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抱き枕の一夜

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 え、と思った。

 横になれとは。

 俺はキスに備えて閉じていた目を開ける。

 秋木の顔は勿論、ごく近くにあったけれど、その目はやはり静かなのだった。

「横になれと言っているのだが。横向きだと言わなければわからないか?」

 そこまで説明されて、やっと理解した。

 仰向けではなく、横臥おうがの姿勢になれということだ。

 奇妙だと思ったが、俺は体を転がして横向きになる。

 流石に背中を向けるのではないだろうと思ったのでベッドの中央を向いた。

「よし。それでいい」

 俺の取った体勢に満足したようで、秋木はまた手を伸ばしたが……。

 ばさっ。

 布が勢いよく俺の上に落ちてきた。

 いや、掛けられた。

 こんな状況で大きな布なんてひとつしかない。

 布団である。

 は?

 なんで掛け布団なんて掛けられるわけ。

 これじゃ寝るみたいじゃないか。

 俺は目を白黒させたのだけど、わけのわからないことに、その通りだったようだ。
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