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「……ふーっ。リタ、気合を入れなさい。今日こそ、私は公爵家の縁者を震え上がらせる『強欲な悪女』として、その名を不動のものにしますわ!」
私は朝の光を浴びながら、鏡に向かって不敵な笑みを浮かべました。
婚礼準備もいよいよ大詰め。今日は、親族や他国の貴賓から寄せられる「お祝い品」のリクエストを決める日です。
普通なら「お気遣いなく」と謙遜するところですが、私は違いますわ。
(ここで、誰もが二の足を踏むような、法外で、かつ全く実用性のない『ゴミの山』を要求してやるんですの!)
そうすれば、「公爵夫人は、とんでもない物欲の化け物だ」という噂が国中に広まるはず。
アッシュ様だって、親族から白い目で見られれば、私を離したくなるに違いありませんわ!
「お嬢様、またその『悪い子』のお顔ですね。でも、今日は旦那様だけでなく、贈り物を取りまとめる事務官の方もいらしていますから、お手柔らかに……」
リタが心配そうに言いますが、お手柔らかになんていたしませんわ!
私は鼻息荒く、リストを手にしたアッシュ様と事務官が待つサロンへと向かいました。
そこには、アッシュ様が山のようなカタログを広げて待っていました。
「おはよう、クロエル。さあ、君が欲しいものを何でも言ってくれ。北の最果ての氷晶石でも、南の国の幻の真珠でも、私が責任を持って手配しよう」
アッシュ様は、私のために世界を買い取る準備ができているような、恐ろしいほどに甘い瞳で私を迎えました。
「あら、アッシュ様。ご機嫌よう。……ふん、その言葉、後悔させて差し上げますわ! 事務官さん、筆を執りなさい! 私が欲しいのは、他国の王族から贈られる、巨大で、かつ純金製の『私の自画像スタチュー』百体ですわ!」
(よしっ、掴みは完璧ですわ! 自分の金の像を百体も並べるなんて、傲慢の極み! しかも王族にそんなものを注文させるなんて、外交問題に発展しかねない悪手ですわ!)
事務官が、驚愕のあまりペンを落としました。
アッシュ様の眉が、ピクリと動きます。
「……純金製の、君のスタチューを、百体……か」
「ええ、そうですわ! 私は自分の美しさを永遠に残したいんですの! さあ、今すぐ……っ」
喉の奥が、カッと熱くなりました。
首元のチョーカーが、窓から差し込む陽光を受けて、かつてないほど激しく紫色の光を放ちます。
「……さあ、今すぐ……っ、……なんて、本当は、他国の優れた職人たちに、その国の伝統技術を駆使した『公共用の時計塔』を百基、我が国の貧しい村々に建てさせてちょうだい!! 像なんていりませんわ! 私の婚約を記念して、これまで時間が分からず不便な思いをしていた領民たちが、規則正しい生活を送れるようにしてあげたいんですのよ!!」
「「「…………っ!!」」」
サロン全体が、神聖な沈黙に包まれました。
(あああああ! また! また、いじらしいほどに利他的な本音を!! なんで私は、自分の像を建てる代わりに公共事業を推進しているのよ!!)
事務官が、震える手でペンを拾い上げました。
その瞳には、一人の官吏としての深い感動の涙が浮かんでいます。
「……素晴らしい。なんという、なんという慈悲の深さ! 『自分の名誉よりも領民の利便性』……。お嬢様、あなたは真の聖女だ! 紛争の絶えなかった隣国に時計塔の製作を依頼すれば、技術交流による和平の足がかりにもなります……!」
「違いますわ、事務官さん! 私は自分の像が見たいんですの! 今の言葉は……っ」
(本当は、もっとこう、無意味な……っ!)
――ググッ。
「……本当は、もっとこう、……無意味な贅沢をするよりも、あなたが私を愛してくれたこの喜びを、国中の人々と分かち合いたいんですのよ!! アッシュ様、私、二人の幸せが誰かの助けになるなら、それが一番の贈り物だと思っているんですのよ!!」
私は、自分の口を両手で力いっぱい塞ぎました。
ですが、もう遅いのです。
アッシュ様が、ソファから立ち上がり、私の前にゆっくりと歩み寄ってきました。
その瞳には、もはや崇拝に近いほどの、深い、深い愛の色が宿っています。
「……クロエル。君という女性は、どこまで私を……いや、この国を救えば気が済むんだ」
アッシュ様が私の手を優しく取り、その甲に深く、誓いのような口づけを落としました。
「……時計塔か。いいだろう。世界中の名工を呼び寄せ、君の愛が時を刻む街を百作らせよう。……君が望むなら、私の全財産を注ぎ込んで、この国を『君の優しさ』で満たしてやる」
「あ、アッシュ様……。違いますの。私はただ、嫌な女になりたくて……っ」
(嫌な女になって、あなたを困らせたくて……っ!)
――ググッ。
「……嫌な女になって……っ、……なんて、本当は、あなたに『いい子だね』って頭を撫でられるのが、世界で一番のご褒美なんですのよ!! ああ、アッシュ様! 事務官さんの前で恥ずかしい本音を言わせないでくださいまし……!!」
「…………っ、……よし。事務官、予算は十倍だ。時計塔だけでなく、学校と診療所もセットにしろ。……すべては、私の愛しい婚約者、クロエルの名において実行する」
「ははっ! 畏まりました!」
事務官は、清々しい笑顔で走り去っていきました。
(終わりましたわ……。私の『強欲な要求』、またしても『伝説的な慈善事業』に昇華されてしまいましたわーーー!!)
