眠り王子と恋の夢

今夜は不思議な夢の中②

　その夜の夢の中。つむぎは奇妙な場所にいた。
　豪華な広間。中央は広く空いていて、ちょっとしたホールのようになっている。壁際には小さなテーブルやソファなどがいくつか置いてある。
　普段の生活では行くことなどありえない場所だ。こういう建物のある国に行ったこともないし。
　けれどなにしろ夢の中だ。つむぎは夢の中では『これが夢である』と感じられるタイプであった。今もそんな感覚があったので、例によってそんなものだと思った。夢なら知らない場所にいたって、まったく不思議ではないから。
　それに、おかしいと思う理由はほかにもあった。
　昔から何度か見ている夢なのである。状況は少し違っても、おそらく同じ建物の中。
　理由はわからないけれど、でもそれも特別おかしなことではないようだ。
　子供の頃に夢占いの本を読んだとき、『同じ場所の夢を見ることがあります』と書いてあったのだから。
　友達と『見た夢』の話題が出てきたときも、そういう体験をしていると言った子もいたので、つむぎはそういうたぐいのことだと思うようになったのである。

　ここ、お城みたいなんだよね。

　きょろきょろしつつ、つむぎは思った。猫脚で繊細な模様が彫られた家具を見ていく。
　どう見ても、お城か貴族のお屋敷か。そういう印象の場所。
　もしかして、自分はこの夢の中ではお姫様かなにかなのではと思ったこともある。
　けれどそんなことはなく、毎回普段着ているような服装なのであった。
　なんとなく自分の体を見下ろした。そこでちょっと、あれ、と思った。着ているのはいつも通り、ドレスなどではなかったけれど、毎日着ている服だった。
　すなわち、制服。半袖ブラウスに、緑のリボン。下はチェックのスカート。
　そこでちょっと疑問を覚えてしまう。制服を着て夢の中にいるのはおそらく初めてのことだったのだから。