ちょい悪オヤジに恋をした

NADIA 川上

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ストーカー、一歩手前

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 綱吉以外のメンバーはいつも以上の疲労感に
 見舞われていた事に改めて気付く。


「あー、なんか今日はいつもより疲れた……」
「右に同じく……」


 すっかり虚脱し、片隅のソファーへ崩れるよう座った
 4人と違い。

 綱吉は他4人の疲労などどこ吹く風で、
 控え室のドアを少しだけ開けて隙間から廊下を
 覗き見ていた。


「何してんだよ」


 その不審な後ろ姿に、
 お茶を飲みながら亮は聞いたが返答はなし。

 なくても大方の予想はつくので、
 3人はやれやれと帰り支度を整え始めた。

 綱吉は手嶌が控え室に入るのを見届けるため、
 最後にもう1度だけその姿が見たい、
 と目をギラギラさせて待ち構えているのだ。

 隙間からだが。


「おっ! きた きた きた ――っ!」


 興奮してその場で小さく足踏みしている
 チビの後ろ姿を、
 4人は物珍しいモノでも見るような目で見守る。


 所属事務所はスキャンダルなど御免とばかりに
 恋愛ごとには煩いが、綱吉は立場的に関係なく、
 言い寄られて気に入れば簡単にお持ち帰りするような
 タイプ、と思われていて。

 それも、今まで取りだたされてきた恋愛ごとの
 スキャンダルはほとんどが映画やテレビドラマの
 宣伝の一環みたいな感じで作り上げられたモノだった
 から。

 綱吉がほんの数回で見切りを付けたとしても
 相手もそして相手の所属事務所も何も文句を
 言って来なかった。

 だからと言って綱吉自身が性に無節操なナンパ野郎
 なワケではない。

 恋は今まで、仕事でもプライベートでも 
 来るもの拒まず去るもの追わず、でやってきた。
 
 本番中にも係らず、特定の人物に気を取られ、
 恥ずかしげもなくその人物を可愛いと叫び、
 気持ち悪いほど目で追い続け、
 大事な現場で誰が見ているか分からないのに
 話し掛けて興奮し、公私混同で仕事を終えると……
 今は控室で、ストーカーの如く覗き+出待ちまで
 敢行中である。

 トップアイドルらしからぬ後ろ姿に、
 あつしは膝カックンをしてやった。
 
 
「何すんだよぉ」

「出入り口塞ぐな。通れねぇ」

「あ、ごめん」


 ドアを開きぞろぞろ出ていくメンバー。
 
 最後のジュンが話しかけてきた。
 
 
「あ、ご飯はどうすんのー?」

「適当に済ませる」

「あ、っそ。でも門限やぶりはすんなよ。
 寮長の監視がきつくなると迷惑だ」
 
「分かってるって」

「お疲れー」



『絶対にメアドだけでもGETしねーと!』


 充電だけ確認して、
 いつでもスマホを取り出せるようにポケットに入れ、
 仮装から私服に着替える間も惜しくてドレスのまま、
 内心ドキドキが止まらないが至って平静を装い
 控え室から出た。
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