文字の大きさ
大
中
小
18 / 20
番外編【NEW!!】
ナターシャSIDE
誰かのたった一言で世界が変わるという奇跡を私は体験してしまった。
「ナターシャ様!! なんて優美なダンスなんでしょう!! 素敵ですわ~~」
幼馴染のディラン殿下の婚約者であるキャメロン様が私のダンスを褒めてくれた途端、今まで受けていた侮蔑の表情が、皆の顔から一瞬で消え去った。
『辺境伯令嬢であることで、バカにされるかもしれない。バカにされるだけならまだしもいじめなどにあうかもしれないから、ダンスやマナーや勉強はしっかりと出来なくてはいけないよ』
父にそう言われ私は厳しい環境にも関わらず勉強もかかさなかった。
ダンスだってテーブルマナーだって、必死で習得した。
それが全て報われた瞬間だった。
その時から私にとってキャメロン様は特別な人になった。
+++
「ナターシャ、ここいいかな?」
私が学園でブルーノ様と昼食をとっていると、ディラン殿下がやってきた。
「はい。それで……キャメロン様は?」
私はをキョロキョロと近くにいらっしゃるであろうキャメロン様を探した。
幼馴染であるディラン殿下は婚約者であるキャメロン様をすぐに独り占めしようとするので、ここで話しかけて来られるということはキャメロン様が私とご一緒にと望んで下さったのだろうと思って嬉しくなった。
最近は選択授業が増えてしまって、同じ教室で勉強することが少ないので、キャメロン様にお会いできなかったのだ。
「ああ、彼女は母親の方の両親。つまり。キャメロンの祖父母が王都に来るから一週間ほど休みだよ」
「そうですか……」
キャメロン様不在だと聞いてがっかりと肩を落とした。
だが、不在だというならそれなら納得だ。
キャメロン様がいたら、この幼馴染は絶対に2人の時間を邪魔されないように全力で人を寄せ付けないようにするだろう……。
ディラン殿下は真剣な顔を向けながら言った。
「頼みがあるんだ。……休みの日に一日中キャメロンと過ごすのは止めてくれないか?」
先日の私の誕生会のことを言っているのだろうか?
あの日はお泊りもして夜までずっと話をしていた。
それとも、ブルーノ様と揉めているときに数日家に泊まって励ましてくれた時のことだろうか?
それとも、ケガのお見舞いで来て頂いたことだろうか?
なんにせよ、キャメロン様とお会いできなくなるなんてお断りだ。
私はにっこりと微笑むとディラン殿下の方を見た。
「お言葉ですが……私はキャメロン様から、ディラン殿下の許可を頂いたとお伺いいたしましたが?」
私は一応微笑みを作ってはみたが、全く笑ってはいなかっただろう。
「う……キャメロンのあのキラキラした瞳で、『ナターシャ様のお誕生会ですので、ぜひともお祝いしたいのです』なんて言われて『ダメ』だなんて言えないだろう?
それに誕生会なら一日中、一緒にいなくてもいいだろ?」
「お話が止まらなくて……私とお話されている時のキャメロン様はそれはそれは楽しそうですので」
「私といる時だって楽しそうだ!!
とにかく……ナターシャはブルーノの件で散々、彼女を独り占めしただろう?
自重してくれ!!」
「キャメロン様からいらっしゃるとおっしゃった場合は?」
「……断ってくれ。命令……」
「では、キャメロン様に殿下に『命令』されてお誘いできませんと言います。
ああ、キャメロンはそれを聞いてどう思われるでしょうね……」
「くっ!! なんて卑怯なんだ!!
そんなことは絶対に言ってはダメだ。頼む言わないでくれ!!」
私と殿下のやり取りを見ていたブルーノ様が声を上げた。
「ナターシャ……あまり殿下をいじめるな。
殿下も、学生の間は友人との時間も大切です。
卒業したら殿下はすぐにご結婚されるじゃないですか。
そうしたら、ずっとキャメロン様と一緒にいられます。
ナターシャにとってキャメロン様は初めて出来たご友人なのです。
大目に見てはいただけませんか?」
するとディラン殿下も困った顔をした。
「……そう言われると、きっとキャメロンにとっても、ナターシャが初めての友人なのだろうとは思うが……」
(え?!)
私はその言葉を聞いて顔が赤くなるのを感じた。
(キャメロン様にとっても、初めてのお友達?!)
辺境の地で友人など出来なかった。
お城に住んでいた時期もあったが、まわりは男性ばかりで女性の友人はいなかった。
でも、仲良く友達とお話しているみんながずっと、ずっと、ずっと羨ましかった。
「ディラン殿下……私、今後も友人として全力でキャメロン様をお支え致します」
「う……そう言われてしまうと何も言えないな……私もキャメロンに友人が出来たことは素直に嬉しいのだから……」
「大変!! こうしてはいられないわ!!
卒業まであとわずか!!
殿下に独り占めされる前に、色々とお誘いしなくちゃ!!」
「待て!! 少しは自重してくれ~~~~」
「お断りします~~~!!!
