54 / 95
第六章 選ばれた新たな未来
53 素晴らしい秘書
しおりを挟む学院が終わると、エカテリーナのお屋敷にお邪魔することになっていたので、ランゲ侯爵家の馬車に乗せてもらうことになった。
馬車乗り場に、エカテリーナと、ゲオルグと一緒に向かい、私はエイドを探すことにした。Sクラスは他のクラスより、終わりが早いので、まだ馬車乗り場は空いていた。
朝にエイドに『迎えは必要ない』と伝えることが出来なかったので、エイドはきっと迎えに来ているだろう。
「私、エイドを探してくるわ」
(エイドはどこに……あ!!)
私は、すぐにエイドを見つけて駆け寄った。エイドは、馬の手綱を持ち、馬の隣に立っていた。
「エイド!! 馬で来たの?!」
エイドは馬車ではなく、馬で迎えに来ていたのだ。
「ええ。恐らく、今日はエカテリーナ様のお屋敷に、誘われるのではないかと思いましてね。違ったら、学院から少し離れたところから、お嬢を馬に乗せて、帰ろうと思っていました」
エイドは、困ったように笑いながら言った。エイドは、機転は利くし、先読みの力もあるし、行動力もある。本当に私は、いつもエイドに助けられていた。
「さすが、エイド!! 大正解よ。今日は、このままエカテリーナのお屋敷にお邪魔するわ。帰りは、ランゲ侯爵家の馬車で送って下さるって」
「そうですか、わかりました」
「あら? もしかして……エイドには、私の行動が読まれていたのかしら?」
エイドと話をしていると、エカテリーナが近づいて来て、楽しそうに言った。
「これは、エカテリーナ様。お声をお掛け下さり光栄です。行動を読んだと言いますか……エカテリーナ様とも、それなりに長いお付き合いですしね。勘です」
エイドが片目を閉じながら言うと、エカテリーナが感心したように口を開いた。
「ふふふ、勘なの? いい勘してるわ。ん~~……あなたって、見た目もいいし、頭もいいし、口も上手いし……シャルロッテの家の方でなかったら、秘書や側近として、我が侯爵家に招き入れたいくらいよ」
私は、エカテリーナの言葉を聞いて、慌てて口を開いた。自分でも、なぜこんなに焦っているのか、不思議なくらいだった。
「エカテリーナ、実は、エイドは私の秘書になってくれたの。今後、私のお仕事を手伝ってくれるの」
「何? 秘書? この男が?!」
すると、なぜか、ずっと黙っていたゲオルグが声を上げた。エイドは、姿勢を正すと、ゲオルグを見てすました顔で言った。
「今後は、私が、常にシャルロッテ様のお傍に仕えさせて頂きます。若輩者ですので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します、ゲオルグ様」
ゲオルグが、眉を寄せると、少し不機嫌そうに言った。
「そうだな……シャルロッテの秘書になるというのなら、私にも関係があるな。私は、シャルロッテの補佐だからな! よろしくな、エイド殿」
「ええ、こちらこそ」
エイドとゲオルグが、にこやかに握手を交わしていた。
2人が仲良くしてくれて、嬉しくなった。
「あら~~~。ふふふ、まぁ、シャルロッテを助けてくれる人が、増えるのはいいことですものね。
さぁ、シャルロッテ、行きましょうか? あの2人もそのうち来るわよ」
「え? ええ」
2人の会話は聞こえなかったが、とても楽しそうに笑顔で話をしているようだったので、私もエカテリーナの言葉に頷いたのだった。
「(ちょっと、ゲオルグ様、痛いですよ)」
「(すまないな。普段から鍛えているからな)」
「(ゲオルグ様……力加減が苦手なのですね。そのお力で、お嬢に触れるのは、禁止ですよ)」
「(シャルロッテに、こんな力を入れるものか!!)」
ランゲ侯爵家の馬車の前で、楽しそうに話をしている2人を見ていると、エイドと目が合った。
「あ!! お嬢~~では、ごゆっくり~~。ゲオルグ様、お嬢がお待ちですよ」
エイドは私に手を振って見送ってくれた。
「いってきま~す」
エイドに手を振ると、なぜかゲオルグは、深いため息をついていたのだった。
「……はぁ」
190
あなたにおすすめの小説
【1月18日完結予定】捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
【完結済】王女に夢中な婚約者様、さようなら 〜自分を取り戻したあとの学園生活は幸せです! 〜
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
王立学園への入学をきっかけに、領地の屋敷から王都のタウンハウスへと引っ越した、ハートリー伯爵家の令嬢ロザリンド。婚約者ルパートとともに始まるはずの学園生活を楽しみにしていた。
けれど現実は、王女殿下のご機嫌を取るための、ルパートからの理不尽な命令の連続。
「かつらと黒縁眼鏡の着用必須」「王女殿下より目立つな」「見目の良い男性、高位貴族の子息らと会話をするな」……。
ルパートから渡された「禁止事項一覧表」に縛られ、ロザリンドは期待とは真逆の、暗黒の学園生活を送ることに。
そんな日々の中での唯一の救いとなったのは、友人となってくれた冷静で聡明な公爵令嬢、ノエリスの存在だった。
学期末、ロザリンドはついにルパートの怒りを買い、婚約破棄を言い渡される。
けれど、深く傷つきながら長期休暇を迎えたロザリンドのもとに届いたのは、兄の友人であり王国騎士団に属する公爵令息クライヴからの婚約の申し出だった。
暗黒の一学期が嘘のように、幸せな長期休暇を過ごしたロザリンド。けれど新学期を迎えると、エメライン王女が接触してきて……。
※10万文字超えそうなので長編に変更します。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
嘘つきな貴方を捨てさせていただきます
梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。
「さっさと死んでくれ」
フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。
愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。
嘘つきな貴方なんて、要らない。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
11/27HOTランキング5位ありがとうございます。
※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。
1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。
完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。
これで、私も自由になれます
たくわん
恋愛
社交界で「地味で会話がつまらない」と評判のエリザベート・フォン・リヒテンシュタイン。婚約者である公爵家の長男アレクサンダーから、舞踏会の場で突然婚約破棄を告げられる。理由は「華やかで魅力的な」子爵令嬢ソフィアとの恋。エリザベートは静かに受け入れ、社交界の噂話の的になる。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる