続・7年目の本気~岐路

NADIA 川上

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予感

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 池谷先輩のおかげであの倉本って男が
 どんな奴か?
 大方の情報は得られたけど。
   
 あ~ぁ、先輩、相変わらず痛いとこ
 突いてくるよなぁ……。
   
 1人、ゴチて、自動改札機を通った時、
 マナーモードのスマホがポケットの中で 
 ブルブルブル ――って振動した。
   
 ディスプレイの発信者名は ”速水”
   
 それを見て、
 まだメモリーを削除してなかった事に気が付いた。
   
 通路の端に寄って壁にもたれつつ、
 まだ鳴り続けているスマホをじっと凝視する。
   
 …………  …………
   
 !!それにしても、しつこいっ。
   
 たま~に、忘れた頃かけてきても、
 すぐ切ってしまうのに、
 今夜に限って切れる事なく鳴り続けている。 
 
 このまま放置してやろうか、
 なんて考えも浮かんだけど。
   
 もしかしたら、
 何か急用があってかけて来たのかも、
 って思いもあって……ポチッ ―― 
 通話ボタンを押してしもうた。

   
「……」

『……』

「……そっちからかけて来たんやから、
 ウンとかスンとか言いなさいよ」

『あ、いや……和巴、わしの事なんぞ忘れてしもうた
 思って……』

「いっそ忘れられたらなんぼ楽やったか……
 急用ないなら切るでぇ」

『あぁ、待ってぇな。
 実は俺、出向の内示受けたんや』

「捨てた女にわざわざ電話で出世自慢?」

『捨てた?! 捨てられたんは、俺の方やろ』

「はぁ~~っ……それで、ご用件は何ですのん?」

『内示受けたん ―― 東京地検なんだわ』

「!! へぇ~、えらい出世やねぇ」

『なんや、ごっつ棘のある言い方やな』

「……」
 
『でも、地検には行かへん』

「ふ~ん、行かへ ―― えぇっ?! どうしてっ。
 あの口煩い小母さんがよう許してくれたな」
 
『母さんだけにじゃなく、親父からも勘当されたよ』


 深刻な問題を話してる割りに、
 タロの口調は楽観的だ。
 
 
『で、いい機会やから弁護士になったろうと思ってな。
 今度の週末そっちに行く事にした』
 
「……そっか。ほんなら、こっちに来たら一緒に
 飲も。利沙もあつしも幸作もこっちにおるんよ」
 
『へぇ~、なつかしな。ほな、その時また』
   
「あ、タロちゃん ――」

『なん?』

「……電話くれておりがと」           
   
『ん。こっちこそおおきに。おやすみ』



 ”タロちゃん”こと、
 速水太朗(はやみ たろう)は、
 京大・法科大学院から法務省へ入省したエリート。
   
 だけど中学時代私にちょっかい出して、
 皓さんに省かれたボーイフレンドのひとり。

 生来、気の弱い彼は皓さんからちょっと強く
 意見されただけですっかり逃げ腰になってしまい。

 グループ交際から発展した、
 月に2回程度しか会えないデートも
 だんだん素っ気ないものになっていき。
   
 お互い違う高校へ進学したと同時に、
 付き合いも自然消滅した
   
 あいつとはあの時、終わったと思ったけど。
 
 めぐみとあの倉本って男が微妙な関係になってる今、
 タロが転職して弁護士になるなんて……。
 
 彼との接点も多くなるような、ほぼ確信に近い、
 そんな予感がしてる。
 

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