一度領地にも遊びに……」
「待て!! ナターシャの領地って国境付近だろ?! 何日かかると思っているんだ?」
「移動だけで往復……半月でしょうか?」
「ダメだ!! ダメだ!! 絶対ダメだ!!」
「しかし、キャメロン様は自然豊かな我が領地を見たいと……」
「くっ~~~~~~!!
それなら私も一緒に行く!!」
「無理ですよ!! 殿下は大変お忙しいですし~~~」
言い合う2人をブルーノ様はどこかぼんやりと見ていた。
「ふふふ。お2人とも仲がよろしいですね」
「良くない!!」
「良くないです!!」
同時に声を出した私たちにブルーノ様は微笑んだ。
こんな楽しい日常が訪れるなんて思わなかった。
これもすべてキャメロン様のおかげだった。
「私はキャメロン様が大好きなんです!!」
「私だって大好きに決まっているだろう?!
むしろ愛している!!」
幼馴染とのこんな不毛な言い合いもどこか楽しいと思えるのだった。
感想 8
あなたにおすすめの小説
醜女の私と政略結婚した旦那様の様子がおかしい
サトウミこの国一番の醜女である私と結婚したイバン様。眉目秀麗で数多の女性と浮き名を流した彼は、不祥事を起こしたせいで私なんかと結婚することになってしまった。それでも真面目な彼は、必死に私を愛そうと努力してくださる。
──無駄な努力だ。
こんな色白で目と胸の大きい女を、愛せるはずがない。
ハイパー王太子殿下の隣はツライよ! ~突然の婚約解消~
緑谷めい 私は公爵令嬢ナタリー・ランシス。17歳。
4歳年上の婚約者アルベルト王太子殿下は、超優秀で超絶イケメン!
一応美人の私だけれど、ハイパー王太子殿下の隣はツライものがある。
あれれ、おかしいぞ? ついに自分がゴミに思えてきましたわ!?
王太子殿下の弟、第2王子のロベルト殿下と私は、仲の良い幼馴染。
そのロベルト様の婚約者である隣国のエリーゼ王女と、私の婚約者のアルベルト王太子殿下が、結婚することになった!? よって、私と王太子殿下は、婚約解消してお別れ!? えっ!? 決定ですか? はっ? 一体どういうこと!?
* ハッピーエンドです。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
【完結】断罪イベントの最中ですが、後方彼氏面の第二王子が気になって仕方がない
逢坂莉未(おうさか りま)卒業パーティーの最中、婚約者から突然の婚約破棄と断罪を突きつけられたレーナ。
身に覚えのない罪で糾弾される――はずだった。
だが、なぜか“後方でじっとこちらを見ている”第二王子アーノルドの存在が気になって、それどころではない。
場違いなほど落ち着き払い、どこかおかしな様子でレーナを見守る第二王子。
その違和感は、やがて断罪劇そのものをひっくり返していく――。
巻き込まれ体質の令嬢と、距離感を完全に間違えている一途すぎる第二王子。
断罪の裏でひっそり進んでいた、少しズレた恋の行方は――?
少し愛が重すぎる第二王子と、巻き込まれ令嬢のすれ違いラブコメです。
※本編・番外編ともに完結済みです
※本作は過去に投稿していた作品を加筆修正した改稿版です。現在はこちらを正式版として掲載しています。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。
婚約破棄されたら騎士様に彼女のフリをして欲しいと頼まれました。
屋月 トム伽「婚約を破棄して欲しい。」
そう告げたのは、婚約者のハロルド様だ。
ハロルド様はハーヴィ伯爵家の嫡男だ。
私の婚約者のはずがどうやら妹と結婚したいらしい。
いつも人のものを欲しがる妹はわざわざ私の婚約者まで欲しかったようだ。
「ラケルが俺のことが好きなのはわかるが、妹のメイベルを好きになってしまったんだ。」
「お姉様、ごめんなさい。」
いやいや、好きだったことはないですよ。
ハロルド様と私は政略結婚ですよね?
そして、婚約破棄の書面にサインをした。
その日から、ハロルド様は妹に会いにしょっちゅう邸に来る。
はっきり言って居心地が悪い!
私は邸の庭の平屋に移り、邸の生活から出ていた。
平屋は快適だった。
そして、街に出た時、花屋さんが困っていたので店番を少しの時間だけした時に男前の騎士様が花屋にやってきた。
滞りなく接客をしただけが、翌日私を訪ねてきた。
そして、「俺の彼女のフリをして欲しい。」と頼まれた。
困っているようだし、どうせ暇だし、あまりの真剣さに、彼女のフリを受け入れることになったが…。
小説家になろう様でも投稿しています!
4/11、小説家になろう様にて日間ランキング5位になりました。
→4/12日間ランキング3位→2位→1位
ツッコミどころ満載の悪役令嬢を監修、当て馬じゃなくて真の悪女になって君臨しろ!!
たぬきち25番お笑いコンビを解散した桂馬涼は、異世界に転生した。
するとそこにはツッコミどころ満載の悪役令嬢が存在した。
しかも悪役令嬢は、婚約者の王子を伯爵令嬢に取られそうになっていた。
悪役令嬢よ、真正悪女に変われ!!
※他サイト様にも掲載始めました!