我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

文字の大きさ
88 / 145
【サミュエル】(学院発展ルート)

17 新たな試練

しおりを挟む



 とうとう、私はサミュエル先生と念願だった両想いになることが出来ました!!
 ありがとうございます! これも皆様のおかげです!!

 あ~でも、これはもしかして夢?

 いきなり、王女だと言われ、サミュエル先生と両想いになって、初めてのキスをして……。

ーー……盛りすぎっ!!!

 私が心労で倒れたらどうするの??

 夢だって言われる方が納得する展開じゃない??

 私が少しだけ現実逃避をしていると、トントントンと控え目にノックされて、母と実父が部屋に入ってきた。どうやら気をきかしてくれたらしい。すると一緒にコンラッド君も入ってきた。

「どうして、コンラッド君が……」

私が呟くと、コンラッド君はいきなり私の前に膝まづくと私の手を取って口付けをした。

「次の女王陛下になられることを決意されたとお伺い致しました。ご決断をわたくたち共、臣下一同は心より嬉しく思います」

「え? え? コンラッド君どうしたの?」

私がうろたえていると、コンラッド君が今までと全く違う様子で話を始めた。

「きっとあなたは王女殿下になられることを拒否なさると思っておりましたので、これからゆっくりとあなたを口説き落とす予定だったのですが……残念です。ですが、これからは、あなたを一番近くで支える臣下として仕えます」

(口説……臣下……仕える……え? どういうこと)

混乱だらけの私は、やっとのことで口を開いた。

「……説明してくれませんか?」

 すると、実父がコンラッド君の横に来ると説明をしてくれた。

「彼はディール侯爵家の嫡男で、将来はベルの夫か、宰相、いずれかの地位に着く予定だったんだ」

ーー……なんですって?

(私の夫か、宰相?? 何……そのおかしな2択!!)

 私がコンラッド君を見るとコンラッド君は美しく微笑んだ。

「宰相として今後は、あなたを支えます……ですが……女王陛下の配偶者が1人とは決まってはいませんからね……私との子供も作る気はありませんか? ベルナデット王女殿下?」

(は? え? 子供?? コンラッド君との?)

 私がコンラッド君の言葉を理解せずに固まっていると、先程まで状況を見守っていたサミュエル先生の背中が見えた。

「そのお心は臣下としては素晴らしいですが、その心配は杞憂です。あなたとの子供を作ることが出来ない程、私が彼女のお相手を致しますので!」

・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・?

(あれ? なんだか今、凄いセリフを聞いたような?)

 私が石像のごとく固まっていると、コンラッド君の後ろから母のハートマークを乱舞したような浮かれた声が聞こえた。

「キャ~~~~!! ねぇ!! トリスタン!! 今の聞いた?! サミュったら、情熱的~♪」

「……ああ、聞いたよ……聞いちゃったよ……はは……頼もしいね」

 狂気乱舞して盛り上がっている母とは対照的に実父はこの世の終わりかというほど悲壮感に溢れた顔をしていた。

「そうですか……残念です。では、お2人にこれを」

 コンラッド君は私たちの前の楽譜を差し出した。

「これは?」

私の前にかばうように立っていたサミュエル先生がコンラッド君に尋ねた。

「今度の生誕祭で披露する楽曲です」

「拝見します」

サミュエル先生が楽譜を受け取ると、私は後ろからサミュエル先生の手元の楽譜を覗き込んだ。


(『我が最愛を想う』? 初めて見る曲だわ……うっ!! 変調記号がこんなに……)

「かなり難易度の高い曲ですが、完成したらさぞ美しい音楽になるのでしょうね」

サミュエル先生が楽譜を見ながら幸せそうに笑った。

(そうだった!! サミュエル先生は曲が難しければ、難しい程燃えるんだった!!)

この楽譜を見てげんなりした私と対照的にサミュエル先生の瞳は輝いていた。

「ふふふ。サミュならきっとそう言ってくれると思ったわ」

すると母が嬉しそうに笑った。

「もしかして、これを作曲されたのは、ブリジット女王陛下ですか?」

「ふふふ。そうよ。ちなみにサミュに最後に教えた曲も私が作曲した曲よ」

「え?! あの曲が!! ということは……ベルナデット様との最後の曲は先生の曲だったということなんですね……」

 サミュエル先生が母のことを、『ブリジット女王陛下』と言うのも忘れて驚いて声を上げた。

「あの曲が……お母様の曲?」

 私も思わず声を上げてしまった。
 まだ音楽芸術学院に入る前、サミュエル先生との個人レッスンの最後の曲になった思い出の曲。あのころの私にはとてつもなく難曲だった。それでも、必死であの曲を弾けるように練習した。もしかしたら、あの曲じゃなかったら、私は途中で挫折していたかもしれない。でも、あの耳から聞こえてくるとこまでも優しく美しい戦慄に支えられながらやり切ったのだ。

私たちが唖然としていると、母が真剣な顔をして私とサミュエル先生を見つめた。

「いい、2人ともよく聞いて。
今、この国は音楽で世界を牽引しているの。
だから例え女王や王配といえども、楽器が弾けないと話にならないわ。
それこそ、何かあったら演奏する必要があるから楽器の演奏は一生続くわ。
正直、この国の音楽のレベルはかなり高い。
そんな中、もし2人がこの話を受けてくれるなら、皆の前で演奏を披露し続けなければならないわ。
どうサミュ? 逃げ出さずにできる?」

母がニヤリと悪そうな笑みを浮かべてサミュエル先生を見た。

(ふぇ~~! 音楽で世界を牽引?! その国の女王?! 荷が重い~~)

私はその話を聞いて正直身体が震えていたが、サミュエル先生はゆっくりと母の顔を見ると、美しく笑った。

「先生、誰に向かって言っているのです。
あなたに直接教えを受けた私が逃げるなど有り得ません」

(サミュエル先生……音楽家モードになってる~~~!!)

私がサミュエル先生もモデルチェンジに震えていると、母と実父が声を出して笑い出した。

「ははは。本当に、サミュは普段は謙虚なくせに、どうして音楽のことになるとそんなに強気なの?ふふふ。相変わらず君は本当に面白いわ」

「いや~頼もしいな~さすが、ベルのヴァイオリンをここまで育てた先生だな~」


コンラッド君は驚いて目を見開いていた。

「陛下の前でそんな発言……凄いな」

というわけで、私たちはこの難曲に挑むことになったのだった。




しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。  手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。 大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。 成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで? 歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった! 出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。 騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる? 5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。 ハッピーエンドです。 完結しています。 小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

処理中です...