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番外編【NEW!!】
ナターシャSIDE
しおりを挟む誰かのたった一言で世界が変わるという奇跡を私は体験してしまった。
「ナターシャ様!! なんて優美なダンスなんでしょう!! 素敵ですわ~~」
幼馴染のディラン殿下の婚約者であるキャメロン様が私のダンスを褒めてくれた途端、今まで受けていた侮蔑の表情が、皆の顔から一瞬で消え去った。
『辺境伯令嬢であることで、バカにされるかもしれない。バカにされるだけならまだしもいじめなどにあうかもしれないから、ダンスやマナーや勉強はしっかりと出来なくてはいけないよ』
父にそう言われ私は厳しい環境にも関わらず勉強もかかさなかった。
ダンスだってテーブルマナーだって、必死で習得した。
それが全て報われた瞬間だった。
その時から私にとってキャメロン様は特別な人になった。
+++
「ナターシャ、ここいいかな?」
私が学園でブルーノ様と昼食をとっていると、ディラン殿下がやってきた。
「はい。それで……キャメロン様は?」
私はをキョロキョロと近くにいらっしゃるであろうキャメロン様を探した。
幼馴染であるディラン殿下は婚約者であるキャメロン様をすぐに独り占めしようとするので、ここで話しかけて来られるということはキャメロン様が私とご一緒にと望んで下さったのだろうと思って嬉しくなった。
最近は選択授業が増えてしまって、同じ教室で勉強することが少ないので、キャメロン様にお会いできなかったのだ。
「ああ、彼女は母親の方の両親。つまり。キャメロンの祖父母が王都に来るから一週間ほど休みだよ」
「そうですか……」
キャメロン様不在だと聞いてがっかりと肩を落とした。
だが、不在だというならそれなら納得だ。
キャメロン様がいたら、この幼馴染は絶対に2人の時間を邪魔されないように全力で人を寄せ付けないようにするだろう……。
ディラン殿下は真剣な顔を向けながら言った。
「頼みがあるんだ。……休みの日に一日中キャメロンと過ごすのは止めてくれないか?」
先日の私の誕生会のことを言っているのだろうか?
あの日はお泊りもして夜までずっと話をしていた。
それとも、ブルーノ様と揉めているときに数日家に泊まって励ましてくれた時のことだろうか?
それとも、ケガのお見舞いで来て頂いたことだろうか?
なんにせよ、キャメロン様とお会いできなくなるなんてお断りだ。
私はにっこりと微笑むとディラン殿下の方を見た。
「お言葉ですが……私はキャメロン様から、ディラン殿下の許可を頂いたとお伺いいたしましたが?」
私は一応微笑みを作ってはみたが、全く笑ってはいなかっただろう。
「う……キャメロンのあのキラキラした瞳で、『ナターシャ様のお誕生会ですので、ぜひともお祝いしたいのです』なんて言われて『ダメ』だなんて言えないだろう?
それに誕生会なら一日中、一緒にいなくてもいいだろ?」
「お話が止まらなくて……私とお話されている時のキャメロン様はそれはそれは楽しそうですので」
「私といる時だって楽しそうだ!!
とにかく……ナターシャはブルーノの件で散々、彼女を独り占めしただろう?
自重してくれ!!」
「キャメロン様からいらっしゃるとおっしゃった場合は?」
「……断ってくれ。命令……」
「では、キャメロン様に殿下に『命令』されてお誘いできませんと言います。
ああ、キャメロンはそれを聞いてどう思われるでしょうね……」
「くっ!! なんて卑怯なんだ!!
そんなことは絶対に言ってはダメだ。頼む言わないでくれ!!」
私と殿下のやり取りを見ていたブルーノ様が声を上げた。
「ナターシャ……あまり殿下をいじめるな。
殿下も、学生の間は友人との時間も大切です。
卒業したら殿下はすぐにご結婚されるじゃないですか。
そうしたら、ずっとキャメロン様と一緒にいられます。
ナターシャにとってキャメロン様は初めて出来たご友人なのです。
大目に見てはいただけませんか?」
するとディラン殿下も困った顔をした。
「……そう言われると、きっとキャメロンにとっても、ナターシャが初めての友人なのだろうとは思うが……」
(え?!)
私はその言葉を聞いて顔が赤くなるのを感じた。
(キャメロン様にとっても、初めてのお友達?!)
辺境の地で友人など出来なかった。
お城に住んでいた時期もあったが、まわりは男性ばかりで女性の友人はいなかった。
でも、仲良く友達とお話しているみんながずっと、ずっと、ずっと羨ましかった。
「ディラン殿下……私、今後も友人として全力でキャメロン様をお支え致します」
「う……そう言われてしまうと何も言えないな……私もキャメロンに友人が出来たことは素直に嬉しいのだから……」
「大変!! こうしてはいられないわ!!
卒業まであとわずか!!
殿下に独り占めされる前に、色々とお誘いしなくちゃ!!」
「待て!! 少しは自重してくれ~~~~」
「お断りします~~~!!!
一度領地にも遊びに……」
「待て!! ナターシャの領地って国境付近だろ?! 何日かかると思っているんだ?」
「移動だけで往復……半月でしょうか?」
「ダメだ!! ダメだ!! 絶対ダメだ!!」
「しかし、キャメロン様は自然豊かな我が領地を見たいと……」
「くっ~~~~~~!!
それなら私も一緒に行く!!」
「無理ですよ!! 殿下は大変お忙しいですし~~~」
言い合う2人をブルーノ様はどこかぼんやりと見ていた。
「ふふふ。お2人とも仲がよろしいですね」
「良くない!!」
「良くないです!!」
同時に声を出した私たちにブルーノ様は微笑んだ。
こんな楽しい日常が訪れるなんて思わなかった。
これもすべてキャメロン様のおかげだった。
「私はキャメロン様が大好きなんです!!」
「私だって大好きに決まっているだろう?!
むしろ愛している!!」
幼馴染とのこんな不毛な言い合いもどこか楽しいと思えるのだった。
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