私の悪女への返り咲きは、またしても華麗な「博愛」によって阻止され。
代償として、アッシュ様という名の「甘すぎる溺愛の嵐」に、その身を委ねることになったのでした。
私は朝の光を浴びながら、鏡に向かって不敵な笑みを浮かべました。
婚礼準備もいよいよ大詰め。今日は、親族や他国の貴賓から寄せられる「お祝い品」のリクエストを決める日です。
普通なら「お気遣いなく」と謙遜するところですが、私は違いますわ。
(ここで、誰もが二の足を踏むような、法外で、かつ全く実用性のない『ゴミの山』を要求してやるんですの!)
そうすれば、「公爵夫人は、とんでもない物欲の化け物だ」という噂が国中に広まるはず。
アッシュ様だって、親族から白い目で見られれば、私を離したくなるに違いありませんわ!
「お嬢様、またその『悪い子』のお顔ですね。でも、今日は旦那様だけでなく、贈り物を取りまとめる事務官の方もいらしていますから、お手柔らかに……」
リタが心配そうに言いますが、お手柔らかになんていたしませんわ!
私は鼻息荒く、リストを手にしたアッシュ様と事務官が待つサロンへと向かいました。
そこには、アッシュ様が山のようなカタログを広げて待っていました。
「おはよう、クロエル。さあ、君が欲しいものを何でも言ってくれ。北の最果ての氷晶石でも、南の国の幻の真珠でも、私が責任を持って手配しよう」
アッシュ様は、私のために世界を買い取る準備ができているような、恐ろしいほどに甘い瞳で私を迎えました。
「あら、アッシュ様。ご機嫌よう。……ふん、その言葉、後悔させて差し上げますわ! 事務官さん、筆を執りなさい! 私が欲しいのは、他国の王族から贈られる、巨大で、かつ純金製の『私の自画像スタチュー』百体ですわ!」
(よしっ、掴みは完璧ですわ! 自分の金の像を百体も並べるなんて、傲慢の極み! しかも王族にそんなものを注文させるなんて、外交問題に発展しかねない悪手ですわ!)
事務官が、驚愕のあまりペンを落としました。
アッシュ様の眉が、ピクリと動きます。
「……純金製の、君のスタチューを、百体……か」
「ええ、そうですわ! 私は自分の美しさを永遠に残したいんですの! さあ、今すぐ……っ」
喉の奥が、カッと熱くなりました。
首元のチョーカーが、窓から差し込む陽光を受けて、かつてないほど激しく紫色の光を放ちます。
「……さあ、今すぐ……っ、……なんて、本当は、他国の優れた職人たちに、その国の伝統技術を駆使した『公共用の時計塔』を百基、我が国の貧しい村々に建てさせてちょうだい!! 像なんていりませんわ! 私の婚約を記念して、これまで時間が分からず不便な思いをしていた領民たちが、規則正しい生活を送れるようにしてあげたいんですのよ!!」
「「「…………っ!!」」」
サロン全体が、神聖な沈黙に包まれました。
(あああああ! また! また、いじらしいほどに利他的な本音を!! なんで私は、自分の像を建てる代わりに公共事業を推進しているのよ!!)
事務官が、震える手でペンを拾い上げました。
その瞳には、一人の官吏としての深い感動の涙が浮かんでいます。
「……素晴らしい。なんという、なんという慈悲の深さ! 『自分の名誉よりも領民の利便性』……。お嬢様、あなたは真の聖女だ! 紛争の絶えなかった隣国に時計塔の製作を依頼すれば、技術交流による和平の足がかりにもなります……!」
「違いますわ、事務官さん! 私は自分の像が見たいんですの! 今の言葉は……っ」
(本当は、もっとこう、無意味な……っ!)
――ググッ。
「……本当は、もっとこう、……無意味な贅沢をするよりも、あなたが私を愛してくれたこの喜びを、国中の人々と分かち合いたいんですのよ!! アッシュ様、私、二人の幸せが誰かの助けになるなら、それが一番の贈り物だと思っているんですのよ!!」
私は、自分の口を両手で力いっぱい塞ぎました。
ですが、もう遅いのです。
アッシュ様が、ソファから立ち上がり、私の前にゆっくりと歩み寄ってきました。
その瞳には、もはや崇拝に近いほどの、深い、深い愛の色が宿っています。
「……クロエル。君という女性は、どこまで私を……いや、この国を救えば気が済むんだ」
アッシュ様が私の手を優しく取り、その甲に深く、誓いのような口づけを落としました。
「……時計塔か。いいだろう。世界中の名工を呼び寄せ、君の愛が時を刻む街を百作らせよう。……君が望むなら、私の全財産を注ぎ込んで、この国を『君の優しさ』で満たしてやる」
「あ、アッシュ様……。違いますの。私はただ、嫌な女になりたくて……っ」
(嫌な女になって、あなたを困らせたくて……っ!)
――ググッ。
「……嫌な女になって……っ、……なんて、本当は、あなたに『いい子だね』って頭を撫でられるのが、世界で一番のご褒美なんですのよ!! ああ、アッシュ様! 事務官さんの前で恥ずかしい本音を言わせないでくださいまし……!!」
「…………っ、……よし。事務官、予算は十倍だ。時計塔だけでなく、学校と診療所もセットにしろ。……すべては、私の愛しい婚約者、クロエルの名において実行する」
「ははっ! 畏まりました!」
事務官は、清々しい笑顔で走り去っていきました。
(終わりましたわ……。私の『強欲な要求』、またしても『伝説的な慈善事業』に昇華されてしまいましたわーーー!!)
私の悪女への返り咲きは、またしても華麗な「博愛」によって阻止され。
代償として、アッシュ様という名の「甘すぎる溺愛の嵐」に、その身を委ねることになったのでした。
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