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雪合戦まであと16日
しおりを挟む「意外だな……結構ちゃんとした情報が集まってる……」
俺は現在、平塚の家にお邪魔していた。
平塚はこたつに入って、机の天板に頬をつけてぬくぬくとしながら、俺が昨日、西田たちから聞いた情報を眺めていた。
「彼女たち協力的で助かった」
「ふ~~ん」
平塚がニヤニヤと笑いながら俺を見た。
「平塚の方は?」
俺は平塚が用意してくれたココアを飲みながら尋ねた。
「もちろん、まとめてあるよ。これ」
そして平塚は、他のクラスの情報を俺に見せてくれた。
「やっぱり、2組は不利だよな~~」
平塚が俺の集めた情報の紙を置きながら言った。
(確かに運動能力高い人材は他のクラスに固まってるけど、攻、守のバランスでいったら、2組だって負けてない)
俺はココアのカップを置いて、平塚の集めてくれた情報を一通り見た後に言った。
「そんなこともないって、とにかく将軍を決めよう」
平塚は机から顔を上げると俺をじっと見た。
「将軍か……4人選出するんだよな? 攻・守・作・指令の分野でそれぞれ4人」
「うん。今回はまず将軍を決めて、それぞれが自分の得意な分野に回ってもらうと思ってる」
俺が考えていたことを言うと、平塚が驚いた顔をした。
「え? 人数とか決めないのか? ほとんど攻めとかになったらどうする?」
「それでもいいんじゃないかと思ってるんだけど……」
「それでいいのか?」
「今回、達成条件は勝利。そして目標がみんなそれぞれ自分に出来ることをしながらも、同じ方向に進む組織作りだろ? それなら、将軍だけを俺たちが決めて、それぞれが将軍を見て自分が活躍できそうな場所を選ぶのがいいかなって。ちなみに、途中で変えてもいいように人数は決めずに最終的に調整するのもいいかな、って思ってる」
平塚は目を大きく開きながら言った。
「途中で変えてもいいんだ?」
「うん。練習で色々試してみて考えてもいいと思ってる。2組はさ、みんななんでも出来そうっていうか、突出した人はいないけどさ、個人じゃなくてクラスとして見てみたらバランスの取れた良いクラスだと思う」
平塚は俺をじっと見てニヤリと笑った。
「いいじゃん、それ。さすが、野沢孔明」
「……だから、それ、恐れ多いって」
「ははは、今日は将軍を決めるか?」
「うん。とりあえず……守りと攻めの将軍を決めたい」
平塚はさっきまでとは別人のような顔になり、クラス名簿と俺の調べた情報を見比べた。
「やっぱり、攻めと守りの将軍はあいつらに頼む?」
「あいつらって?」
「相沢と、山岡」
二人はクラスでもムードメーカーで、相沢はサッカー部で、山岡は野球部だ。
「相沢はサッカーではディフェンダーで守りの要だし、山岡は野球のセンター。あいつなら十分に的を狙える」
「つまり、守りの将軍が相沢で、攻めの将軍が山岡ってこと?」
「そう。他にいなくない? 誰かいる?」
俺はじっと平塚を見ながら言った。
「攻めの将軍が山岡っていうのは賛成。でも、守りの将軍は鈴木さんはどうかなって思ってる。相沢は確かにみんなに人気があるけど、どちらかというと共感タイプだから指示を出すって感じじゃない気がする。その点鈴木さんは生徒会の美化委員長で普段の授業を見ても発言もしてるし、指示も出せる」
「鈴木か……美化委員長のイメージだけど、ハンドボールのキーパーって言ってたな……確かに鈴木なら指示出せるな。そう考えると、2組って生徒会役員多いな……野沢と鈴木、俺……3人もいるのか」
平塚は、しばらく考えた後に俺を見た。
「【攻め】の将軍が山岡、【守り】の将軍は鈴木でいく。それで、あとの2つはどうする?」
「実はこの2つは迷ってる。【作る】っていう分野にどんなリーダーが相応しいのかわからない。そして、【指示】っていうのも朝礼台の上に立ってみんなに指示を出すんだろ? どんな人が適任なのかわからない。それにこの二つは置かないっていう選択肢もある」
雪合戦の難しいところ。それは雪玉を作るという作業があるところだ。
例年【作る】という人たちは置かずに、【攻め】と【守り】に全振りしたクラスもある。
それに過去には混乱を招いたために指示という人を置かないクラスも多く存在している。
「それな……どうするかな……安易になくすっていうのもな……もしも雪がなかったら、体育館だろ? その場合はボールを使うから雪玉作りの人たちが攻めと守りに入るから、人数を半分ずつにするっていうくらいだし……やっぱり、作る人がいなかったら、競技自体の種類が変わるほど変化があるってことだろ?」
「うん」
平塚は、大きく息を吐いて再びこたつの机に頬を付けた。
「……それならやっぱり、置かないっていうのはリスクだよな……」
「うん。特に2組にとってはリスクかも」
「そうだよな~~攻める人が多ければ勝てるって感じでもなさそうだしな」
平塚は目を閉じて少し考えた後に、目を開いた。
「明日は、【攻め】と【守り】将軍に打診して、残りは金曜の学活までにある程度きめよう」
「そうだな」
「野沢、今度の日曜時間ある?」
「あるけど、何?」
平塚が俺を見ながら口を開いた。
「日曜に小学生を対象にしたイベントがあって、中学生のボランティアを募集してるらしいんだけど、中々集まらなくてさ……野沢興味ない? ちなみにボランティア証明っていうのも貰えて、内申に有利」
「それ、具体的には何するの?」
「午前が会場設営と準備。午後が小学生の案内と片付け。そして、午後は足りてるけど、午前がいない。ちなみに弁当も出る」
「会場設営と準備か……いいよ。手伝うよ」
「助かる。申し込むな」
平塚はパソコンを開くと手早く申し込みを終えた。
これまでボランティアには興味はあったが、実際には行ったことがない。
俺はココアを飲みながら平塚を見た。
「それって、平塚も行くの?」
「行くよ。しかも午前」
俺は再びココアを飲むと平塚の真似をしてテーブルに頬を付けた。
「平塚と一緒にいると世界がどんどん広がるな……」
平塚は、俺の頭を撫で回しながら笑った。
「それは俺もだって、野沢孔明」
「恐れ多いってば……」
またしても平塚のおかげで、万年ヒマ人だった俺に、大変有意義な休日の予定が出来たのだった。
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