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変わり者の正体

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 あたりが明るいのを感じて俺は目を開けた。

 目の前には布がある。

 やわらかそうなそれを見て、なんだっけ、と思う。

 次に感じたのはあたたかさだった。

 普段眠っているときだって布団のぬくもりの中だが、それとは違う。

 ほっこり優しい温度だ。

「起きたか」

 俺が身じろいだからか、上から声がした。

 聞き慣れない声だった。

 知っている声ではない……。

 まだぼうっとしている俺は、声のほうに視線を上げて、やっと理解した。

 眠っていたのだ。

 それも朝までぐっすり。

 お客の前だというのにまずかっただろうか、と思ったけれど、それも寝起きなのでぼんやりとした思考だった。

「図太いやつだな。俺は仮にも客なのに、そっちまでしっかり寝るとは」

 その通りのことを言われて、俺は状況を把握しきれていないまま「すみません……?」と寝起きの少々掠れた声で返事をした。

「ま、寝ないでごそごそされるより良かった。さ、起きるか。俺は今日も仕事だ」

 そう言って、秋木は俺を離して起き上がってしまった。

 俺は急に離されて、夜のうちにぴったり触れ合っていたぬくもりがなくなったことに、妙な寂しさを覚えつつ、続いて起き上がった。

 あふ、とあくびが出る。

 枕元にあったデジタル時計を見ると、九時頃だった。

 少々寝坊の時間である。

 俺は慌ててベッドを出た。

 秋木はさっさと部屋を出ていって、俺もそれを追った。

 一応、仕事は果たしたようだし、帰る頃だろう。

 廊下を歩いて、リビングのドアを開ける。

 そこからふわっと良い香りが漂ってきた。
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