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扱いにくい、年ごろ
しおりを挟むあれほど、
当分の間外泊は慎むよう言ったのに……
めぐの奴、とうとう昨夜は電話のひとつも
かけてくる事なく、未だ帰ってこない。
つまり、無断外泊だ。
笙野課長や詩音に相談したら、
今はあまり小煩くしない方がいいと、
言われたけど。
何といってもめぐみはまだ14才。
物事の善悪くらいは自分で判断出来ると思うけど、
これが男絡みだとしたら……。
若気の至り、暴走は何よりも怖い。
和巴は自分の過去の経験から、
身をもって実感しているから余計心配だった。
和巴は今日のスケジュールを確認した上で、
詩音へ”午前休”の電話連絡を入れ、
マンションの1階エントランスホールでめぐみを
待ちかまえている。
昨夜から幾度となく送り続けていたLINEで
さっきやっと”これから帰る”との返事が
きたのだ。
こないだ学校帰りに、町でめぐみと一緒にいる所を
チラリと見かけた30代前半位の男。
きっと今もその男と一緒にいるんだ。
今日こそは話をつけようと、
和巴は覚悟を決めていた。
場合によっては、今後一切めぐみに近づかないよう
釘を刺しておいた方がいいかもしれない。
風で吹き下ろされた邪魔な前髪を、
イライラしながら払う。
気を紛らわすのに一服しようか? と
自販機に向かおうとした時、エンジンの音がした。
振り返ると、
深紅のポルシェが横付けされ停まった。
スポーツカータイプの派手な車だ。
スモークガラスなので、中は見えない。
運転席から長身の男が出てきた。
そのまま助手席に回りドアを開けると、
エスコートするかのように手を差し伸べる。
出てきたのは、めぐみだった。
間違いない、男はこの前見かけた奴だ。
めぐみは、これまで見せたことのないような
はにかんだ笑顔で男を見上げている。
エスコートされながらこちらに向かってくると、
和巴を見つけて顔色が変わる。
「おはよう、めぐ。朝帰り、いや、昼帰りとは
やってくれるね」
「あ……ごめん、なさい、和ちゃ……けど、がっこは
休みだし ――」
めぐみの弁解を聞くのは後回しにして、
和巴は男の方に向き直った。
「私はめぐみの保護者代理で小鳥遊といいます。
失礼ですがあなたはどなたですか?」
「失礼、私はこういう者です ――」
胸ポケットから名刺を一枚取り出すと、
和巴に手渡した。
―― 株式会社 大河内興行
代表取締役社長 倉本 孝
「もういいでしょ? 倉本さんは社長さんだから
物凄く忙しいの」
和巴がまとっている不穏な雰囲気を感じ取ってか、
めぐみが場を取り繕おうとしたが、和巴は引かない
ここでうやむやにしてしまうわけにはいかなかった
この”倉本”という男とめぐみの関係をきちんと
問いたださなければ。
「少し、お話し伺ってもよろしいですよね?」
「和姉っ」
「いいですよ。めぐ、俺は大丈夫だから」
刺すような鋭い切れ長の目が、
めぐみに向けられるときは別人のように甘い。
いったい何者なのか?
引き止めておきながら、
和巴は言いようのない不安に襲われるのだった。
数十分後 ――
部屋に戻っためぐみは早速和巴へ食って掛かった。
「―― 酷い! 初対面の倉本さんにあんな
プライベートな事まで根掘り葉掘り聞くなんて!
いくら何でも失礼だわっ! 非常識よ」」
「保護者に無断で未成年の中学生を無断外泊
させる方が、よっぽど非常識だと思うけど」
「それはさっき倉本さんだって、きちんと謝って
くれたでしょ」
「……あいつ、どう見たって堅気じゃないよね?
今後2度と会わないで」
「何よ、そーゆう自分だって、大学の時付き合ってたの
ヤクザの幹部じゃない!
私が何も知らないと思ってるの?」
はぁっ??
も、もしかしたらそれ……匡煌さんのこと?
匡煌さん……あなた、
とんでもない勘違いされてるよ。
ま、グリズリーみたいな巨漢で鋭い眼光の見た目は
暴力団幹部に見えなくもないけど。
「それ、もしかしたら、
あの倉本って野郎に聞いた?」
普通の中坊がちょっと調べたくらいで
暴力団幹部の顔が分かるハズはない。
「だったらどうだっての?!
言っとくけど私、彼と別れる気はないから」
「めぐみっ!」
パタ パタ パタ ―― バタン!
めぐみは自室に引きこもった。
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