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雪合戦まであと18日
しおりを挟む月曜日。
達成条件も定まった。後は兵法を元に具体的な戦略を立てる必要がある。
(勝利のために次に考えるべきことは兵略か……)
【戦略】
戦いを有利に進めるための謀などのこと
【戦略】
・現状を知る
・対策を練る
・行動を起こす
(まずは、現状分析だよな)
昼休みに図書館で、貸出の対応をしながらも頭の中では雪合戦の作戦を考えていた。
そろそろ昼休みも終わるので、人もほとんどいなくなった頃、五十鈴が話しかけてきた。
「委員長、明日の生徒会の会議の資料の確認をお願いします」
「うん。ありがとう」
俺は副委員長の五十鈴から会議資料を受け取った。五十鈴の資料はいつも読みやすいので確認も楽だった。
図書委員長と副委員長は生徒会の会議や、委員会内での話し合いなどの準備をするために、一緒に当番をするという伝統がある。そんなわけで、俺はいつも副委員長の五十鈴と当番になっている。
「確認したよ。完璧! 特にこの表がわかりやすい」
「チェック、ありがとうございます」
五十鈴に資料を返すと、彼女は嬉しそうに笑った。
そして俺を見ながら尋ねた。
「そういえば、ずっと気になってたんですけど、委員長、北斎展行ったんですか?」
「うん。あ、もしかして、昨日会場にいたの?」
人が多かったので気付かなかったが、五十鈴も昨日、北斎展にいたのだろうか、と思って尋ねた。
すると五十鈴が首を振った。
「いえいえ、そのしおりです。それ、北斎展の半券ですよね?」
五十鈴に指摘されて、本に北斎展の半券を挟んでいたことを思い出した。
色鮮やかな半券だったので捨てられずにしおりにした。
「ああ。これか、なるほど。そうそう、昨日行って来た」
「一人で行ったんですか?」
「いや、違う」
「ご家族と行かれたのですか?」
「違うけど……」
五十鈴は眉を寄せながら少し低い声で言った。
世間話だとは思うが、誰と行ったかという質問はそれほど気になる話題だろうか、不思議に思っているとさらに五十鈴が質問を続けた。
「じゃあ、誰と行ったんですか?」
「平塚とだけど……」
「え? 平塚って……副会長の平塚先輩ですか?」
「うん。副会長の平塚」
五十鈴の問いかけに答えると、五十鈴が驚きながら俺を見た。
「委員長、副会長と仲良いんですね……意外です……」
軍師に指名されるまでは、話したこともほとんどなかった。だから、仲がいいというよりも、目的が同じなので手を組んだという感じだ。
平塚は公平な性格なので、必要があれば誰とでも話をする。
「仲がいいというか……成り行きで一緒に行くことになったんだけど」
「成り行きで一緒に北斎展? 委員長って普段どんな生活をしているんですか? どんな成り行きで副会長と北斎展に行くことになったのかとても気になりますが……私とも行きませんか?」
「それは無理だと思う」
北斎展は昨日で終わったので、もう見ることはできない。
だが北斎展はかなり人気なようだ。
でも牛丼2杯分くらいの価格なので、なかなか一緒に行ってくれる人を見つけるのは難しいかもしれない。
「無理ですか……」
五十鈴はがっかりと肩を落とした。
やっぱり五十鈴は北斎展が見たかったのだろう。
(悪いことしたな……)
俺は半券を本から抜き取ると、五十鈴に差し出した。
「よかったらいる?」
平塚の母が前売り券を買ってくれていたので、俺たちの北斎展の半券には北斎の作品が、かなりセンスよく3点ほど掲載されている。
当日券は白い紙に文字が印字されている簡素なものだった。
「……いります」
五十鈴は不機嫌そうな顔をしながら半券を受け取った。
顔と行動がまるで合っていないが、それほど北斎展に行けなかったのがショックだったのだろう。
(俺も、期限とか注意しなけないな……)
そう思って、はたと気づいた。
(あれ? そう言えば雪合戦まであとどれくらいだ?)
確か先生からもらった紙にはルールとか規定しか書かれていなかった。
「まずい、俺もいつなのか確認しなきゃ……」
思わず声を上げると、五十鈴が俺を見た。
「いつって、何がですか? よくわかりませんが、私、年間行事表持ってますよ」
「そんなの持ってるの? 悪い見せてくれない?」
「いいですよ」
俺は五十鈴に行事表を借りた。
(あった……え~と、7、14……18。あと18日!?)
あまり時間はないのかもしれない。
すぐに行動を開始する必要があるかもしれない。
「行事予定、ありがとう」
「いえいえ、ところで何を確認したんですか?」
「雪合戦」
「ああ、雪合戦……2年生は雪合戦の後に、甘酒とか豚汁が食べられるんですよね? いいな~~」
(いいな!? そんな風に思うんだ……でも俺も去年は他人事だったかもな……)
確か1年の時は、校庭で2年生の雪合戦を応援した。その後に、甘酒を飲んだ記憶がある。
2年は甘酒は全員飲めるし、その年によってもう一つを勝敗に関係なく食べることができる。
「確か1年も応援で、甘酒は飲めたと思うけど……豚汁は2年だけだけど……」
「え? そうなんですか? それは楽しみかも」
「ああ、甘酒が?」
「そうですけど、当日は、委員長のクラスを応援しますから! 心の中で」
「心の中でなんだ……」
雪合戦まであと2週間と4日。
俺は明日から早速行動を開始することにした。
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