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続き
しおりを挟む飲み物を受け取ってソファーに向かうと、
絢音の姿が室内に無い
あれっ?
「大地! 来て!」
バスルームの方から声がする。
「どうした?」
飲み物をテーブルに置いて向かうと ――
「どぉーお?」
こ、こいつ……。
セーラー服に着替えた絢音がこちらへ背中を向け
立っていた。
床に散乱している、絢音が脱いだ衣服……
こんな制服姿なら、ツイッターとかインスタとか
でも見慣れてるハズなのに、場所と状況が特異
だからか?
今の絢音は妙に艶めかしくて……
「な ―― 何してんだ?!」
「え? 着てみようと思って。だって星蘭の制服って
ブレザーでしょ。1度こんなの着てみたいって思って
たの」
だからって何故今なんだ?!
それに、そのコスプレ用セーラー服は背中の部分に
何故かファスナーがついていて、絢音はそれを僕に
上げてとせがむのだ。
「ほら、早く上げて!」
「え? し、しかし……」
「ほらっ、早くぅ」
彼女に急かされ、仕方なくファスナーを上げようと
手を伸ばすが、ブラのホックが見える!
そのホックを外せと、
女神様はおっしゃるのですか?
「ねぇ、早くしてよー」
絢音が僕を振り返る。
「あ、あぁ……すまん」
ホックを見ないように顔を背けて瞼を閉じて、
恐る恐る手を伸ばし何とかファスナーを
上げきった!
チラ見だが、絢音の背中はすんごいキレイだ!
やばい!やばい やばい!
息子よ、どうか耐えてくれ。
「飲み物きたし、リビングに戻ろう」
バスルームを先に出ようとする僕に
絢音が、
「大地の分もあるのよ」
「へ?」
嬉しそうにクローゼットへ向かう。
「男子って言ったら、やっぱ学ランでしょ」
コレって、あたらしいごっこ遊び?
「どうしても着ないとダメ?」
「私がお願いって、頼んだらー?」
あぁ ―― 参った、
いつの間に僕はこんなにも絢音が大好きに
なってしまったんだ?
彼女が望む事なら、出来る限り叶えてやりたい。
しかし、絢音のセーラー服姿が似合いすぎて……
鼻血が出そうだ……
絢音から視線を外し、言われた通りに学ランを着た。
「うわぁ ―― 凄い。まるで、あなたにあつらえた
みたい」
そう言った絢音の言葉に、自分自身も驚いていた。
既製服にしてはサイズぴったりで、ほんと僕に
あつらえたみたいだったから。
「どう? 似合う?」
ノセられ易いアホな僕は嬉しそうに笑って
しまったが、気を取り直して絢音をソファーへ
座らせ、アイスコーヒーを手渡す。
「それを飲んだら出ようか。そろそろ、
レイトショーの開演時間だろ?」
「……大地はそんなにここを早く出たいの?」
絢音が急に哀しそうに瞳を翳らせ僕を見る。
「あぁ、そうだ。早く出よう」
「どうして?」
「どうしてって……」
「変な気分になるから? 私は構わないのよ?
付き合う始めあなたに言った通り、私は……」
「それは絶対にしないって言っただろ」
「私の事が嫌い?」
「大好きだよ」
「じゃあ抱いて」
「それは出来ない」
「どうして? 私に婚約者がいるから?
だから抱いてくれないの? ダメなの?
やっぱり私の事が嫌いなんだ……」
絢音が僕に抱きついてきた。
でも僕は、絢音を抱きしめ返す事は
出来なかった。
「……んなワケねぇだろ……あやは……男の ――
雄の本性を知らなさ過ぎる。男ってのは、1度喰らい
出したが最後、とことん喰らい尽くすまで止められ
ない、俗物なんだ」
「それでも私は、あなた ―― 柊大地になら、
初めてをあげてもいいと、抱いて欲しいって
思ったの……大好きよ、大地」
このコスプレセーラー服は超薄々デザインで、
下着のシルエットが物凄く露骨に見える。
それを証拠に絢音のふくよかな胸の感触が
シャツ越しにはっきり伝わってくる。
う”、うわぁ……や、やばい……息子が……。
緊急事態!!
「私は大地が好き。だから抱かれたい」
ソファーの上で大地の身体を倒して、
耳たぶを噛んだ!
そんな事、一体どこで覚えたんだ?!
「やめろって、絢音っ」
最後の理性で突っぱねる。
「どうして?」
耳元で囁く絢音の吐息がかかり、
身体がゾクリと鳥肌を立てる。
「気持ちいいんでしょ?」
また耳元で囁いた!
身体を離そうとするが、
がっちりと抱きついてきている絢音は
ビクともしない!
「頼む、離れてくれ絢音……っ」
「いや……」
「絢音!」
何とか引き剥がして、座り直した。
「出よう」
自分が限界だ!
「いや」
頑として譲らない絢音はソファーに座って
憮然と僕を見上げる。
「いい加減にしないと本気で怒るぞ」
やがて泣き出してしまった絢音の頭を撫で宥めよう
としたけど、それだけでは身体の震えまで
止められない。
仕方なく僕は絢音を抱きしめた。
絢音も、僕に縋り付くよう泣いている。
もっと強く抱きしめたい……
でも、そんな事をしたら、自分の感情を
抑えられなくなるのが分かる。
昔っからの許嫁か、何だか知らねぇが、
神宮寺晴彦って野朗はピッツバーグでも
ニューヨークでも知らぬ者がいないって程の
女っタラしだ。
そんな野郎と結婚しても、幸せになんかなれっこ
ないなのに!
あの男が必要としているのは、おそらく……
衆議院議員・新庄正隆の後ろ盾だけ。
要は、権力者の子孫なら誰だって構わないのだ。
こんなに近くに……
自分の腕の中に居るのに。
彼女の存在が遠い。
遠すぎて、もっと近くに絢音を感じたくて、
僕は抱きしめる腕に力を込めた。
彼女の身体が痙攣した事で、我に返る。
「少しは落ち着いた?」
僕は声をかけ、身体を離す。
「ごめんなさい、泣いたりして……」
絢音はハンカチで涙を拭いた。
「もう、大丈夫」
そして、僕を見て笑った。
その笑顔に ―― 心臓を直撃された……
「……大地?」
絢音が僕の目じっと見つめる。
僕はその目から、視線が外せない……
絢音は僕を不思議そうに見ている。
駄目だ……見つめ返しては駄目だ。
でも……
恥ずかしくても、怖くても、
必死にアプローチしてくる。
そんな絢音がものすごく愛おしい。
「……エッチしよ? 大地」
そのひと言で、僕のか弱い理性は粉微塵に
ぶっ飛んだ。
男の見栄で、やっぱ初めては横浜とか神戸辺りの
夜景が抜群に綺麗なホテルでしたかったが、
こうも可愛い彼女に煽られたのでは、見栄なんか
どうでもよくなった。
2人とも無我夢中で抱きしめ合い、
深いキスを重ねた。
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