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予感
しおりを挟む池谷先輩のおかげであの倉本って男が
どんな奴か?
大方の情報は得られたけど。
あ~ぁ、先輩、相変わらず痛いとこ
突いてくるよなぁ……。
1人、ゴチて、自動改札機を通った時、
マナーモードのスマホがポケットの中で
ブルブルブル ――って振動した。
ディスプレイの発信者名は ”速水”
それを見て、
まだメモリーを削除してなかった事に気が付いた。
通路の端に寄って壁にもたれつつ、
まだ鳴り続けているスマホをじっと凝視する。
………… …………
!!それにしても、しつこいっ。
たま~に、忘れた頃かけてきても、
すぐ切ってしまうのに、
今夜に限って切れる事なく鳴り続けている。
このまま放置してやろうか、
なんて考えも浮かんだけど。
もしかしたら、
何か急用があってかけて来たのかも、
って思いもあって……ポチッ ――
通話ボタンを押してしもうた。
「……」
『……』
「……そっちからかけて来たんやから、
ウンとかスンとか言いなさいよ」
『あ、いや……和巴、わしの事なんぞ忘れてしもうた
思って……』
「いっそ忘れられたらなんぼ楽やったか……
急用ないなら切るでぇ」
『あぁ、待ってぇな。
実は俺、出向の内示受けたんや』
「捨てた女にわざわざ電話で出世自慢?」
『捨てた?! 捨てられたんは、俺の方やろ』
「はぁ~~っ……それで、ご用件は何ですのん?」
『内示受けたん ―― 東京地検なんだわ』
「!! へぇ~、えらい出世やねぇ」
『なんや、ごっつ棘のある言い方やな』
「……」
『でも、地検には行かへん』
「ふ~ん、行かへ ―― えぇっ?! どうしてっ。
あの口煩い小母さんがよう許してくれたな」
『母さんだけにじゃなく、親父からも勘当されたよ』
深刻な問題を話してる割りに、
タロの口調は楽観的だ。
『で、いい機会やから弁護士になったろうと思ってな。
今度の週末そっちに行く事にした』
「……そっか。ほんなら、こっちに来たら一緒に
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『へぇ~、なつかしな。ほな、その時また』
「あ、タロちゃん ――」
『なん?』
「……電話くれておりがと」
『ん。こっちこそおおきに。おやすみ』
”タロちゃん”こと、
速水太朗(はやみ たろう)は、
京大・法科大学院から法務省へ入省したエリート。
だけど中学時代私にちょっかい出して、
皓さんに省かれたボーイフレンドのひとり。
生来、気の弱い彼は皓さんからちょっと強く
意見されただけですっかり逃げ腰になってしまい。
グループ交際から発展した、
月に2回程度しか会えないデートも
だんだん素っ気ないものになっていき。
お互い違う高校へ進学したと同時に、
付き合いも自然消滅した
あいつとはあの時、終わったと思ったけど。
めぐみとあの倉本って男が微妙な関係になってる今、
タロが転職して弁護士になるなんて……。
彼との接点も多くなるような、ほぼ確信に近い、
そんな予感がしてる。
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