硝煙

ドルドレオン

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『雨と硝煙の街』
第七章:潜伏する影

午後10時。
街は表向きに灯りをつけ、健全なふりをしていたが、裏ではいつも通り血と金が動いていた。
俺が向かったのは、西の外れにあるボロ映画館《セントラル》。
いまじゃ誰も映画なんて観に来やしない。
ここは、情報屋《八代》の根城だった。

スクリーンは消え、映写機は埃をかぶり、座席には代わりに銃と秘密が置かれている。

「……久しぶりだな、神崎。」

暗がりの中から聞こえる声。
八代は変わらない。
グラサンに、キツすぎる香水、そして芝居がかった口調。

「“K-0”の名で動いてる男を追ってる。黒崎礼司。3年前に死んだはずの奴だ。」

「おいおい。死んだはずの亡霊に、また関わるのかよ。」
八代は苦笑した。「あいつは“死んだ”ことになってるが……火災事故の直前、ある民間警備企業の極秘名簿に名前があった。」

「企業名は?」

「《INNOVA》」
一拍おいて、八代は低く続けた。「“日本に本拠地がない企業”さ。情報も、登記も、全て海外。だがな——」

八代は椅子の下から一枚の紙を取り出した。
その紙には、いくつかの名前が並んでいた。
政治家、医師、元自衛官、企業のCEO……そしてその最後に。

神崎 沙耶(かんざき・さや)
《元・福祉心理士/特別支援センター》
※内部通報後、死亡

俺の手が止まった。
姉の名前。
消えたはずの記録が、ここにあった。

「……どういうことだ、八代。」

「つまり、お前の姉はただの“犠牲者”じゃなかった。彼女はこの《INNOVA》の実験情報を掴み、告発しようとしてた。……だが、止められた。直接的にな。」

背筋が冷える。
時間が巻き戻るような感覚。
あのときの夜、血の匂いと、叫び声と、俺の無力。

「黒崎は、お前の姉を“処理”した側の人間だった。」

その言葉で、俺の中の何かが確実に壊れた。

「……八代。この情報、他に誰かに話したか?」

「お前だけだ。」

「今すぐ、この記録を焼け。バックアップも全部。」

「……わかった。」

俺は立ち上がった。
黒崎礼司。K-0。
ただの亡霊じゃない。
俺の人生そのものを歪めた、宿命の名前だ。

俺の中で、次の行動はもう決まっていた。
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