度に問題が少なくなって仕事が楽になるので、ディラン殿下の政策を喜んで受け入れている。
一部の利権を削られた高位貴族からの反発はあるが、誰一人としてディラン殿下を論破することができない。
今まで静観していた有識のある高位貴族や、ずっと苦渋を味わっていた善良な下位貴族からの絶大な支持を受けて、ディラン殿下の王宮での評価はとてもいいのだ。
「ふ~~~。今日はここまででいいか~~~。
あ~~~ブルーノ。今からキャメロンの顔を見に行ってもいいだろうか?」
少しだけいつもより早く政務を終わらせたディラン殿下が懐中時計を開きながら言った。
「そろそろご夕食の時間ですから自重された方がよろしいかと……」
「そうか……」
ディラン殿下は、がっかりと肩を落とされた。
こんなふうに素直に自分を見せることも昔はなかったように思える。
私はずっと疑問に思っていたことを尋ねてみることにした。
「最近の殿下は積極な政治的決断を下されますが、何かあったのですか?」
すると、ディラン殿下は困ったように笑った。
「ん~~そうだな~~。
以前の私には味方は1人もいないと思っていたんだ。
だから誰かに嫌われることが怖かったのかもしれない」
「……」
意外だった。
いつも凛として王族として堂々としていたディラン殿下がまさか人の評価を恐れていたなど。
「でもさ、最近はそうでもないんだ。
私にはキャメロンがいるからね」
「え?」
そう言うと殿下はとても嬉しそうに笑った。
「キャメロンは私を愛してくれている。
きっと彼女は私の味方でいてくれるだろう。
つまり私は1人ではないということだ。
だから私もキャメロンを幸せにしたい。
キャメロンが暮らすこの国を良くしたい。
さらには、キャメロンといつか産まれてくるであろう私の子供にはいい国で暮らしてほしい。
そして、私たちの子供の友人になる者たちにもいい国で過ごしてほしい。
そんな風に大切な人とその周りの幸せを考えていたら、腹黒い自分のことしか考えていない人間の評価など、どうでも良くなった。
それだけだ」
キャメロン様たったお1人の想いで殿下はそこまで変られたというのか?!
衝撃だった。
いくら愛していると言葉にしたところで所詮は他人だ。
ずっと周りを警戒して生きてきた殿下にこれほどの安心感と信頼を与えたキャメロン様はすでに聖女なのではないだろうか?!
私がずっと驚いていたからだろう。
ディラン殿下が目を細めて口の端を上げた。
「愚かな男だと笑うか?」
「まさか!! とんでもない!!」
「そうか……ははは」
ディラン殿下は楽しそうに笑っていた。
愛と信頼を手にした殿下を私は羨ましく思うのだった。
聞きたいわけではないが、耳に入ってきてしまう。
以前は「ディラン殿下は優秀だ」「仕事をこなしている」という可もなく不可もなくという評価だったが、最近は違った。
「ディラン殿下は最近随分と変わられたよな」
「ああ。以前も賢い方だとは思ったが、これほど積極的に政務に参加はされなかったよな。
しかもどんどん仕事が楽になるだろう?
たまに今までの大変さはなんだったんだ? って思うよな。
くっ!! 少し前に変ってくれたら、俺、忙し過ぎて彼女に捨てられなく済んだかもしれないのに!!」
「いや、お前が振られたのは自業自得だろ?
でも確かに仕事は楽になったよな~~~。
ディラン殿下、いいと思ったことはどんなに位の低い貴族の提案も取り入れるしな……高位貴族がやっかみでの反対しても、簡単に論破されてしまうものな」
「少し前までは、反対意見の出そうなことはおっしゃらなかったもんな……」
「やはり、次期国王としての自覚が出てきたのだろうな」
「だろな~~だが、自覚しただけで変れるって凄いよな」
「確かにな~~。本当に頭のいい人間ってのは、自覚しただけで自分を変えられるんだろうさ」
「よ~~~し!! 俺も今日から変わる!!」
「…………まぁ、がんばれ……ところでお前は何を自覚したんだ?」
「……え? なんだろう?」
「…………変われねぇな~~~」
最近のディラン殿下の文官たちの評判はとてもいい。
これまで見逃していた高圧的な高位貴族の我儘な政策を粛正し、民がずっと望んでいたが、利権を気にする貴族に反対されてできなかった事業を次から次へと実行に移している。
それに初めは戸惑っていた実務を行う文官や女官たちも、今ではディラン殿下の政策が実行される度に問題が少なくなって仕事が楽になるので、ディラン殿下の政策を喜んで受け入れている。
一部の利権を削られた高位貴族からの反発はあるが、誰一人としてディラン殿下を論破することができない。
今まで静観していた有識のある高位貴族や、ずっと苦渋を味わっていた善良な下位貴族からの絶大な支持を受けて、ディラン殿下の王宮での評価はとてもいいのだ。
「ふ~~~。今日はここまででいいか~~~。
あ~~~ブルーノ。今からキャメロンの顔を見に行ってもいいだろうか?」
少しだけいつもより早く政務を終わらせたディラン殿下が懐中時計を開きながら言った。
「そろそろご夕食の時間ですから自重された方がよろしいかと……」
「そうか……」
ディラン殿下は、がっかりと肩を落とされた。
こんなふうに素直に自分を見せることも昔はなかったように思える。
私はずっと疑問に思っていたことを尋ねてみることにした。
「最近の殿下は積極な政治的決断を下されますが、何かあったのですか?」
すると、ディラン殿下は困ったように笑った。
「ん~~そうだな~~。
以前の私には味方は1人もいないと思っていたんだ。
だから誰かに嫌われることが怖かったのかもしれない」
「……」
意外だった。
いつも凛として王族として堂々としていたディラン殿下がまさか人の評価を恐れていたなど。
「でもさ、最近はそうでもないんだ。
私にはキャメロンがいるからね」
「え?」
そう言うと殿下はとても嬉しそうに笑った。
「キャメロンは私を愛してくれている。
きっと彼女は私の味方でいてくれるだろう。
つまり私は1人ではないということだ。
だから私もキャメロンを幸せにしたい。
キャメロンが暮らすこの国を良くしたい。
さらには、キャメロンといつか産まれてくるであろう私の子供にはいい国で暮らしてほしい。
そして、私たちの子供の友人になる者たちにもいい国で過ごしてほしい。
そんな風に大切な人とその周りの幸せを考えていたら、腹黒い自分のことしか考えていない人間の評価など、どうでも良くなった。
それだけだ」
キャメロン様たったお1人の想いで殿下はそこまで変られたというのか?!
衝撃だった。
いくら愛していると言葉にしたところで所詮は他人だ。
ずっと周りを警戒して生きてきた殿下にこれほどの安心感と信頼を与えたキャメロン様はすでに聖女なのではないだろうか?!
私がずっと驚いていたからだろう。
ディラン殿下が目を細めて口の端を上げた。
「愚かな男だと笑うか?」
「まさか!! とんでもない!!」
「そうか……ははは」
ディラン殿下は楽しそうに笑っていた。
愛と信頼を手にした殿下を私は羨ましく思うのだった。
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