『「嘘つき令嬢」と婚約破棄された私、真実しか言えない「呪いの首輪」のせいで聖女だとバレて冷徹公爵に執着されています』

恋守あい

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「……ああ、今度こそ、太陽の光に焼かれて消滅したいですわ……」


翌朝、私は天蓋付きのベッドの中で、毛布を頭から被って芋虫のように丸まっていました。


昨日の客間での出来事。
鍵までかけて、アッシュ様にあんな……あんな、とろけるような時間を過ごさせられるなんて!
しかも、最後には自分から「愛して」なんて、はしたないにも程があるおねだりをしてしまうなんて!


(クロエル・ラ・ピエリス、一生の不覚ですわ! 私の『孤高の悪女』としてのプライドは、あの方の指先一つで霧散してしまったのですわ……!)


顔が火が出るほど熱い。
思い出すだけで、シーツをバタバタと蹴り飛ばしたくなります。


「お嬢様、いつまで毛布と格闘していらっしゃるのですか。旦那様がお待ちですよ」


リタがクスクスと笑いながら、容赦なくカーテンを開けました。
眩しい朝日が、私の「敗北の象徴」である赤ら顔を無慈悲に照らし出します。


「嫌ですわ、リタ! 私は今日一日、この毛布という名のシェルターに引きこもるんですの。アッシュ様には『彼女は昨日の羞恥心で蒸発しました』と伝えてちょうだい!」


「まぁ。そんな嘘を仰っても、この首輪がある限り無駄だって、一番よくご存知なのはお嬢様でしょうに」


リタが私の首元のチョーカーを指差しました。
忌々しくも美しい紫の宝石が、キラリと意地悪に輝いた気がしました。


「……っ。とにかく、私は……っ」


(私は、あの方の顔をまともに見る自信がありませんわ!)


「……私は、……あの方の顔を早く拝みたくて、心臓が口から飛び出しそうですわ! 昨日の続きをされるんじゃないかと期待して、腰のあたりがソワソワして止まりませんのよ!!」


「「…………」」


部屋に、絶妙な沈黙が流れました。
リタは「あらあら」と頬を染めて顔を背け、私は絶望のあまりベッドに突っ伏しました。


(あああああ! 私の下半身の本音まで暴露するなんて、この首輪、少しは遠慮というものを知りなさいな!!)


「……そこまで期待されているのなら、応えないわけにはいかないな」


聞き慣れた、低く心地よい、けれど今は「逃げ出したいほど甘い」声。
振り返ると、扉の横にアッシュ様が立っていました。
いつからそこに!?


「ア、アッシュ様……! 不法侵入ですわ! ここは淑女の寝室ですのよ!」


「婚約者の部屋に入るのが、どうして不法侵入になる。それに、君の『期待している』という真実を聞いて、黙っていられるほど私は忍耐強くない」


アッシュ様が、ゆっくりとベッドサイドまで歩み寄ってきました。
朝の光を浴びた銀髪が眩しすぎて、直視できません。


「……っ。……勘違いしないでくださいまし! 今の言葉は……っ」


(今の言葉は、寝ぼけていただけですわ! 私はあなたなんて、石ころと同じくらいにしか思っていませんの!)


――ググッ。


「……今の言葉は、……私の魂が求めている究極の願望ですわ! アッシュ様、あなた、どうして朝からそんなに格好いいんですの? その乱れた髪も、少し開いたシャツの襟元も、私を誘惑するために計算し尽くされているんですわね!? ああ、好きすぎて、今すぐあなたに抱きつきたい……!!」


「…………。おいで、クロエル」


アッシュ様が、優しく両手を広げました。
その仕草があまりに完璧で、私の防衛本能が音を立てて崩壊します。


「……っ……。……ひ、……ひぃい……っ!」


私は、まるで磁石に吸い寄せられる鉄屑(てつくず)のように、ふらふらとベッドから這い出し、あの方の胸の中に飛び込んでしまいました。
広い胸板の厚みと、微かな石鹸の香りに、全身の力が抜けていきます。


「……よしよし。素直でいい子だ」


アッシュ様が私の背中を優しく撫で、耳元で低く囁きました。


「……クロエル。君がどれだけ『悪女』を演じようとしても、私には筒抜けだ。……私の前では、ただの可愛い女でいろ」


「……う、うう……。……悔しいですわ……。……私は……っ」


(私は、あなたを困らせる悪女になりたかったのに……)


「……私は、……あなたの手の中で転がされるのが、たまらなく心地よいと感じてしまう、ダメな女ですわ……。アッシュ様、私、もうあなたなしでは、呼吸の仕方も忘れてしまいそうですのよ……!!」


「…………。私もだ」


アッシュ様が、私の後頭部を優しく引き寄せ、額をこつんと合わせました。


「……君のその、暴走するほどの純粋な愛に、私は毎日救われている。……ありがとう、クロエル」


(……あ、あ、あああ……。アッシュ様が、聖母のような笑みを浮かべていらっしゃる……!)


私の「嘘」という名の盾は、あの方の「全肯定」という名の矛によって、粉々に打ち砕かれてしまったのでした。


「……さて。朝食の後は、街へ出るぞ。君の『ホワイト改革』のおかげで、街の者たちが君に感謝の品を届けたいと騒いでいてな」


「……えっ!? 感謝の品!? ……嫌ですわ! 私は彼らから恨まれるはずだったのに!!」


(あああああ! 私の悪事(?)が、またしても徳を積む結果になってしまいましたわーーー!!)


私の没落への道は、今や王道も驚くほどの「聖女街道」に舗装され、アッシュ様の深い溺愛という名のガードレールにガチガチに守られていくのでした。
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