4 / 5
不死者の話。
不死者と猫
しおりを挟む
私は不死である。名前はとうに忘れた。
今日、800年生きてて始めて猫の死を見た。
なんとはなしに猫という生き物が好きだった。近すぎず、遠すぎず。適度な距離で私を見つめるその距離を好んでいた。
飼っていたこともあるが猫は自分の死ぬ姿を見せない。
気づけばいなくなって、私はどこかで彼女の死を想像するのみであった。
今日、道端で車に轢かれた猫を見つけた。
何とか路地まで這ってきていたようだが、もう息が弱かった。
少し眠りにつくかのような面持ちで、ゆっくりと呼吸を止めた。
その瞬間言葉にならない思いが心の底に現れた。
ここ数百年は感情を動かされることなどついぞなかったのに、目の前の見知らぬ生命の終わりを前にして、久方ぶりに心に動きが生まれたのだ。
何故だろう。
長きに渡り、命の終わりなぞ何度も目にしてきた。
壮絶な死や、静かな死、幸せな死も悲しい死などいくつも知っているはずなのに。
その死は、初めて受け入れ難いと感じた。
私は命という観念が希薄だから、他者の死になにか思うことが薄れていっていたのだ。
それが一人寂しく、誰ともさしてかかわることなく死んでいく、野良猫の生を思った時に、きっと自分と重なったからだろう。
私も他者に対してずっと適度な距離を保ってきた関わりすぎず、関わらなさ過ぎず。
その野良猫のような在り方の末路がこれであると初めて見せつけられたからだろう。
きっとこの猫も短いながらも私のような時の歩み方をしていたに違いない。
死ぬ時と眠る時の境目が薄くなり、特に誰が悪いということもない要因で、劇的でも詩的でもない死を迎えるのだ。
久方ぶりに死の感覚を取り戻し、私はゆっくりと再び歩み始めた。
今日、800年生きてて始めて猫の死を見た。
なんとはなしに猫という生き物が好きだった。近すぎず、遠すぎず。適度な距離で私を見つめるその距離を好んでいた。
飼っていたこともあるが猫は自分の死ぬ姿を見せない。
気づけばいなくなって、私はどこかで彼女の死を想像するのみであった。
今日、道端で車に轢かれた猫を見つけた。
何とか路地まで這ってきていたようだが、もう息が弱かった。
少し眠りにつくかのような面持ちで、ゆっくりと呼吸を止めた。
その瞬間言葉にならない思いが心の底に現れた。
ここ数百年は感情を動かされることなどついぞなかったのに、目の前の見知らぬ生命の終わりを前にして、久方ぶりに心に動きが生まれたのだ。
何故だろう。
長きに渡り、命の終わりなぞ何度も目にしてきた。
壮絶な死や、静かな死、幸せな死も悲しい死などいくつも知っているはずなのに。
その死は、初めて受け入れ難いと感じた。
私は命という観念が希薄だから、他者の死になにか思うことが薄れていっていたのだ。
それが一人寂しく、誰ともさしてかかわることなく死んでいく、野良猫の生を思った時に、きっと自分と重なったからだろう。
私も他者に対してずっと適度な距離を保ってきた関わりすぎず、関わらなさ過ぎず。
その野良猫のような在り方の末路がこれであると初めて見せつけられたからだろう。
きっとこの猫も短いながらも私のような時の歩み方をしていたに違いない。
死ぬ時と眠る時の境目が薄くなり、特に誰が悪いということもない要因で、劇的でも詩的でもない死を迎えるのだ。
久方ぶりに死の感覚を取り戻し、私はゆっくりと再び歩み始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる