トウシューズにはキャラメルひとつぶ

いじめっ子との言い合い

2

　ごくり、とつばを飲んで教室のドアを開ける。

「こ、こんにちはぁ！」

　勇気が必要だったけれど、わざと大きな声を張りあげて言った。

　教室の子たちが莉瀬を見て、でもいつものように「こんにちはー」と返事をしてくれる。

　よかった、朱里たちはまだいないようだ。

　ちょっと怖い気持ちはまったくなくなったというわけにはいかなかったから、入ってすぐに顔を合わせるのは不安だった。

　更衣室にいないかと、やっぱりちょっと怖かったけれど、幸いはち合わせなかった。


　莉瀬は、さっさと着がえてフロアに出た。

　そのとき入り口から朱里が入ってくるのが見えた。

　一瞬、視線が合う。

　朱里は笑った。

　いじめっ子の目、そのままだった。

　小学校のとき、ひとをいじめるような、そういう子が何人かいた。

　それとまったく同じ。

　莉瀬があのことを聞いていたのは知らないだろうけど、友だち同士で悪口の言い合いをしたことで、なにかスイッチが入ったのかもしれなかった。


　そして今日は平和とはいかなかった。

　準備のためにバーを運ぼうとした莉瀬だったけれど、バーを引っぱり出しても誰もそばにきてくれない。

「ねぇ、手伝って！」