『ギブ・アンド・テイク(Give and take)』

NADIA 川上

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50 ルームツアー? 箱入り娘の暴走

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 藍子は有利の手を引いて意気揚々とホテルの中に入る。


 (どうしよう……耐えられるか? 俺…… いや!耐えなければいけない。部屋を見学して話をするだけだ! そう! 絶対何もしないんだ!)


 ロビーで、部屋の写真を見る藍子に、


「どの部屋にするの?」

「あ、青の部屋がある! これ!」


 嬉しそうに有利を見て笑う。

 青は、有利が一番好きな色……


「了解しました」


 笑いながら写真横のボタンを押した。



 部屋に入ると、


「素敵ぃぃ! 可愛いぃぃ!」


 青と白の壁紙に、『青』を連想させる地球や海。
 天井には青空と夜空が描いてある。

 インテリアはまるで王侯貴族の宮殿のようだ。

 藍子は嬉しそうに部屋の中を探検している。


「ねぇ、来て! 有利」


 初めて会った時は恥ずかしそうに”有利くん”って呼んでいたのに、いつの間にやら呼び捨てだ、と内心苦笑い。


「はいはい」


 バスルームに向かうと、


「大きなお風呂! 2人で浸かったらさぞや気持ちいいでしょうねぇ。一緒に入って確認してみる?」


 藍子が喜々として有利を見た。


「あぁ、面白い冗談だこと、座布団1枚」

「ただのジョークよ。そんなに怒らないで?」


 楽しそうに笑いながら、バスタブの中に湯を入れ始めた。

 あ、あのぉ……言っている事とやってる事、違ってませんか?


「1人、1人交代で入るなら構わないでしょ。いつもの倍は歩いたから汗ばんで気持ち悪いの」


 ああ、そうっすか……

 なんか、もう、強引に耐久マラソンやらされて・そのすぐ後に物凄く世話の焼ける子供のお守りやらされてる気分だよ……。



 次に藍子は、部屋に置いてある物の物色を始め、


「うわぁ……制服がいっぱい! これは?」


 クローゼットの中を見て有利に聞いてくる。

 だからぁ、いちいち俺に聞いてくんなって。


「多分、コスプレ用だな」

「コスプレ? へぇ―― セーラー服とかナース服がある! 先生、往診の時間です! なぁんちゃって」


 楽しそうに制服を当てて有利に見せながら言う。

 う”っ ヤバい……藍子のナース姿チョー似合う!


「楽しい?」

「うん! すごいのねぇ! 私は時代について行ってないわ」


 藍子はナース服をクローゼットに戻しながら笑う。


「何か飲むだろ?」

「飲めるの?」

「ルームサービスがあるから」

「へぇ! やっぱり有利は何でも詳しいのね」

「パンフに書いてあるの!」


 有利がメニューを見始めると、藍子も隣に座って密着して一緒に見始めた!


「……顔、近くない?」

「だって、メニューはひとつしかないでしょ?」


 有利の至近距離で微笑む。

 もぉぉう! 頼むからこれ以上挑発しないで!
 何か企んでいないか?

 フロントに電話をして飲み物を注文すると、


「頼まなくても良かったんじゃない?」

「ん? 何で?」

「自販機があるじゃない! ほら」


 あぁ! それは ――

 藍子は自販機へと向かう。


「これ、なぁに……??」


 アダルトグッズ、大人の玩具専用自販機だよ、藍子さん……。

 有利は今日まで”無知”という事がこれ程までに破壊力抜群だとは、思っていなかった。

 見るからに清廉潔白な乙女の藍子が、むき出しの好奇心を大人の玩具にぶつける様(さま)は、下賤な男の欲情を”コレでもか”と言わんばかりに刺激してくれる。


「何? この形? え? これは何に使うの?」


 驚いた顔で有利を見返す。


「アダルトグッズだよ」

「ふ~ん ―― 例えばどうやって使うの?」

「それは……知らなくて良い」

「教えてよ。知ってるんでしょ?」


 藍子は少し口をとがらせて拗ねたよう有利を見る。


「これで……その、色々なプレイをするんだよ」


 そう、親父とお袋が最近ハマっているグッズ達 ――

 実物なんて、今更珍しくもないが……そう言えば、我が親はこんなのを使ってエッチしたんだよなぁ。

  
「プレイ、って、例えばどんな?」

「そ、それは……」


 藍子が有利を見てる。
 あ、俺の腕を触ってきた!
 絶対に何か企んでる!
 その手には乗らないぞ!

 大きく息を吐いて気持ちを切り替え、藍子の肩を抱いて戸口へ向かった。


「中は見たし、もう、気は済んだろ。出よう」

「……有利? 怒った? 私がとんでもなくわがままばかり言うもんだから、怒った?」

「いいや、全然」

「うそ」

「怒ってない。俺も結構楽しかったし。でもラブホは十分だ。2度と入らないからな?」

「はい……」


 すっかり意気消沈してしまった藍子を慰めようと、キスしようとした時、インターホンが鳴った。

 あー! ルームサービス頼んでたのすっかり忘れてた。 


「出るのはお茶してからね」

「…………」


 飲み物を受け取ってソファーに向かうと、藍子の姿が室内にない。

 あれっ?


「有利! 来て!」


 バスルームの方から声がする。


「どうした?」


 飲み物をテーブルに置いて向かうと ――


「どぉーお?」


 こ、こいつ……。

 セーラー服に着替えた藍子がこちらへ背中を向け立っていた。

 床に散乱している、藍子が脱いだ衣服……こんな制服姿なら、ツイッターとかインスタとかでも見慣れてるハズなのに、場所と状況が特異だからか?

 今の藍子は妙に艶めかしくて……


「な ―― 何してんだ?!」

「え? 着てみようと思って。だって星蘭の制服ってブレザーでしょ。1度こんなの着てみたいって思ってたの」


 だからって何故今なんだ?!

 それに、そのコスプレ用セーラー服は背中の部分に何故かファスナーがついていて、藍子はそれを俺に上げてとせがむのだ。


「ほら、早く上げて!」

「え? し、しかし……」

「ほらっ、早くぅ」


 彼女に急かされ、仕方なくファスナーを上げようと手を伸ばすが、ブラのホックが見える!

 そのホックを外せと、女神様はおっしゃるのですか?


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