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おにぎりは梅干し抜きで

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「……今のところはないですね」

 俺が考えたのは数秒。

 本音を口にする。

 返事を聞いて、秋木は明らかに気まずそうな顔になった。

 言わなければ良かった、という表情。

「そうか。妙なこと言ったな。忘れろ」

 そう言われるだろうと思ったけれど、秋木の取っただろう意味とは少し違うのだ。

「でもですね」

 なので俺は続けることになる。

 心臓はドキドキ速くなりつつあった。

 なのにそれは、どこか落ち着いた鼓動だったのだ。

 まるで昨夜、俺が秋木に抱かれようとして感じた気持ち、そのままのようなもの。

「秋木さんがどうして俺を辞めさせたいのか言ってくれたら、考えないでもないです」

 その気持ちのままに口に出した。

 ずるかっただろう。

 秋木の性格など、もう把握しつつある。

 こいつならそのようなことを口に出すのは、ためらいがあるに決まっていた。
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