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本章

同窓会 ②

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 ホントは、あのままずっと告るつもりはなかった

 なのに! お節介焼きのあつしが、俺の意中の彼を
 放課後・校舎裏の空き地に呼び出してしまって……

 案の定、彼からは”ごめんなさい”とお詫びされ、


「ほんとにごめんね。べ、別にキミが嫌いとか言う
 ワケじゃないんだ。僕……」

「あ、いいよ いいよ。気にしないでぇ。ダメ元で
 言っただけだから」

「……キミ、口は固そうだから思い切って言っちゃう
 けど……」


  (え ―― 思い切って、って何を?)


 やおら彼は後方の非常口へ向かって
  『たっちゃん』と明るい声で呼びかけた。
 と、その非常口から、学年いちのツッパリと
 言われている男子が出て来て、彼に歩み寄り
 当たり前って感じで彼の隣へ止まってその腰へ
 手を回した。


  (ちょ、ちょっと待って……コレってもしや)


「僕、**達也と付き合ってるんだ」


  (あー、やっぱりぃ~)


「お前、1年の小鳥遊だったな。**に告った勇気は
 認めてやる。が、**は俺のもんだ。この先こいつに
 ちょっとでも妙な真似しやがったら、この俺が許さ
 ねぇ。分かったか」


 そう、ドスの利いた声で宣言した**に
 俺はただ黙って頷くしか出来なかった。


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「……」

「お前さ、根性無さ過ぎ。
 あの時のデートにしたって、いっそ俺が断れば
 よかったかなと思ってる」

「ちょっと待って ―― そこまで知ってるなら
 土田先輩がゲイだったって事も知ってたんじゃ
 ない?」

「…………」

「やっぱりね~」

「まさかお前、告ったのか?」

「悪い?」

「い、いや、別に悪かぁねぇけど」


 羽柴先輩と俺が何やら真顔で話し込んでいるのを見た
 連中がやんやと騒ぎ出す ――


「おいおい、14年前の噂のカップルが今また
 恋再燃かぁ?」

「同窓会で不倫しちゃうの多いみたいだぞー」


  ”不倫”って何だよ……俺らはまだ2人とも独身、
  ……だよね?


「ちょっと! 先輩と俺は何もなかったし。俺にも
 先輩にも他に好きな人いたんだからね」

「えっ? そうなの? 2人は付き合ってたんじゃ
 なかったの?」

「残念でした。俺は他に意中の人がおったし、
 先輩だって……ね?」

「そうなのか? キヨは他に彼いたのか?
 初耳だぞ」

「んなもんいないよ。俺、もてなかったし」

「だから今ね、先輩に説教してるの。
 って事だからもう少し2人だけにさせてね」

「はぃはぃ ――」



「―― 結婚は、しなかったの?」

「したよ。でも、カミさんには先立たれた」

「あ ―― 俺ってばごめん」

「いいよ。もう、5年も前の事だ。今はお転婆娘の
 子育てに右往左往してる」

「へぇー、先輩が子育てかぁ。何か想像つかないや」

「そっかぁ? りつは?」

「え?」

「だから、子供。あ、ってか、結婚はしたのか?」

「あ、う、うん……ま、色々とあって、今はフリー」

「なんだぁ、俺ら似たような境遇なんじゃん。
 で、子供は?」

「出来てたらこんな萎れてないよ」

「そりゃあそうだ……」

「え、えっと ―― 今日は思いっきり飲も」

「お ―― おぅ、そうだな」


  先輩の空のグラスへビールを注ぎながら、
  高鳴る鼓動を必死に抑える律だった。
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